水素を燃やすハイパーカー
アルピーヌは、新しいコンセプトモデル「アルペングロー」を公開した。水素エンジンを搭載するシングルシートのハイパーカーで、今後発売する量産車やレーシングカーのデザインと技術を予告するものとされる。
【画像】水素エンジンのハイパーカー【アルピーヌ・アルペングロー・コンセプトを写真で見る】 全11枚
アルペングローは、F1や世界耐久選手権など、トップクラスのモータースポーツに携わってきたアルピーヌの歴史の延長線上にあるもので、「将来のアルピーヌのデザイン、テクノロジー、ブレークスルーのすべての出発点」だという。
アルピーヌの「コンペティション・スピリット(レースの精神)」を体現するために、何よりもまず、サーキット走行に焦点を当てている。「未来のモータースポーツはこうあるべき」として、奇抜なフォルムだけでなく、パワートレイン技術も大きな特徴となっている。
アルペングローは、水素を燃料とする内燃エンジンを搭載する。その技術的な詳細や、将来のモデルにつながるものかどうかは明らかにされていないが、「ハイブリッド水素内燃エンジンは、環境に優しく、圧倒的なパワーや魅惑的なサウンドなど、他にはない運転の楽しさを備えている」とのこと。
トヨタも、水素燃焼技術を量産化するために、モータースポーツ活動にも力を注いでいる。
また、アルピーヌは、「実質的に蒸気しか排出しない」と述べており、スポーツカーが将来も内燃機関を使い続けながら、カーボン・ニュートラルを実現できる可能性を示唆している。ただし、これは精製過程でCO2を発生させない「グリーン水素」を使用すれば、という仮定の上に成り立つものだ。
水素利用を積極的に検討
AUTOCARは最近、アルピーヌが内燃機関の技術を守る手段として、水素の利用を「積極的に」検討しているという情報をつかんだ。同社CEOのローラン・ロッシは、次のように語っている。
「複数のソリューションを同時に検討するのは当然のことです。アルピーヌは、電動化と両立する別の選択肢を探したい。なぜなら電動化は、好むと好まざるとにかかわらず、少なくとも将来的には自動車全体の60~70%にまで普及するからです」
「残りの領域は、用途や特性、求める機能によって異なります。積載量が多く、日々の走行距離がある程度固定されているLCV(小型商用車)では、異なるソリューションを使用する余裕があると思います」
これまでのところ、アルピーヌが発表している次世代モデルは、新型ルノー5をベースにしたホットハッチ、GT-X Overと呼ばれるコンパクトクロスオーバー、A110の後継モデルの3車種のみ。いずれもBEVとなる見通しだが、ロッシCEOは水素の可能性を否定しない。
「当社の場合、燃料としての水素も解決策の1つになりうると考えています。なぜなら、燃料としてだけでなく、電気を発生させる燃料電池としても水素を使うことができるからです」
「これは素晴らしいことです。水素のエンド・ツー・エンドの産業化を電動化と両立することができるので、1つの道筋になりうると考えています」
そして彼は、水素燃焼技術のビジョンを、サーキットに特化したプロトタイプで披露する可能性まで示唆していた。それがアルペングローのことを指していたことは、今や明らかだ。
アルピーヌらしい軽量マシン?
アルペングローは「他のモデルと同じくらい軽量」とされ、ドライバーの両脇に700バールの円筒形水素貯蔵タンクを2つ配置しているが、車重はA110と同等の1000~1200kg程度と見られる。リサイクル・カーボンファイバーを多用した構造も、軽量化に大きく貢献している。
この軽量化技術と並んで、将来のモデルへの採用が期待されるのがデザインだ。例えば、鳥が翼を広げたようなフロントライトバーや縦型のテールライトが量産車に採用される可能性は十分にあるし、LMP1にインスパイアされたステアリングホイールもそうだろう。
同様に、シャープなV字型のフロントエンド、サイドの巨大なエアチャネル、地面からわずか1mの位置にあるルーフライン、軽量な可動式リアウィングなど、エアロダイナミクスを最適化するための要素も形を変えて採用されるかもしれない。
アルピーヌは、次期LMDhレーシング・プロトタイプが、アルペングローからデザインのインスピレーションを受けることを明らかにしている。
アルペングローについて、ロッシCEOは次のように述べている。
「アルペングローの力強く、美しいデザインは、アルピーヌの未来とモータースポーツに対するビジョンを示しています」
「水素技術を搭載することで、排出ガスをクリーンにしながら、ドライビング・プレジャーがこれまでと同様に実感できる未来を実現するという誓いを強めているのです」
アルペングローの実車は、10月17日に開幕するパリ・モーターショーで、最新のA110 Rなどとともに一般公開される見込みだ。
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