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ドイツの工業力が生んだ「狂気」の自動車デザイン ゲルマン魂が光る奇妙なクルマ 30選 前編

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ドイツの工業力が生んだ「狂気」の自動車デザイン ゲルマン魂が光る奇妙なクルマ 30選 前編

技術大国で生まれた「秘密兵器」

ドイツの自動車デザイナーはしばしば、あえて常識から逸脱し、奇抜なデザインを世に送り出してきた。

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美しくエキセントリックなフォルムから不思議なキャラクターラインまで、風変わりなドイツ車のデザインを振り返ってみよう。

フォルクスワーゲン・ビートル(1938年)

多くの人は、フェルディナント・ポルシェがビートルの考案者だと思っているが、厳密にはそれは間違いである。ポルシェが昆虫をモチーフにした最初のスケッチを発表する5年前に、工学者で発明家のベラ・バレニーはオリジナルのデザインを考案したのだ。

バレニーは初期の自動車設計で数々の貢献をしており、中でも人命を救う「クランプル・ゾーン」のアイデアと「変形しない乗用車用セル」については、彼に感謝しなければならない。

時の独裁者アドルフ・ヒトラーはポルシェに対し、時速100kmで大人2人と子供3人を輸送でき、バイクよりも安価なフォルクスワーゲン(国民車)の開発を命じた。ビートルの独特のフォルムは、後に象徴的なものとなり、2003年まで生産された。

シュレールワーゲン(1939年)

エリア51が興味を持ちそうなデザインだが、シュレールワーゲン(Schlorwagen)は空力研究所のエンジニア、カール・シュラーの構想によるものだ。メルセデス・ベンツ170Hのシャシーを使い、実際に走行可能な車両が1台だけ作られた。アルミニウム製の車体は、1938年にオペル・ブリッツをベースにした「エアロ」バスでも知られるルーデヴィッヒ兄弟が製作した。

シュレールワーゲンは、空気抵抗係数(Cd値)がわずか0.186で、最高速度は170Hよりわずかに速い135km/hを達成した。ベルリン・モーターショーで公開されたが、世間からは不細工というレッテルを貼られ、その後、第二次世界大戦のためにお蔵入りとなった。

クラインシュニットガーF125(1950年)

F125は修理工であるパウル・クラインシュニットガーの作品である。戦後、彼はリサイクル金属、自転車の車輪、古い飛行機の部品を使って試作車を作った。1949年には完成し、墜落した戦闘機の風防が取り付けられた。ドイツの実業家がそのデザインに魅力を感じ、小さな工場に資金提供した。

しかし、F125の試作車は大きさが足りず、再設計を余儀なくされた。初期の生産では、コスト削減のため、アルミ製のボディは陸軍の余剰調理鍋を平らに叩いて作られた。

ホフマン(1951年)

ミュンヘンの工場長であったミヒャエル・ホフマンは、第二次世界大戦後に自分用のクルマを作ることにした。後輪操舵が特徴で、ほとんどが廃品置き場のスクラップと金物部品から作られた。彼のアイデアは単純で、小型エンジンの三輪車ということで免税となり、運転免許も不要だった。

その奇妙な形は、動力機構によるものだった。大きな長方形のフレームにエンジンを収め、複雑なレバーシステムで操縦し、車内は驚くほど窮屈だ。このデザインは流行らず、彼は自動車デザインから距離を置いた。1台だけ作られ、現在は米国テネシー州ナッシュビルにあるレーン・モーター・ミュージアムで見ることができる。

メルセデス・ベンツ300 SL(1954年)

ルドルフ・ウーレンハウトは1931年にメルセデスに入社し、1936年にはレーシングカー部門のリーダーとなった。エンジニアであった彼のスキルは、メルセデス・ベンツW25グランプリレーサーの後継車開発に活かされ、ほどなくしてW125が誕生した。

戦後、ウーレンハウトはメルセデスに戻り、W194 300 SLのチューブラーフレームを設計。1955年には公道走行可能な自動車として世界最速のウーレンハウト300 SLRを作り上げた。彼のW194のデザインは、フリードリッヒ・ガイガーの美しい300 SLガルウィングにインスピレーションを与えることになる。

ウーレンハウト300 SLRはまた、後のメルセデス・ベンツSLRマクラーレンにも影響を与えている。

ブルッチェ(1954年)

ブルッチェ(Brutsch)は奇抜なマイクロカーを製造することで知られていたが、奇抜なデザインもあって少量しか生産されなかった。1954年、デザイナーのエゴン・ブルッチェは3人乗り三輪ロードスターの「スパッツ」を製作。量産体制を整えていたが、サスペンションがグラスファイバーのボディシェルに直接取り付けられているなど、設計には欠陥が多かった。

再設計を余儀なくされ、さまざまな三輪モデルが登場したが、1956年に卵型のモペッタが登場した。その形は絶大な人気を博し、今でもレプリカが作られる。

フルダモビルNWF 200(1954年)

NWF 200は、BMWイセッタと同じくマイクロカーに分類されるが、サイズはわずかに大きい。子豚のような奇抜なデザインで、リアヒンジドアと、ランボルギーニに見られるような窓付きのリアエンジン・ハッチを特徴とする。

