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これぞ日本最高の名機!! 世界最強直6の熟成はなぜできた?? 日産RB26DETTをいまこそ振り返る

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これぞ日本最高の名機!! 世界最強直6の熟成はなぜできた?? 日産RB26DETTをいまこそ振り返る

 日産はこれまで多くの傑作エンジンを生み出してきたが、その中でも直列6気筒エンジンの最高傑作といわれるのがRB26DETTだ。これは言わずと知れたスカイラインGT-R用のパワーユニットで「勝つために生まれた」存在だ。

 最初にR32GT-Rに搭載され、その後R33そしてR34へと受け継がれたが、型番は同じものの、その中身は代ごとに性能を高めていった。その進化の歴史を振り返ろう。

これぞ日本最高の名機!! 世界最強直6の熟成はなぜできた?? 日産RB26DETTをいまこそ振り返る

文/斎藤 聡、写真/NISSAN、ベストカー編集部

■敗北の中から生まれたエンジン

最奥からR32、R33、R34。RB26DETTは第2期GT-R時代を輝かしいものにした立役者といえる

 1985年、インターTEC(インターナショナル・ツーリングカー・エンデュランス・チャンピオンシップ)が富士スピードウエイで行われました。

 このレースは欧州で盛んだったグループA規定に基づいて作られたレーシングカーによるレースを日本で開催したもので、ボルボ240やジャガーXJS,フォードシエラRS500,BMW M3などが参戦し、これを日本勢が迎え打つという図式でした。

 ところが、いざフタを開けてみると国産グループA車両など歯牙にもかけず軽く一蹴。しかも空飛ぶレンガなどと呼ばれていた、四角くて速そうに見えないボルボ240がブッチギリで優勝してしまったのでした。

 1988年にはグループA既定のホモロゲートモデル(ホモロゲーションを取得するために少量生産された専用チューンモデル)としてスープラ3.0GTターボA(70スープラ)やスカイラインGTS-R(7thスカイライン)が登場し海外グループA車両に挑みますがこれも全く歯が立ちませんでした。

 まさに黒船襲来。当時、日本のレーシングカーは速いんだ、という根拠のない自信みたいなものを持っていたのですが、それが完膚なきまでに叩き潰された格好です。それとともに、海外のレーシングカーのレベルの高さを目の当たりにしました。

■グループA勝利を目指して作られたエンジンとGT-R

群雄割拠のグループAを戦ったR32GT-R

 そんな中、満を持して登場したのがスカイラインGT-Rであり、そのために開発されたエンジンがRB26DETTだったのです。

 スカイラインGTS-Rで煮え湯を飲まされたように、タービンサイズを大きくしたくらいではとても歯が立ちません。エンジンブロックやヘッドの設計など根本から設計しなおす必要がありました。他の市販車とは一線を画したオーバースペックエンジンでした。

 2568ccという中途半端な排気量も、排気量ごとのクラス分けできまる車両重量とエンジンのパフォーマンスからきめられました。RB26DETTがRB30からの排気量ダウンではなくRB24をベースにしていました。目標パワーは600馬力以上。

 当初は、ボルボ240の富士スピードウエイでのラップタイムを参考に、1分35秒をターゲットタイムにしていたので2.4L 450馬力程度を想定していました。

 しかし翌86年のインターTEC-でジャガーXJSが1分35秒台をたたき出したことから、GT-Rがデビューする1990年には1分31秒くらいまでタイムが縮むと予想され、GT-Rの目標タイムは1分30秒に修正されました。

 その結果、エンジンはBR24をベースにストロークをアップし86.0mm×73,7mmとして、排気量を2568ccに。ターボ係数1.7をかけた4500ccクラスとしたのでした。

 この排気量区分だと最低重量が1260kgとなり、最低重量よりも車両を軽く作れるうえ、速さに大きくかかわるタイヤ幅も11インチが使えるため、目標タイムが十分に狙えるからです。

 つまりR32GT-Rに搭載されていたRB26DETT型エンジンは、レースに勝つために開発された、市販車用エンジンでいうと完全にオーバースペックだったのです。

 ちなみに市販エンジンは、GT-Rがデビューする1989年から最高出力が緩和され280馬力となったのですが、GT-Rは300馬力を軽く超えてしまい、すでにパワーを抑える必要があったのです。当時マフラーをスポーツマフラーに替えるだけで簡単に300馬力を超えてしまったのは、それが本体の性能だったからなのです。

1989年8月に市販デビューしたR32GT-R

 市販車のR32GT-Rのデビューは89年8月。90年2月にグループAのホモロゲモデルとして標準車のセラミックタービンに対して、耐久性やハイブーストに有利なメタルタービンを搭載した500台限定のGT-R NISMOが登場しています。

