トラックドライバーの運転環境を改善することを目的に、UDトラックスがこのほど大型トラック「クオン」に搭載したのが最新の電子制御操舵システム「UDアクティブステアリング」だ。
同システムは、ボルボトラックが2013年に発表し、現在日本向けを含むFHなどの大型車に展開している「ボルボダイナミックステアリング」のUD版である。
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TVやYouTube等で、ジャン=クロード・ヴァンダムが走行中の2台のトラックのミラーステーに足をかけ次第に股割をしていく動画や、女性が走行中の2台のトラックの間で綱渡りをする動画などをご覧になった方も多いと思う。
実は、あれはボルボトラックのプロモーションビデオで、ボルボダイナミックステアリングの「ブレない」操舵を訴求した動画なのである。
その最新の電子制御操舵システムがUDトラックスのクオンに搭載されたわけで、これはぜひ試したい! 早速UDアクティブステアリングを搭載したクオンに試乗した。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
【画像ギャラリー】電子制御操舵で「ブレないUD」を実現した「UDアクティブステアリング」搭載のクオンに試乗!!
■トラックのステアリングに大変革をもたらす「UDAS」とは?
今のところ「UDアクティブステアリング」は、8×4のCGおよびトラクタのGKにオプション設定されている
クオンの一部車種にオプション設定された「UDアクティブステアリング」(以下UDAS)は、従来の油圧式ステアリングギアの上部に新たに搭載した電気モーターによる支援機能で、電気モーターに付随する電子制御ユニット(ECU)が、1秒間に約2000回の頻度でさまざまなセンサーから運転環境を感知。
走行方向とドライバーの意図を判断し、あらゆる走行条件下において、ドライバーの運転操作をアクティブにサポートするもの。
後退・右左折・旋回などの低速走行時には取り回しが軽く、速度が上がるにつれてステアリングの安定感が増していくのが特徴だ。また積み荷や路面状況、横風などにも左右されない安定したステアリングを実現し、ドライバーの疲労軽減と安全に寄与するものだ。
従来の油圧パワーステアリングギア上部に新たに搭載した電気モーターがステアリングを支援。電気モーターに搭載した電子制御ユニット(ECU)が1秒間に約2000回の頻度でさまざまなセンサーから運転環境を感知し、走行方向とドライバーの意図を判断。このシステム制御によってステアリングの重さに適切なトルクを付加するので、速度や積み荷、路面状況などに左右されない安定したステアリング感覚を実現する。ちなみに「UDアクティブステアリング」は、すでにボルボトラックが採用している「ボルボダイナミックステアリング」を日本の使用環境に合わせてチューニングしたもの
UDASの主な特徴は、
1)低速走行時の軽いステアリング=重量物輸送時でも軽い力で操舵でき、疲労を大きく軽減。
2)高速走行時の直進安定性=スピードに応じて、ステアリングを適度な重さになるよう制御することで、直進走行時にドライバーの緊張感を軽減。
3)不整路走行時の路面状況の影響軽減=路面の凹凸から受ける影響を自動補正し、振動や意図しないステアリングの動きを軽減。
4)横風発生時の走行補正=横風の影響によるタイヤの微細な動きを素早く感知し、自動補正で直進走行をサポート。
5)後退・右左折時の自然なハンドル戻り=後退時や交差点の旋回時にステアリングは自動でニュートラル位置に戻る。
……など5つの項目があげられる。
路面の凸凹を自動補正し、振動や意図しないステアリングの動きを軽減する
高速走行時、適度な重さになるようステアリングを制御することにより、直進時の緊張感を軽減する
後退時に自然なハンドル戻りを実現する。特にトレーラでのバックの際に重宝する機能だ
■なにしろ取り回しが非常に楽。UDASの効果を実感!
