1月27日、2024年WRC世界ラリー選手権の開幕戦『ラリー・モンテカルロ』は全行程の折り返しを迎え、競技3日目に入った。デイ2同様、計6本のスペシャルステージが行われたデイ3は、これまでトヨタ勢以外で唯一ステージウインをあげていたヒョンデ・シェル・モービスWRTのティエリー・ヌービル/マルティン・ウィダグ(ヒョンデi20 Nラリー1)が勢い止まぬ追い上げを披露し、総合首位に浮上している。金曜日のアクシデントにより総合12番手に沈んでいた日本人ラリードライバーの勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)は、総合7番手まで挽回してラリー3日目を終えている。
早くも後半戦に突入したラリー・モンテカルロのデイ3。SS9から始まったこの日も3本のSSを2回ずつ走行するかたちで競技が進み、SSの合計距離は120.4kmで争われている。デイ2終了時点で総合首位に立っているエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)の持つリードは、2番手のセバスチャン・オジエに対して4.5秒、3番手のヌービルとは16.1秒とまだまだ油断できない接戦となっていた。
7番手まで挽回した勝田貴元、さらなるポイント獲得へ「プッシュしたい」/WRC開幕戦 デイ3後コメント
現地時間8時に各車が集って行われたSS9では、ヒョンデ勢の最上位をキープするヌービルが、ライバルたちの眠気を吹き飛ばす気迫の走りを披露。2番手タイムのエバンスに対して9.6秒の差をつけ、総合でもオジエを捉えて2番手に浮上した。
総合3番手にポジションを下げたオジエはトップタイムから18.8秒の遅れをとり、「慎重になり過ぎた」と漏らした。だが、“モンテカルロ”10勝目を狙う彼は、続くSS10で反撃の狼煙を上げる。
峠を南から北へ抜けるため、ステージの序盤と終盤とで異なる性格を持つSS10。最初に走行を開始した勝田も「(陽の当たらない)後半の下りは滑りやすかった」と口にしたが、オジエは少しもペースを落とすことなく走り抜け、このステージでトップタイムを記録。途中、大人のこぶしほどの落石に遭ったことで、フロントガラスにダメージを負ってしまったが、それをものともせずに今大会4度目のステージウインを果たした。
ただ、ここで2番手に続いていたのは好調ヌービルだ。これで総合順位でエバンスを抜き、0.9秒差で総合首位の座を奪い取ることに成功する。当のエバンスは8番手タイムと不調の様子。僚友オジエから9.5秒遅れで走行を終えた彼は、「少しトラブルが起きているようだ」とマシンが問題を抱えていることを明かした。
午前のループ最後のSS11は、つづら折りの峠を下り、橋を渡った先にある小さな村を抜けて、ふたたび峠を駆け上っていくというステージだ。ここでは、ヌービルに続いて同じくヒョンデのオット・タナク(ヒョンデi20 Nラリー1)が躍進する。
チームの“ダブルエース”と言えるふたりは、なんと揃って同じ12分40秒0のタイムをマーク。先にタイムを出したタナクが今大会初のステージ優勝を飾り、総合首位のヌービルもオジエとの差を広げることに成功、ヒョンデ勢が勢いに乗ってきた。
ミッドデイサービスを挟み、朝一番に走ったSS9と同じ区間で争われるSS12。好調ヒョンデ勢がさらにタイム差を広げるかと思われるところで、そうはさせまいとオジエもギヤをあげて応戦する。予想どおりSS9同様に好タイムを記録したヌービルを5.5秒上回る走りを披露したオジエは、同区間でのリベンジに成功。総合順位でもチームメイトのエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)を上回り、総合首位と2.2秒差の同2番手に浮上した。
続くSS13でも激しい首位争いが続く。各ドライバーのコメントを聞くに、SS10で一度走行が行われたことも影響して、後半の下りセクションは滑りやすさが増していたようだが、総合首位を争うふたりはそろって好タイムをマーク。ここではオジエが3秒差でヌービルのタイムを上回り、総合でもライバルを0.8秒差で逆転しトップに躍り出た。
しかし優位に立ったのもつかの間、日も暮れかかるなかで行われたデイ3最後の走行であるSS14では、ヌービルが隙のないアタックを遂行しステージウイン、総合首位に返り咲いた。走行を終えた際には、「完璧だった! とてもいいステージだったよ。すべてがうまくいったし、走り自体も楽しめた」と、少しの不満も湧かない様子でデイ3ラストアタックを振り返った。
ヌービルに次ぐ2番手タイムを記録するも、その差が4.1秒であったためふたたび総合2番手となったオジエは、「ティエリー(・ヌービル)は良いステージだったね。これは、明日もさらにハードに攻める必要があるみたいだ」と、決戦の日となる日曜日へ向けて気合充分の様子だ。
■デイ1、デイ2の首位エバンスが失速
オジエとヌービルの戦いが白熱する一方、デイ3では一日をとおしてペースが上がらなかったエバンスは、トップから34.9秒遅れて総合3番手に。ウェールズ出身のトヨタドライバーはデイ3後に、「どういうわけかペースが上がらなかったので、その原因を探る必要がある」と語っている。
表彰台圏内の後ろでは各1分以上の間隔を開けてタナクと、Mスポーツ・フォードのアドリアン・フルモー(フォード・プーマ・ラリー1)、今大会がラリー1デビュー戦となっているアンドレアス・ミケルセン(ヒョンデi20 Nラリー1)が続いている。
日本人ラリードライバーの勝田は、ステージ4番手タイムを3回、3番手タイムをSS10とSS11の2度記録するなど、次第に調子を上げてきた。金曜日朝のスタックによってデイ2終了時点で12番手に沈んでいた総合順位も7番手まで回復して土曜日を終えている。
デイ2終了時には「自分のドライビングを改善し、日曜日に向けていいセットアップを見つけたい」と語り、自身の主眼をラリー最終日に置いていると話していたが、デイ3の後半には、走行後のインタビューで「良い感触で走ることができた」といった前向きなコメントが増えており、最終日へ向けたリズムも整ってきている様子だ。
なお、ラリー1クラスに参戦する3メーカーで唯一2台体制となっているMスポーツ・フォードWRTは、グレゴワール・ミュンスター(フォード・プーマ・ラリー1)がSS12の6.3キロ地点でスタックしてしまった影響でデイリタイアとなっている。January 27, 2024
ラリー2マシンによって争われるWRC2勢は、シトロエンC3ラリー2に乗るニコライ・グリアジンがクラストップの座をキープしている。しかし2番手のぺぺ・ロペス(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ)との差は0.2秒しかなく、3番手のヨアン・ロッセル(シトロエンC3ラリー2)も6.9秒後方に迫ってきているため、デイ4でのクラス優勝争いはこの3台が熱い火花を散らすこととなりそうだ。
大会最終日となる28日(日)は、SS15からSS17までの合計52.12kmにて争われる。2024年シーズンで新たに導入されたポイントシステムでは、土曜日までの順位に応じて付与されるポイントに加え、日曜日のみの総合順位によって得られるポイントが設定されたため、勝田のように序盤での躓きからデイ4にターゲットを切り替えて週末を進めてきたドライバーにとっては勝負の一日となる。大会全体を通した総合優勝争いはもちろん、デイ4の最速となったペアおよびコンストラクターに与えられる最大7ポイントや、最終パワーステージの勝者に与えられる5ポイントの行方にも注目しておきたい。
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