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Netflix映画『新幹線大爆破』主演・草彅剛×監督・樋口真嗣インタビュー──ノンストップの弾丸列車を止めるのは誰だ

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Netflix映画『新幹線大爆破』主演・草彅剛×監督・樋口真嗣インタビュー──ノンストップの弾丸列車を止めるのは誰だ

Netflix映画『新幹線大爆破』が配信開始された。本作は、高倉健主演の『新幹線大爆破』(1975)のリブートで、はやぶさ60号の車掌(本務)を草彅剛、車掌(便乗)を細田佳央太、運転士をのん、そのほか要潤、尾野真千子、豊嶋花、斎藤工といった豪華キャストが出演。監督を務めた樋口真嗣と草彅剛に“ネタバレあり”でインタビューを行った。

爆走する列車の中で、静かに火花を散らす人間ドラマを撮るということ

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1975年に公開された『新幹線大爆破』は、爆弾予告によって、新幹線が乗客を乗せたまま暴走を余儀なくするシンプルかつ極限的な設定で、サスペンス映画史に残る作品となった。その50年後、Netflix映画として生まれ変わった新作には、現代の“危機”を映し出す新たな視点が込められている。主演は草彅剛。そして監督は『日本沈没』以来、草彅と18年ぶりの再タッグとなる樋口真嗣。『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』など特撮技術で定評のある監督が、最先端の技術と経験を駆使して、果たしてどのように新たなるドラマを再構築したのか──。主演を務めた草彅剛と樋口真嗣監督に話を訊いた。

──高倉健さん主演の『新幹線大爆破』(1975)のリブートですが、樋口監督がリブートすると聞いたときにはどのように思われましたか?

草彅剛(以下、草彅) 僕も昔から好きな作品ですね。20代のときに、「笑っていいとも!」で関根勤さんとご一緒していたんです。「笑っていいとも!」には30分くらいの後説があるんですが、関根さんが『新幹線大爆破』のモノマネをしていたのを見て初めて作品のことを知って、その後映画を観たんです。それ以来、気になっていた作品でした。高倉健さんとお仕事をしたこともあるのですが、健さんの出演作の中でも、異質というか、特別感のある作品だと感じていて、いかにも、樋口監督が好きそうなテイストだなと思っていました。マニアックなディテールがふんだんに詰め込まれている作品ですから。これはもう樋口監督じゃないと、撮れないと思いますよ。

約20年ぶりの再会

──樋口監督作品では、約20年ぶりの主演です。オファーされた時、どんな思いでしたか?

草彅 「呼んでくれてありがとう」っていうのが第一声でしたね。監督とは『日本沈没』以来18年ぶりで、それだけ時間が経っていたこと自体ちょっと驚きましたけど、再び一緒にものづくりができることが、純粋に嬉しかったです。

樋口真嗣(以下、樋口) 久しぶりな感じがしなかったよね。会った瞬間から「やろうやろう、今から撮影しよう!」って(笑)。あのノリ、変わらないなって。

草彅 監督も僕も、“グルーヴが前のめり”なんです(笑)。ただ、そうは言っても準備が必要ですからね。でも、監督が「また剛くんとやりたい」と思ってくれていたのが伝わってきましたし、それに応える気持ちは強かった。でも、タイミングですよね、作品と巡り合うって。だって、その間『シン・ゴジラ』とか『シン・ウルトラマン』など、監督は多くの作品を手掛けていて、『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』には呼んでくれたけど、ワンシーンしかなかったんです。でも、それでもすごく嬉しかった。出ている長さじゃないですよね。エレン・イェーガーのお父さん(グリシャ・イェーガー)の役。僕ってわからなかった人もいたりしたけれど、『進撃の巨人』は好きな作品だったので、樋口監督は、僕のことよくわかってくれているんですよ。僕の力を最高に発揮できるってポイントをわかってくれている。今回も満を持して、高市という役をくれたんじゃないかと思っています。

──草彅さんは、さまざま素晴らしい監督とお仕事されていますが、樋口監督の特別なところはどこですか?

草彅 樋口監督は、本当に特別なんです。『日本沈没』で連絡先を交換してから、こんなにずっと連絡を取り合っている監督はいませんから。俳優と監督という立場があるから、その距離感を守らないといけないなという大人の自分もいるんですけど、樋口監督の前では無理なんです。ふたりとも小学校2年生が遊んでいるような感じになっちゃって。監督もめちゃめちゃ子どもみたいですから。撮影現場でも一番楽しそうにしているんです。まるでおもちゃ箱をひっくり返して遊んでいるような感覚で作品を作っていくようなところがある。僕は、そういう監督とのやり取りがとても楽しいんですよね。こんな監督は他にはいないです。

JR職員のように

── 今回の撮影では、JR東日本の特別協力を得て、実際の新幹線を使用してのロケもあったと伺っています。なかでも東京から青森間を往復しての撮影は過酷だったとか。

草彅 そうなんです。僕、(撮影期間中)東京と新青森を7往復したんです。朝6時半に上野から出て、新青森着が12時。2時間くらい撮影して、また戻ってくる。上野に着くのは夜の6時半とか。12時間列車に乗って、ワンカットしか使われてないこともありました(笑)。

──そのワンカットとは?

