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役者が揃った優勝争い─マルティンの長い長い残り5周、M.マルケスの誤算、バニャイアの9コーナー/第5戦フランスGP

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役者が揃った優勝争い─マルティンの長い長い残り5周、M.マルケスの誤算、バニャイアの9コーナー/第5戦フランスGP

 役者の揃った優勝争いだった。決勝レース終盤、ヘレスに続いて展開されたのは、フランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)とマルク・マルケス(グレシーニ・レーシングMotoGP)による2番手争いだ。ただし、今回はそのふたりの前に、ホルヘ・マルティン(プリマ・プラマック・レーシング)がいた。マルティンはスペインGP決勝レースではトップ走行中の中盤に転倒を喫して、ヘレスの優勝争いで不在だったのだ。

 13番手からスタートして追い上げたマルケスは、残り10周でファビオ・ディ・ジャンアントニオ(プルタミナ・エンデューロVR46・MotoGPレーシングチーム)をかわして3番手に上がった時点で、バニャイアとマルティンとは約2秒のギャップがあった。それを詰めて残り7周の時点でマルティンとバニャイアに追いつき、トップ争いに加わったのだから、驚異的なペースだ。

スプリントで2番手スタートから後退、リタイアのバニャイア。遠因はQ2の転倒か/第5戦フランスGP

 3番手で迎えた最終ラップ、マルケスは「ペコ(バニャイア)がマルティンに仕掛けることを期待したけど、そうはならなかった。というわけで、僕がペコに仕掛けることにしたんだ」と言う。ふたりがトップを争って、その間隙を縫って自分が優勝。それが、最終ラップでマルケスが描いていた展開だったのかもしれない。しかし、バニャイアはマルティンに挑まなかったし、スペインGPでは抑えたマルケスにかわされた。なぜか?

 バニャイアは、残り5周を迎えて苦しんでいた。予選Q2で転倒を喫し、そのために乗り換えたマシンに問題が発生。スプリントではリタイアを選択したが、決勝レースでは金曜日の速さを取り戻し、大方の見方通り、マルティンとのトップ争いを演じていた。

 しかし、最終ラップではマルティンと僅差の2番手につけていながら、勝負を仕掛けることなく終わった。バニャイアは、残り5周に「苦しんでいた」ことについて、こう説明している。

「僕はセクター1とセクター2、7コーナーがとても強かったんだ。でも、9コーナーのブレーキングでかなりロスしていた。そのコーナーで、ハードブレーキングとさらにスピードを乗せられるフィーリングがなかった。どうしてこういう風に苦しんだのか確認するよ」

 9コーナーは下り坂からブレーキングをしながら左コーナーに進入していく箇所で、Q2に転倒を喫した場所でもある。決勝レースの最終ラップで、マルケスにオーバーテイクされたのも、9コーナーだ。ブレーキングを強みとするバニャイアだが、「(9コーナーでは)ハードブレーキングをしていると思っていたけど、バイクをうまく止められなかったんだ」と言うのである。

 とはいえそのあとに、「ただ、彼らが単に速かったということだと思う」と、マルティンとマルケスを認めていることから、今回については、マルティン、マルケスが上回っていたのかもしれない。

 一方、今季2勝目を飾ったマルティンである。マルティンは残り10周でマルケスが3番手に浮上したのを知っていた。そしてマルケスがその差を1秒に縮めたと知るや、マルティンは「攻めるときだ」と考え、前を走るバニャイアを抜きにかかった。

 タイミングといい、仕掛けた勝負を成功させる強さといい、そしてトップに立って以降、直近のシーズンで2連覇を果たしたチャンピオンと、過去に6度のタイトルに輝いたチャンピオンを従えてトップを守り切った展開といい、マルティンの強さを証明した素晴らしいレースだった。

 もちろん、レース終盤、マルティンに余裕はなかった。チェッカー後に解き放たれたマルティンが、スクリーンを破壊して歓喜したほどだ。

「終盤の5周は、あまり楽しめなかったよ。やることがたくさんあったからね。最高の状態というわけじゃないタイヤで速く、そしてクラッシュしないように走らなきゃいけないし。大変だった。風もけっこうあったし、おまけに、プレッシャーもすごかったし……。残り5周はめちゃくちゃ長かったよ」

「今週末、僕はとても楽しんだと思う。僕はメンタリティーを変え、走りを楽しむことがとても大事だと思ったんだ」

 自分を信じ、自分の速さを信じた。そして、楽しむことを忘れなかった。そうしてマルティンは、ふたりのチャンピオンを従えてトップでチェッカーを受けることに成功したのだった。

 さて、この3名のライダーといえば、昨今の注目の話題として「2025年、誰がバニャイアのチームメイトになるのか?」が挙がるだろう。もちろん、会見でもマルティンにその質問が飛んだ。けれどマルティンは、「みんな何度も僕に聞くんだけど、僕はこれについては話したくないんだ」と語っていた。ライダーにとってファクトリーチームを望むことは自然な流れだが、同時に、自分にその価値があると納得してもらう最も簡単な方法は、コース上のパフォーマンスなのだ。

 チャンピオンシップについても、フランスGPのトップ3が現在のランキングトップ3である。ランキングトップはマルティン、2番手はバニャイア。そして、今回の結果により、ランキング3番手にはついにマルク・マルケスが浮上した。

 バニャイアはチャンピオンシップの展望について、こう語っている。

「今のところ、この3人はもっとも完璧なライダーだ。ほかのライダーも十分に速いし、勝つことだってできるだろう。でも、スピード、安定性に関しては、ホルヘが頭ひとつ抜けている。ヘレスでのクラッシュがなければ、ホルヘが(今回と)同じ結果だったと思う」

 シーズン5戦目を終え、チャンピオンシップの様相もまた、次第に輪郭が浮かび上がってきた。そこにいるのはマルティン、バニャイア。そして、マルク・マルケスだ。

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