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最高価格598万円! フィガロはなぜ人気なのか?

掲載 更新 26
最高価格598万円! フィガロはなぜ人気なのか?

 日産 フィガロの相場がちょっと凄いことになっている。7年ほど前までは、100万円も出せばまずまずなコンディションの1台が探せたと記憶しているが、直近では100万円以下で買えるフィガロなど皆無。

 走行20万km超の個体でも160万円以上のプライスが付き、2021年6月上旬時点での最高値は、なんと598万円(!)である。

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 その最高値物件を販売している愛知県の「アップル弥富1号線店」への取材を通じてわかったのは、イギリスを中心とする海外からの買い攻勢の激しさと、流通の枯渇により、今後はさらに相場が上がってしまうだろう……という悲しいお知らせであった。

 ちなみにちょうど1年3ヵ月前にフィガロの中古車相場を調べた際には、大手中古車検索サイトでは47台流通し、価格帯は約35万~約360万円。

 この最高値の360万円という中古車の走行距離はなんと9000km、修復歴なしという奇跡の物件だった。その中古車を除けば、上限は約170万円であった。約1年前と比べても高騰しているのである。

 そこでなぜ日産フィガロ人気がここまで上がったのか? 現在の中古車市場はどうなっているのか? 598万円で販売しているお店に話を聞きながら、解説していこう。

文/伊達軍曹 写真/日産自動車

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日産フィガロはどんなクルマ?

ボディサイズは全長3740×全幅1630×全高1365mmというコンパクトな2+2クーペ。リアピラーとサイドルーフレールは固定されているが、スライディングソフトトップを備え、オープンエアモータリングが堪能できた。ソフトトップの開閉は手動

 まずは日産 フィガロというクルマ自体について、ごくごく簡単に説明しておこう。

 フィガロは、日産が1980年代後半にスタートさせた「パイクカーシリーズ」の第3弾として1991年に限定発売された、2+2の小型オープンカー。車台は初代日産マーチのものを流用し、そこにクラシカルな造形のボディと手動開閉式のオープントップを載せている。エンジンは1Lの直4、SOHCターボで、トランスミッションは3速ATだ。

 限定2万台での発売に対し、最初の1カ月で21万件もの応募が集まるほどの大人気となったが、当初の予定どおりの台数を売り切った1992年、惜しまれながら販売終了となった。

1991年2月から1992年にかけて合計2万台が生産されたフィガロ。価格は187万円だった(1991年式)。ボディカラーは四季をイメージした、エメラルド(春)、ペールアクア(夏)、トパーズミスト(秋)、ラピスグレイ(冬)の4色で、ルーフトップ部はいずれもホワイト

フィガロの中古車の底値は135万円、最高価格は598万円!

優雅さを表現し、おだやかな曲線でまとめられたコクピット。操作系部品はアクセサリーのようなテイストでトグルスイッチはシェル(貝)のデザイン。オリジナルCDラジオカセットはディーラーオプション

日産フィガロの中古車情報はこちら!

 で、そんな日産 フィガロの中古車相場が今、爆騰している。日本国内の中古車価格は底値の物件でも135万円であり、前述したとおり最高値物件は598万円(ちなみにフィガロの新車時価格は187万円だった……)。

 そういった「天と底」の間で約20台が流通している中古フィガロの全体像を整理すると、おおむね以下の通りとなる。

●135万~約200万円|走行10万~20万km超の個体
●約200万~約300万円|走行5万~8万kmぐらいの個体
●300万円台|2021年6月上旬現在、該当なし
●約400万~約600万円|走行1万km台の超低走行物件

 その昔は走行5万~8万kmぐらいの個体が100万円台、走行10万km超の個体が100万円以下で探せたのだが、それが今はでは上方向に100万円以上、そのままスライドしている形だ。

 そして、走行1万kmぐらいの超コレクターズアイテム系には400万円台あるいは500万円台のプライスタグが付く……という状況に変わっているのだ。

 日本だけでなく欧米やオーストラリアでも人気が高い絶版名車であることはわかるが、果たして「500万円以上」のプライスでも売れるものなのだろうか?

全国最高値598万円の中古車店に直撃してみた!

1991年式、走行距離1.3万km、598万円で販売されているフィガロ

デザインにこだわっているメーター類。走行距離は1.3万km!

 正味のところを聞くため、全国最高値となる598万円の日産 フィガロ(1991年式/走行1.3万km/ラピスグレー)を販売中の「アップル弥富1号線店」に電話をしてみた。

――もしもし。失礼ですが、フィガロって598万円でも売れるものなんですか?

店主 そうですね、お問い合わせは非常に多いですよ。

――こちらの個体はどういった背景を持つ、どんなコンディションのフィガロなんでしょうか?