 そして1991年のマイナーチェンジでレースやエンジンチューニングに対応するためにシリンダーブロックの補強が行われています。

 またエンジンとは直接関係ありませんが、1993年のVスペックの登場に合わせてGT-Rの泣き所と言われていたクラッチがプッシュ式から、よりハイパワーエンジン向きのプル式に変更されダイヤフラムスプリングが強化されました。

 1993年2月にはN1仕様もタービンがセラミックからメタルに変更されました。

 R32GT-RはグループAレース(JTC)への参戦や、1990年から始まったN1耐久レースでの勝利をより盤石にするために、エンジンや周辺機器にもさまざまな改良が施されたのでした。

 1989年に登場したGT-Rは、その速さに圧倒されましたが、慣れてくると高回転域の伸びにイマ1つもどかしいと感じる排ガスの抜けの悪さを感じました。本来300馬力以上発揮するエンジンを280馬力まで抑えていたからなのでしょう。ただ抜群にタフで、絶大な信頼性、信頼感のあるエンジンでした。

■熟成を続けていったRB26DETT

R33GT-Rは先代からブーストアップ。ガスの抜け感が向上し気持ちよく吹き上がった

 1995年1月にR32からR33GT-Rへのモデルチェンジで、RB26DETTが最も大きく変わったのは過給圧を570mm/Hg(0.78kg/cm2)→620mm/Hg(0.84kg/cm2)に引き上げることです。最高出力は280馬力のままですが、最大トルクが1.5kgm大きくなって37.5kgmとなったことです。

 このブーストアップは、ターボのアウトレット口径が拡大され(ターボのA/R変更)、それとつながるフロントパイプ口径を54mmφから60.5mmφに拡大。2次排圧を低くするなどの改良によって達成されています。

 またピストンの低フリクション化対策としてピストンコンプレッションリング2枚の薄幅化を施すほか棚落ち対策(≒耐久性アップ)としてピストンの肉厚化も行われています。同時にECUを8ビットから16ビットにグレードアップし、点火時期及び燃料調整マップも見直されました。

 R33GT-Rに試乗して感じたのは、骨太で伸びのいいエンジンでした。スペック上は、最大トルクが1.5kgm大きくなっただけなのですが、2次背圧が低くなったことで全体に排気ガスの抜け感が良くなって、気持ちよくかつ刺激的に吹き上がっていく感覚が強くなっています。

 N1エンジンは、ノーマル状態ではレスポンスの鈍さが感じられますが、一旦エンジンが回り出すとフリクションの少なさも手伝ってか、軽快な吹き上がり感がありました。

■R34で進化の頂点に

R34の登場でRB26DETTを搭載した第2期GT-Rは熟成が頂点に達した

 1999年1月に登場したR34GT-Rはターボをセラミック・ボールベアリングターボに変更し、過給圧を620mm/Hg(0.84kg/cm2)→685mm/Hg(0.93kg/cm2)にアップ。最大トルクを40.0kgm/4400回転まで高めています。

 N1仕様はコンロッドの軸受けメタルにケルメット材を採用することで高負荷・高回転時の耐久性をアップしています。

 あわせてインタークーラーの大型化、ウオーターポンプのベーンの大型化によって冷却性能の向上も図られました。

 最終モデルとなるVスペックNURはVスペックのN1仕様がベースになっており、専用強化シリンダー、強化ピストン、強化コンロッド低フリクションプピストンリングが採用され、精密なバランス取りが施されています。

 またターボはタービンの材質をセラミックからメタルに替えたボールベアリングターボが採用されています。

 R34GT-Rは、さらにエンジンが軽やかに吹き上がるようになっていました。ボールベアリングターボのレスポンスの良さ、エンジンの冷却性能の向上によるクリアなパワー感が印象的です。軽快に鋭くパワフル(トルクフル)になっているのを強く感じました。

 RB26DETTデビュー当初は、これまで市販エンジンでは経験したことのない600馬力以上という高い目標設定のため、開発と熟成を繰り返しながら進化していた印象がありますが、R34GT-Rの頃になると進化はほぼ完了します。

 もともとオーバークオリティな設計のエンジンだっただけに、進化熟成は市販エンジンよりはかなり余裕があったのが分かります。

 GT-RはR32からR34まで多くのチューニングカーが作られ、ブーストアップ程度のライトチューンから800馬力オーバーのドラッグ仕様までたくさんのチューニングカーに試乗する機会がありましたが、その性能を体感するにつけRB26DETTがどのくらい特別なエンジンであるかを強く実感しました。

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