草彅 地下アイドルに水を渡すカットで、僕の“うなじ”が映ってるだけなんですよ。それを見て「え? あの1カットのために12時間……?」って(笑)。でも、それが映画なんですよね。その“一瞬”に賭ける。そこにすべての密度が詰まっているっていう。

樋口 うなじ、大事(笑)。でも本当に、その1カットで観客に伝わるものもある。新幹線という密閉された空間の中で、人物の呼吸や気配をどう見せるかっていうのは、この作品の核だったから。

──高市という新幹線の車掌を演じる上で、JR東日本の特別協力の元に徹底した役作りをされたと伺っています。

草彅 そうですね。所作や敬礼の角度、礼の仕方まで教えていただきました。単に形を真似するだけじゃなく、「お客様を目的地まで安全に送り届ける」という理念を理解することが大事だと教わって。マインドがすべてなんですよ。

樋口 現場でもだんだん僕や草彅くんも“JRの人”になっていったよね。目が不自由な人のための黄色い点字タイルの上には絶対物を置いてはいけないし、立っていてもダメ。撮影中でもお客様が最優先。自然とそういう意識が染み込んでいって、撮影後も新幹線に乗ると、同じような行動をしてしまうから、勤務明けの社員と間違えられて、ホームで「お疲れさまです」と車掌さんに声をかけられたり(笑)。

草彅 新幹線って、運転士1名、車掌1~2名のたった数人で乗客全員を守ってるんです。今回の撮影を通じて、その責任の重さと仕事の尊さを実感することができました。

──撮影は木更津で6分の1のスケールのミニチュアをセットで行われたそうですが、なかでも爆破シーンは圧巻でした。

草彅 あのシーン、僕呼ばれてないんですよ(笑)。あとで「10メートルくらいの本物サイズの車両爆破したんだよ」とみんなから聞かされて。「え、見たかったなあ」って。もうちょっと早く言ってくれたら絶対行ったのに。

樋口 いや、絶対草彅くん忙しいと思って……。

草彅 忙しくなかったよ(笑)。でも映画の完成版で観た時、すごかったですね。CGももちろん使ってるけど、やっぱり“本物”には圧がある。水柱がバーンって上がるシーンなんか、編集の力も相まって、まさに“映画の爆発力”でしたね。

──樋口監督は絵コンテもご自身で描かれますね。

草彅 そうなんです。説明されるより、絵を見たほうが早い。すごく絵が上手で、しかも“奥行き”があるんです。何気ない会話でも、背景や構図に深いレイヤーがあって、そこに映る“物語の気配”みたいなものまで映し出される。あれは樋口監督の真骨頂ですね。

──草彅さんのシーンで言えば、ラストシーンの無言のカットは非常に印象的でした。

樋口 僕にとっても一番好きなシーンです。すべてが終わったあと、彼は独り残される。達成感と、別の場所に散っていく仲間たちへの喪失感。その両方を、台詞なしで表現してもらいました。

草彅 あれ、深夜の撮影でしたからね(笑)。(控室で)もう寝てたんです。「剛くん、出番です」って起こされて、半分夢の中。でも逆にそれがよかったのかもしれない。意識が薄い分、変に作らず、無の状態で立てた。高倉健さんのオーラが、ふっと降りてきたような気がしました。

──草彅さんは「役作りをしない」とよくおっしゃっていますが、この作品でもそうだったのですか?

草彅 はい。僕、基本的に焦ってるんですよ(笑)。でも逆に、その“焦り”の中でしか出ない表情や空気ってあると思うんです。考えすぎると作り物になってしまうから。監督の顔色とか、現場の空気を感じながら、”今ここに立つ”。それが僕にとっての演技です。

樋口 それができるのは、俳優として信頼しているからなんですよね。説明しすぎず、でも迷ったら絵で共有する。そのやり取りが、20年の時を感じさせない、近い距離感になっていたのかもしれません。

──再びおふたりでタッグを組むとしたら、どんな作品がいいと思いますか?

草彅  監督が「これかっこいい」と思う役がいいです。寡黙な男でも、アクションでも。樋口組は“本気で遊べる場所”なので、またそこに呼んでもらえるなら全力で挑みます。

樋口 これからの彼には“クリント・イーストウッド的な老成”が待っている。年齢を重ねても、静かさの内側に熱を宿す。そういう存在になっていくと思う。だから、次は20年後ではなく、近いうちにもう一度、一緒にやりたいですね。

Netflix映画『新幹線大爆破』Netflixにて独占配信中

写真・内田裕介
スタイリング(樋口真嗣)・三島和也(tatanca)
スタイリング(草彅剛)・栗田泰臣
ヘアメイク(草彅剛)・荒川英亮
文・立田敦子
編集・遠藤加奈(GQ)

文:GQ JAPAN 立田敦子
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