ライバル対決のトップバッターはブランドを代表する高性能スポーツの闘いだ。AMG、M、アウディスポーツといった高性能モデルを手掛ける専門部隊が、手塩にかけたトップパフォーマーたち。キャラクターの違いや、そこに込められた熱い情熱についてを考察してみた。
むしろラグジャリーなムードをまとうM8
【比較試乗・ミドルワゴン編】「メルセデス・ベンツEクラス・ステーションワゴン×BMW5シリーズ・ツーリング×アウディA6アバント」これがアッパーミドルワゴンの最前線
あえてサーキットではなくワインディングロードで、この3台のような600ps級のハイパフォーマンスモデルに期待するものは何だろう? もちろん昂ぶらせる雰囲気も重要だが、走りに関して言えば、持てるパフォーマンスを解き放つには、ここは狭過ぎる。欲しいのは速さではなく走りの密度、充足感といった辺りだろうか。
BMW M8クーペ・コンペティションは、車名とは裏腹にラグジュアリーなムードをまとう。フロントの大きな開口部や20インチホイールの奥に顔を覗かせる大容量のブレーキ、左右4本出しのエキゾーストといったディテールは確かに迫力を感じさせるが、基本フォルムは流麗なクーペであり、内装だってフルレザー張りなのだ。
それでも、エンジンを始動した途端に飛び込んでくる野太いV8サウンドを聞けば自ずとテンションは高まってくる。最高出力625ps、最大トルク750Nmを発生する4.4Lツインターボユニットは、1800rpmから5860rpmというきわめて広い回転域で最大トルクを発生し続けるフレキシビリティを誇り、走りは出足から非常に軽快。1.9トンという車重を忘れさせる。
しかも回り方は精緻で、レスポンスもシャープ。全開になどしなくても、やはりMはエンジンだと実感させてくれる。トップエンドに向けて駆け上がっていく時のパワーの盛り上がりとサウンドも、まさに快感と言うほかない。
ただし、ひとたびコーナーへと飛び込めば、さすがに車重を意識させられることになる。全体に接地感が薄く、実際に4WDだというのにリアの滑り出しも呆気ない。それならいっそとCOMFORTに切り替えると、外輪に荷重がかかり過ぎてやはり攻めきれない。
手前でしっかり減速して素早く向きを変え、立ち上がりで積極的に踏んでいく走り方が、このクルマには合っている。それはそれでいいのだけれど、Mの名が付くクルマのコンペティションというモデルとしては正直、食い足りない感じは残った。
R8はすべての世界が違っていた
まあ、ワインディングロードではこんなものかな? と一瞬思ったのだが、アウディR8クーペV10パフォーマンス5.2FSIクワトロに乗り換えたら、すべての世界が違っていた。もちろん、全高は地を這うように低く、トレッドもワイドなミッドシップカーということで、見た目からしてスポーツ性の濃度が異なるわけだが、こちらはとにかく乗りやすいのだ。
ボディはいかにも剛性感が高く、重心も低そう。しかもM8からの乗り換えだと、コートを脱ぎ捨てたかのように動きが軽やかなのだ。実際、車重は1670kgに過ぎないのだから当然だろう。
ブレーキは強力で、しかも四輪が沈み込むように効く。ステアリングを切り込めば正確なレスポンスで狙ったラインをトレースでき、余計な修正など一切不要である。まさに、すべてが思い通りのフットワークには思わず打ち震えた。
自然吸気V10エンジンの吹け上がり、サウンドも控えめに言ってサイコーだ。580Nmという最大トルクの発生回転数は6600rpmと高めなのだが、ドライバビリティは文句なし。これは車重の軽さの恩恵でもあるだろう。
情緒よりも何よりも、冷徹なまでに正確に仕事をこなす走りっぷりが冷たい機械と触れ合っているようにも思えてしまうのは事実。けれども、この一体感あふれる走りは素晴らしいのひと言に尽きる。
見るからに獰猛という意味では文句なしにメルセデスAMG GT Rが一番だろう。全高はこちらも低く全幅は禁断の2mオーバー。しかも全長の3分の1近くにも達しそうなほどボンネットは長い。そんなフォルムに加えて、全身に機能最優先の空力アイテムが装着された姿は、まさに獲物に挑みかかろうというような迫力に満ちている。
走りの味の濃さもイメージを裏切らない。V型8気筒4Lツインターボエンジンは低回転域から吠えまくり、分厚いトルクで弾けるようなダッシュを見せる。最大トルク自体は700NmとM8には及ばないが、車重が1660kgと軽いのが、やはり効いているのだろう。もちろん踏めば凄まじい勢いでトップエンドまで一気に回るのだが、それよりもこの実戦的なトルク感の方が印象は鮮烈だ。
フットワークにも大いに感心させられた。フェイスリフトで乗り心地が俄然洗練されて、締め上げられてはいるが跳ねは少ない。従来は明らかにそれと意識させた後輪操舵も、自然な感触に終始する。
それでいて操舵応答はきわめて鋭く、いつもの調子で攻めるとインに切れ込み過ぎてしまうほどだが、これはFRながらリア寄りとされた前後重量配分に拠るところも大きいに違いない。ノーズの動きは俊敏で追い込んでもだらしなく逃げることなく、リアもFRとは思えないほど安定しているから、安心してコーナーを楽しめるのだ。