こうしたデザインは、フリージャーナリストのノーバート・スティーブンソンのコンセプトだ。スティーブンソンは自動車デザインのベテランというわけではないが、アイデアは単純だった。バブルカーよりもわずかに大きく、安定性が高く、リアの小型エンジンで走るというものだ。

メッサーシュミットKR200(1955年)

KR200を見ると、飛行機のようなキャノピーに目を奪われることだろう。これは、KR200の設計者フリッツ・フェンドが航空技術者だったからだ。フェンドは、KR200以前にもこのようなキャノピー付きのマイクロカーを設計したことで知られている。すべては1948年、第二次世界大戦によって生まれた多くの身体障害者のために、簡単に乗り降りできる乗り物として作られたフェンド・フリッツァーから始まった。

実際には、フリッツァーの購入者の多くは身体障害者ではなく、単に安価な交通手段を求める人々だった。その結果を受け、2人乗りのフェンド150、KR175、そして最終的にKR200が生まれた。KR200は、KR175を再設計し、新しいメカニズムを搭載したもの。1964年に生産終了し、メッサーシュミットは航空機産業に戻ることになった。

ハインケル・カビーネ(1956年)

バブルカーブームの中でもう1つ異彩を放ったのが、ドイツの元航空機会社ハインケル・フルークツォイクヴェルケがデザインしたカビーネである。メッサーシュミットと同様、同社も手頃な価格の乗り物を求める人々の需要に気づいていた。

カビーネの非常に珍しい特徴は、リバースギアが付いていることと、万が一フロントドアが衝突して開かなくなってしまった場合に、布製のルーフが脱出用ハッチとして機能することだ。BMWを怒らせないために、カビーネのステアリングホイールはドアと一緒に開かないよう(イセッタと異なる構造)にして、特許戦争を避けた。

ゴッゴモビルTSクーペ(1957年)

風変わりな名前が、突飛なデザインをそのまま示唆していることがある。TSクーペもその好例だ。ゴッゴモビル(Goggomobil)の生みの親であるハンス・グラスは、自動車業界に転向する前は農業機械で知られていた。最初のモデルは1954年のコンパクトなT250(Tセダン)で、その後1957年に高価なTSクーペが登場した。

奇妙なサイズ感だが、そのサイズゆえに大成功を収めた。このデザインは、1966年にBMWがグラスの特許を取得するために同社を買収するまで受け継がれた。

ツェンダップ・ヤヌス(1957年)

正面から見るとヤヌスはBMWイセッタに少し似ているが、横から見るとあまり似ていない。二輪車メーカーであったツェンダップ(Zundapp)は、1956年から「高品質のバブルカー」の生産に注力するようになった。航空技術者のクロード・ドルニエは、主にドルニエDo X飛行艇の設計で知られており、ヤヌスの構想を練るために雇われた。

前後2枚のドアがあり、4人乗りだが、後部座席は後ろ向き。1958年の生産終了までに6900台が生産された。主な設計上の欠点はハンドリングの悪さで、エンジンが軽すぎたことと、乗車人数によって重心が大きく移動することが原因だった。

アンフィカー(1960年)

アンフィカー(Amphicar)は、戦時中に使用されたフォルクスワーゲンの水陸両用軍用車、シュビムワーゲンからインスピレーションを得た。トライアンフ・ヘラルド1200のエンジンをリアに搭載し、2基のプロペラを駆動した。

今日BMWの経営権を握ることで知られるクアント家が所有する会社によって、3878台が生産された。著名なオーナーの1人に、リンドン・ジョンソン米大統領(写真)がいる。彼はテキサスの牧場で、ブレーキが故障したふりをして乗客を怖がらせながら湖に突っ込む遊びを楽しんだという。

フォルクスワーゲン・タイプ181(1968年)

タイプ181には、「トレッカー(Trekker)」や「シング(Thing)」など、さまざまな名前が与えられた。フォルクスワーゲンの誰が同車の設計を担当したのかは不明だが、もともとは西ドイツ軍のために開発されたものだった。カルマンギアのフロアパンと分割式フロントガラスのT2のリアサスペンションを使用している。鮮やかなカラーリングの民間仕様も用意された。

メルクスRS1000(1969年)

ソ連占領下のドイツで誕生したRS1000は、デザイナー兼レーシングドライバーのハインツ・メルクスの発案によるものだ。メルクスはフェラーリ250 GTOから多大なインスピレーションを得てRS1000を設計したが、排気量1.0Lのエンジンではイタリアの駿馬には敵わなかった。

メルクスは、1951年にフォルクスワーゲンのシャシーを使って自動車設計に足を踏み入れ、その後1986年までの30年間、シングルシーターやスポーツカーを数多くデザイン、生産してきた。

RS1000のデザインは最終的にお蔵入りとなったが、2006年にメルクスの息子がRS2000と名付けた新モデルを発表した。RS2000は先代の特徴を受け継ぎつつも、ロータスのような体格を持ち、2009年から2012年まで生産された。

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みんなのコメント

5件
  • hon********
    車と写真を見比べることも出来ないのは、正直なところ、素人のブログにも負けていると思う。上司は一目でもチェックしたのか?
  • uwv********
    ドイツ車のデザインってもともとは、野暮ったいモノなんですよ。ただBMWは、60年代にミケロッティがデザインしてゴルフⅠにしてもジウジアーロだし、ベンツもW126からブルーノサッコ、デザインで洗練されて来た。全員イタリア人デザイナーのおかげですね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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