この記事をまとめると
■タイヤの空気圧は温度と湿度によって大きな影響をうける
いまやタイヤも通信する時代! 最近注目を集める「コネクテッドタイヤ」とは
■モータースポーツでは湿度の影響を最低限に抑えるためにタイヤにドライエアを充填する
■タイヤの空気圧は最低でも半月に一度はエアチェックすべきだ
湿度はタイヤの空気圧に大きな影響を与える
この前までTシャツで過ごせたのに、急に上着が必要になり、あっという間に冬が来る……。こうした気温の変化が激しいときは、タイヤの空気圧の点検、調整が重要だ。
タイヤの空気圧は外気温が20℃変わると、7%変化するといわれている。よりわかりやすい目安としては、気温が10度上がると10kPa(0.1kgf/平方センチメートル)ほど上がり、10度下がると10kPa(0.1kgf/平方センチメートル)ほど下がると覚えておけばいい。
そして、気温とともにタイヤの空気圧に大きな影響を与える要素に湿度がある。季節にもよるが、大気には一定の割合で水分が含まれているのはご存じのとおり。この大気をコンプレッサーで圧縮すると、水蒸気もギュッと体積が縮まる。たとえばコンプレッサーで0.8メガパスカルに圧縮された空気は、体積が9分の1になり、大気の約9倍の濃度で含有された状態になる。
水は液体から気体に変化すると、その体積は1700倍も膨張するので、水分を含んでいる空気は、熱による膨張率が大きくなってしまう!
タイヤの性能を極限まで引き出すことが求められる、F1などのレースシーンでは、非常にシビアな空気圧管理が求められるため、チームは熱膨張率を計算に入れて、空気圧を最適値に合わせ込むわけだが、このとき水分を含んだ空気をタイヤに入れると、狙った空気圧が維持できない。
そこでレーシングチームやタイヤメーカーのテスト時には、専用のエアドライヤーを使って強制的に乾燥させた空気=「ドライエア」をタイヤに充填させるようになった。
エアドライヤーには、熱交換器で圧縮空気を冷やし結露させて除湿する「冷凍式エアドライヤー」と、中空糸膜を用いて圧縮空気から水分を分離除去する「膜式エアドライヤー」、吸着剤に水分を吸着させる「吸着式エアドライヤー」の3種類があるが、もっともメジャーなのは「冷凍式エアドライヤー」。原理としては、エアコンの除湿機能と同じと考えていい。
いまやモータースポーツではドライエアが当たり前
ドライエアは、熱によるタイヤの空気圧変化を少なくできるだけでなく、配管の腐食防止やエアツールの劣化、トラブルを防ぐので、設備の新しい規模の大きなサーキットのピットには、ドライエアが流れてきている例もある。また、先進的なタイヤショップなどで、ドライエアの充填をウリにしているところも珍しくなくなってきた。
各地を転戦するレーシングチームの場合、現地のナマの空気をそのままコンプレッサーで入れていたのでは、データも共有できず空気圧管理の精度が保てないが、チームでドライエア発生装置を持参すれば、世界中どこでも同じ露点(空気が冷却され含まれている水蒸気が液体=霧になるときの温度のこと)の空気で充填できるので、いまやドライエアでの充填が当たり前になっている。
一方で、ガソリンスタンドや街の整備工場、ミニサーキットなどのコンプレッサーは、まだまだ旧来のものが多いので要注意。
通常、コンプレッサーの水抜きは1日1回以上が基本なのだが、それを忠実にやっているところはかなりまれ。
あるミニサーキットで、空気を充填する前に、念のためコンプレッサーのドレンコックを開いてみると、かなりのドレン(水分)が出てきて驚いたことも!
空気の乾燥している冬場はそれほどシビアに考えなくてもいいのかもしれないが、タイヤの空気圧は気温と湿度の影響を大きく受けるので、最低でも月に一度、季節の変わり目は半月に一度ぐらい、エアチェックをするのを習慣にしておこう。
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