クオンの運転席周り。ホールド性の良いシート形状は、UDASと相まってドライバーの疲労軽減に貢献しそうだ
UDASの発表会が行なわれた埼玉県上尾市のUDトラックス本社工場の「UDエクスペリエンスセンター」でクオンに試乗する機会を得た。
敷地内にはスラローム、凹凸路、車庫入れのコースが設けられ、UDASがもたらす低速走行時の軽いステアリング操作、凹凸路面から受けるステアリングのキックバックの抑制、旋回時のステアリングの自然な戻りといった特徴を体験できるようになっている。
試乗車に供されたのは長距離輸送で一般的な低床4軸(CG)のカーゴモデル。新しいクオンはシートも刷新され、黒を基調とした表皮に変更。なおかつ運転席側はベルトインシートを採用する。
運転席に乗り込むと、バケットシートのようなラウンド型のシート形状とシートベルトが座席に内蔵されたことでホールド性が向上したように感じる。柔らかすぎず硬すぎずといったシートサスペンションも好印象だ。
肝心のUDASの印象だが、従来のUD車はステアリングの取り回しが若干重めの印象だったが、UDAS搭載車では低速で操舵を行なうと明らかに軽くなったと感じる。発表会では指一本でハンドル操作を行なうデモンストレーションが披露されたほどだ。
低速で大きく旋回しながらスラロームを走行してみると、その取り回しの良さがよくわかる。従来の大型トラックの感覚に慣れていると、逆に今までこうした運転の際にはけっこうな労力を使っていたのだと気づかされる。
次に凹凸路を走行してみると、キャブは上下左右に揺さぶられるが、ステアリングはほとんど動かない不思議な感覚がもたらされる。
ゴム板を並べてつくった凸凹路でUDASの効果を試す
キャブが上下左右に揺れても、ステアリングはほとんどブレず、車両はまっすぐに進む
UDASはステアリングアングルセンサー、車速センサーや、ヨーレートセンサーなどを用い、車両の状況を把握して油圧パワーステアリングギアボックス上部に搭載されたモーター、ECUで自動補正制御が行なわれる。わだちや横風発生時でもこうしたステアリング自動補正技術の効果が生かされる。
最後に車庫入れで旋回時のステアリングの戻りを試してみた。乗用車ではステアリングを切って手を離すとタイヤからもたらされる復元力によって自然とステアリングはニュートラル位置に戻ると思うが、トラックは復元力が起きにくい構造になっている。
このため従来のトラックは運転手がハンドルを戻す必要があったが、UDASでは復元力がモーターで再現されているのだ。
車庫入れでは車庫に対し直角に車両を停め、ステアリングを目一杯切って後退。その途中で手を離すとステアリングがスルスルとニュートラル方向へ回り始める。最後はおつりが出て(回りすぎて)手動でハンドルを戻したものの、乗用車感覚で車庫入れができるのは非常に新鮮な感じだ。
車庫入れを模した試乗の1コマ。バックの途中で手を離すと……
ステアリングがスルスルとニュートラル方向に回り始める
個人的にはもう少し戻りの速度が早くてもいいように感じたが、そこは慣れの部分も大きいだろう。
ちなみに、UDASはボルボトラックスのボルボダイナミックステアリング(VDS)とステアリングユニットそのものは共用だが、クオンは日本の道路事情に合わせてチューニングされているという。
ステアリングの戻りはVDSより遅く、ステアリングの重さも低速時には軽すぎず、高速時には重すぎずといった設定になっているとのこと。
■疲労軽減効果を実証。ユーザー/ドライバーからの期待の声
脳波測定器や筋電計を使用してドライバーの疲労度をチェック
UDトラックスは今回、電子制御によるステアリングでどれだけ疲労軽減を図れるかについて、独自の実証実験を行なっている。実験では、脳波計測器を使い、運転時のストレスや運転に必要な集中力を調査。また、筋電計を使って運転時の筋活動量をUDAS搭載・非搭載車で比較した。
その結果、搭載車のほうが運転時のストレスが低く、また過度な集中力を必要とせずに操作できることがわかった。さらに搭載車では、腕の力をより楽にして操作が行なえ、特に駐車時や路面の凹凸が激しい道路を走行する場合は、筋力を使わずにハンドル操作ができることもわかった。
ちなみにUDトラックスが6月に物流企業の経営者とドライバー計400名を対象に実施した意識調査では、経営者の7割以上が「ドライバー不足」を実感しており、解決策として、労働時間の最適化や給与改善に次いで、「若年層ドライバーの採用強化」と「健康管理」をあげていた。
またドライバーの大半が性能の良い疲れにくいトラックの導入を希望しており、特に20~30代の若手ドライバーは全員が導入を希望していることがわかった。
このためUDトラックスでは、トラックの「走る・曲がる・止まる」という基本動作を、すでに採用している電子制御式トランスミッションのESCOTやディスクブレーキとともに、今回のUDASによって、走行性をこれまでよりさらに高いレベルに引き上げ、ドライバーの運転環境を大幅に向上し、疲労軽減と安全性に寄与したいとしている。
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みんなのコメント
乗用車の様に走るトラックドライバーの多い事。車両重量理解してるのか不思議でならない。
壊れなければ良いと思いますが、最近の車は電子制御ばかり。
ドライバーが路上でお手上げ状態です。もっとも、タイヤチェーンすら巻けない運転手が大半の時代、これでいいのでしょうか?
Ⅴ8NAが懐かしい…