全域で力強いエンジンに切れ味と安心感を両立したフットワーク。まさにニュルブルクリンクで速いクルマはこうなるよなという仕立ては、ワインディングロードでも思い切り旨味を堪能させてくれた。しかも、情感まで刺激しながら。
今回持ち込んだ3台はいずれもブランドを代表するハイパフォーマー。ワインディングロードでは持てる力の3割も出せていなかったに違いないが、それでも各車の個性の違いや実力の差は、ハッキリと浮き彫りになった。
正直、ちょっとM8に厳しかったとは思うが、R8やAMG GT RはGT3レーシングカー直結と言っていい存在だけに仕方がない。いまやこのカテゴリーは、そういう領域に入ってきているということである。M8コンペティションの、さらにコンペティションモデルが必要なのかも? ともあれ、こんな時代ではあっても、まだまだしばらくこの猛烈にホットな争いが、鎮まることはなさそうだ。
【Specification】MERCEDES-AMG GT R
■全長×全幅×全高=4550×2005×1285mm
■ホイールベース=2630mm
■車両重量=1660kg
■エンジン種類/排気量=V6DOHC32V+ツインターボ/3982cc
■最高出力=585ps(430kW)/6250rpm
■最大トルク=700Nm(71.4kg-m)/2100-5500rpm
■トランスミッション=7速AT
■サスペンション=(前)4リンク、(後)マルチリンク
■ブレーキ=(前後)Vディスク
■タイヤサイズ=(前)275/35R19、(後)325/30R20
■車両本体価格(税込)=24,530,000円
【Specification】AUDI R8 COUPE V10 PERFORMANCE 5.2 FSI QUATTRO
■全長×全幅×全高=4430×1940×1240mm
■ホイールベース=2650mm
■車両重量=1670kg
■エンジン種類/排気量=V10DOHC40V/5204cc
■最高出力=620ps(456kW)/8000rpm
■最大トルク=580Nm(59.1kg-m)/6600rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション=(前後)Wウイッシュボーン
■ブレーキ=(前後)Vディスク
■タイヤサイズ=(前)245/30ZR20、(後)305/30ZR20
■車両本体価格(税込)=30,310,000円
【Specification】BMW M8 COUPE COMPETITION
■全長×全幅×全高=4870×1905×1360mm
■ホイールベース=2825mm
■車両重量=1910kg
■エンジン種類/排気量=V8DOHC32V+ツインターボ/4394cc
■最高出力=625ps(460kW)/6000rpm
■最大トルク=750Nm(76.5kg-m)/1800-5860rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション=(前)Wウイッシュボーン、(後)マルチリンク
■ブレーキ=(前後)Vディスク
■タイヤサイズ=(前)275/35ZR20、(後)285/35ZR20
■車両本体価格(税込)=24,440,000円
【PERSONAL CHOICE】MERCEDES-AMG GT R
感情を震わせる要素も色濃いGT R
本文に書いた通り、純粋なパフォーマンス……といっても速さというよりも操り甲斐という意味ではR8にも改めて感銘を受けつつ、それに加えて感情を震わせる要素も色濃いメルセデスAMG GT Rを選ぶ。
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
新車採用が「義務化」! でも後退時「バックモニター」だけで動くのは「危険すぎ」!? “カメラ”に映らない「死角」がヤバかった
「子供が熱を出したので障害者用スペースに停めたら、老夫婦に怒鳴られました。私が100%悪いですか?」質問に回答殺到!?「当たり前」「子供がいたら許されるの?」の声も…実際どちらが悪いのか
「財布を忘れて帰ろうとしたら、免許不携帯で捕まりました。今取りに帰るんですよ。私が悪いんですか?」質問に回答殺到!?「事実でしょ」「非常識」の声も…「うっかり」でも許されない理由とは
高速道路を使わないユーザーには無駄? 「三角表示板」がなぜか標準装備にならないワケ
「ヘッドライトが“まぶしい”んですけど、どうにかならないですか?」 困惑の声多数! あなたの行為「違反」かも? 「ハイビーム」の“落とし穴”とは
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
ドイツはハイパフォーマンスカーがいっぱいあって羨ましいな。エンジンの時代はもう終わるとは言え、このクラスは夢がありますわ。