店主 これは弊社として買い取ったものではなく、私が、知人であるフィガロオーナー氏から購入したものなんですよ。私自身フィガロが大好きで、個人的にもこれとは別の個体に日頃から乗ってるぐらいですので。

――なんと、そうでしたか。その知人の方は、この個体をどのように乗ってらしたんですか? というか1.3万kmですから、「どのように乗らずに過ごしたんですか?」と聞くべきかもしれませんが。

店主 その知人はですね、新車で買ってから1.3万kmまではごく普通に乗ってらしたんですよ。でもそれ以降、諸事情により乗らないようになって、ご自宅の「日陰」でコレを保管してらしたんです。それを私が買わせてもらった……ということですね。付いている部品はすべてオリジナル、つまりフルノーマルです。

オリジナル、極上の状態に保たれているフィガロ

――長い間動かしていなかったということは、内装等はかなりキレイなのでしょうが、ゴム類とか、換えたほうがいい部品もあるでしょうね。

店主 そうですね。全体として超絶美しい状態ではありますが、幌は新品に交換したほうがいいかもしれません。とはいえ「まずはありのままのコンディションを見ていただきたい」ということで、あえて何も交換しないままにしております。

オープン操作は手動。アクリルコーティングが施されたホワイト革仕上げのルーフと、リアウインドウをトランクに収納することができる

――しかし598万円かぁ……。超ステキなのはわかりますが、個人的にはちょっと手が出ないお値段ですね……。

売れなくてもいいんです!

店主 まあ、売れなくてもいいんですよ。

――へ?

店主 もちろんお客様にこういう言い方はしませんが、私の正直な気持ちとしては「もしも598万円であっても欲しいとおっしゃるなら、お譲りしても構いませんが?」ぐらいのつもりなんです。つまり、あまり売る気はないんです(笑)。なので、このまま売れないとしてもOKなんですよね。

――なるほど。御社にある他の物件は「商材」なのでしょうが、このフィガロは「個人の趣味として店に置いている」ぐらいの感じなんですね?

店主 そうかもしれません(笑)。

新車からオリジナルで張替えなしのシートやオリジナルのダッシュボードはいい状態が保たれている

――ところで、フィガロの相場っていつからこんなに高くなっちゃったんですか?

店主 うーん。直接的には、昨年のコロナ前ぐらいからグッと上がってしまった感触がありますね。しかし、フィガロはもう10年ぐらい前からイギリスやオーストラリアからの買い攻勢がすごかったですから、いつかはこうなるんじゃないか……と危惧はしていましたが。

――「いつかはこうなる」とは?

店主 海外に持っていかれちゃうものだから国内の流通が枯渇して、それに伴って相場が上がってしまう――という循環ですね。だから、今は「やっぱりこうなってしまったか……」と思っています。

フィガロに搭載されたエンジンは、987cc、直4ターボ。76ps/10.8kgm

英国でのフィガロ人気は凄まじい!

当時のフィガロのカタログ

 日産フィガロは日本国内での人気も高いが、それ以上に海外でもカルト的な人気を博しているクルマだ。

 英国には「FIGARO Owners Club」という巨大な愛好家クラブがあり、同クラブは今年6月26~27日、フィガロの生誕30周年を祝うビッグイベントをイングランド中部のウォルトンで開催するらしい(が、入場チケットはすでに完売!)。

 そして海外の自動車オークションでも、日産フィガロならぬ「Nissan Figaro」は、常に高値で取引されるモデルの一つとなっている。

 筆者が確認した限りでは、海外オークションにおけるフィガロの主な高価落札事例はおおむね下記のとおりだ。

●2021年4月、英国。5.7万kmの個体が1万304ポンド(約160万円)で落札
●2020年10月、米国。4.6万kmの個体が2万8000ドル(約308万円)で落札
●2020年3月、スイス。7.0万kmの個体が1万9040スイスフラン(約232万円)で落札

 このほかにも「落札額100万円クラス」の多走行フィガロは数多く、頻繁に出品&落札されており、「海外版ヤクオク」みたいなところで、4.2万kmのフィガロが2万ドル(約220万円)で落札されたのも見たことがある。

 こういった海外における「フィガロ熱」と価格から考えると、現在の高騰した国内相場というのは「日本の業者が結託して相場を吊り上げてる」みたいな話では決してなく、「グローバルな市場原理」によって必然的に上がってしまった結果であることが、見えてくる。

 そして同時に「日産 フィガロが100万円ぐらいで買える時代」はもう二度とやってこないこともよくわかるため、なんとも寂しい気分になってしまうのである。

日産フィガロの中古車情報はこちら!

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みんなのコメント

26件
  • ラシーン
    キューブ(2と3代目)
    ちょっと前のニッサンは、洒落てたと思う
  • Be-1
    パオ
    エスカルゴ
    日産にも遊べる余裕があった時代です。
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