ホンダ「400X」は意外な逸材？　2輪400クラスのバランスよくまとまったSUV的存在

2020.03.01 13:00 掲載 1

ホンダ「400X」は意外な逸材？　2輪400クラスのバランスよくまとまったSUV的存在

全て見る
11枚

■これは、中型二輪免許で乗れるアドベンチャーバイクでは!?

　2013年にデビューしたホンダ「400X」は、2016年のモデルチェンジを経てツーリングアメニティーを整えてきました。今回試乗した現行モデル（2019年型）は、前輪の19インチ化やリアショックのストロークアップなど、クロスオーバーからアドベンチャーバイクへと、キャラクターを寄せてきています。

ホンダ「400X」がフロント19インチ化し堂々たるスタイルに！いち早く実車をチェックし、プロジェクトリーダーにその理由を聞いた

　カモフラージュカラー（マットバリスティックブラックメタリック）の400Xを前にすると、アドベンチャーバイク風味を入れた車体デザインだとわかります。

　前後ともホイールサイズが17インチだった先代から、前輪を19インチに大径化しただけに、やや前まわりのルックスにアクセントが移り、アドベンチャーバイクらしい風体になったのです。

　跨がってみると、ステップ、シート、ハンドルバーグリップで作るポジションはとてもナチュラルです。シートだけが低く、ハンドルバーが高く感じることもありません。また、抜群に足つき感がいい。

　サイドスタンドから車体を起こす時も、さしたる重量を感じずに取り回せます。容量17リットルの燃料タンクがエンジンの上にあるだけに、ユラっとくるのかな、と思ったのですが、杞憂でした。

　20mm伸びたウインドスクリーンも、ライディングポジション目線の視界を邪魔せず、それでいてしっかりと風圧から助けてくれそうな印象です。キーを入れると、メーターまわりのLCDモニターが起動し、その視認性もなかなかなもの。

　トリップ、燃費、消費燃料などが表示されるのも嬉しい装備です。その機能表示切り替えが、メーターパネルにあるスイッチに手を伸ばさないと変更できないのはちょっと残念。ハンドルスイッチにファンクションボタンを追加するなど、操作性、安全面の進化が欲しいところです。

　排気量399ccの水冷並列2気筒エンジンを搭載し、180度位相クランクが刻むアイドリング音は、グルグルグルと規則正しいもの。摺動パーツのフリクションを減らしたエンジンは回り方がとても軽快。それでいて2気筒らしい重厚感も伝えてきます。

　また、クラッチレバー操作力の軽さが嬉しい。アシストスリッパークラッチ採用で実現したこの操作性の良さは、市街地を苦にしません。クラッチの繋がり方もスムーズ。このあたりも磨かれた印象です。

　走り出せば低い回転から豊かな低速トルクを発揮します。40km/hになれば実用的に6速が使えるほど。吸排気系の見直しで眠っていたトルクを掘り起こした印象で、2500rpm付近からの加速はどのギアでも充分。400Xのエンジンが見せる魅力の一部です。

　交差点の右折待ちをする場面で片足で停止した時、ガソリン残量が4分の3程度でしょうか、やや燃料がタンク内でタプタプ揺れるのが少々気になりました。これは次回、改善候補として欲しいところです。

　走り出して感じた美点、それは乗り心地の良さです。最初はふわっとした足まわりなのかと思いましたが、前後のサスペンションの作動性が良好で、嫌な突き上げがありません。19インチの前輪がもたらす穏やかなハンドリングとも相まって、車重200kgを切るその軽さと安定感、乗り心地の良さが巧くバランスさせています。

　細かな部分では、前後ブレーキの初期タッチの減速の立ち上がりはゆるやかで、ソフトな足まわりとマッチしていますが、市街地など少し強めの減速をしたい場面では、意外と右手に力を入れる必要があります。

　左手が受ける軽いクラッチの恩恵と、減速を急ぐ場面で、右の手に入力する力のバランスが、もう少し近いと理想だと感じました。

　コーナリング時は、車体の寝かし込みが自然で軽快。しかも足まわりの路面追従性が良好なため、ツーリングで流すようなリズムでも、加減速を加えたスポーティなリズムでも、不安や不満のない走りを見せてくました。

　標準装着されるブロックパタンのタイヤは、オンロード走行でネガティブに思える部分がなく、車体とのマッチングも良好。一度400Xで林道を走った経験がありますが、ほどよいパワーとソフトな足まわりが活き、そうした路面でもグリップ力ある走りを楽しませてくれました。

　サスペンションストロークが短いぶん、車体重心も低めで、未舗装の林道で抜群の安定感を見せたのが印象的でした。

　舗装路を80km/h程度で流す時の400Xは、余裕と快適性の塊です。メーターに表示される燃費も、市街地と合わせてもWMTCの数値を上回るほど。このエンジン特性がもたらすトルクと早めのシフトアップで低い回転領域を使えば、日常的に低燃費の恩恵を受けられそうです。

　結論を急げば、400Xは意外なる逸材です。選択できる純正オプションを全部載せしても120万円台で収まり、旅仕様のビルドアップも可能です。「400」という記号性を別にしても、よくまとまったバイクという印象でした。

※　※　※

　2019年型ホンダ「400X」の価格（消費税10％込み）は82万6100円です。カラーバリエーションは「マットバリスティックブラックメタリック」と「グランプリレッド」の全2色設定です。