新たにランボルギーニのモータースポーツ責任者に就任したマウリツィオ・レスキウッタによると、イタリアのスーパーカーブランドは今季2025年のIMSAミシュラン・エンデュランス・カップのキャンペーン中に、同社のLMDhカー『ランボルギーニSC63』のアップデートを導入する計画だという。
リジェ製LMP2シャシーがベースとなっているハイブリッド・プロトタイプカーで2年目のシーズンを迎えているランボルギーニは、新たにサービスプロバイダーとして契約を結んだライリー・モータースポーツとともにIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の5つの耐久レースを中心にプログラムを展開している。
元BMWのLMDhリーダーがランボルギーニの責任者に就任。新型テメラリオGT3のプログラムも主導へ
レスキウッタとランボルギーニの最高技術責任者のルーベン・モーアは、WEC世界耐久選手権のハイパーカークラスとウェザーテック選手権のGTPカテゴリーでライバルのペースに追いつくのに苦労したSC63にとって、2025年は「開発のシーズン」と位置付けている。
Sportscar365から、このクルマの開発でどのような分野に目を向けているかと尋ねられたレスキウッタは、「ほぼすべてだ」と答えた。
彼はさらにこう付け加えた。「我々はとくに車両のダイナミクス、サスペンション、そしてエアロパーツに注目した。これらの分野で前進する必要がある」
「私はいつも言っている。『やることをより少なくし、もっとうまくやるようにしよう』とね。だから、我々がやりたいのは、私たちが知っている3つの問題点に焦点を当て、当該部分を変更しパフォーマンス・ジョーカー(いわゆるEVOジョーカー)が必要になる可能性のある改善をすることだ」
一方、モーアは、軽量化への継続的な注力も焦点のひとつであると付け加えた。
このクルマは昨年、WECとIMSAの両シリーズでBoP(バランス・オブ・パフォーマンス=性能調整)で認められた最低重量を上回る状態で走っていたと理解されている。
「私たちはつねにこの点を改善しようとしている」とモーアは語った。「それははっきりしている。冬の間にも前進した。ただし、パフォーマンスはつねにいくつかのトピックに依存しているため、これがトピックのすべてだとは言えない」
「ダイナミクス、とくにリヤサスペンション、そしてエアロダイナミクスだ」
「たしかにレースカーにおいて車両重量はつねに話題になる。ホモロゲーションの観点から軽すぎるわけにはいかない。それでも(余裕があれば)バランスウエイトを持つことができる」
レスキウッタは、SC63のアップデートの展開スケジュールはすでに社内で決定されており、シーズン中に複数の開発が行われる可能性があることを示唆した。
これが可能になるのは、現在ランボルギーニがWECでレースを行っていないためだ。WECは今年、より厳格なジョーカー・ポリシーを実施する予定であり、それによればシーズン中のEVOジョーカー使用は認められない。
「計画はある」と述べたレスキウッタだが、詳細やスケジュールについては「今のところは秘密だ」とコメントを控えた。
■BMWでの経験を活かす
2024年12月にランボルギーニに入社した元BMW LMDhプロジェクトリーダーは、これまでのトップレベルのプロトタイプの知識を現在のプログラムに持ち込むことができると考えている。
「(IMSAのトップカテゴリーである)GTPでは、BMW MハイブリッドV8の開発に最初から関わっていたので、それがどこで生まれ、どこに行き着いたかを見てきた」と語ったレスキウッタ。
「この観点から、この種のクルマに競争力を持たせるために何が必要か、また特定の分野で経験を積むために何が必要かは理解している。その経験は間違いなくSC63に活かすことができるはずだ」
「ランボルギーニは2024年に初めて単独でこれを行ったわけではないので、他のメーカーの経験とベストプラクティスを持ち込み作業を強化することができる。これが私がやりたいことだ」
「私たちの組織には優秀な人材とたくさんのアイデアがある。今はそれらを正しい方向に導く必要がある」
■ライリーとの提携は「スーパーハッピー」
モーアは、新しいサービスプロバイダーであるライリーに対し、これまでのところ非常に満足しており、このクルマのさらなる開発にも役割を果たすことが期待されていると付け加えた。
「ライリーが(我々のLMDhプログラムに)参加してくれたことを非常に嬉しく思っている。なぜなら、最初から非常に協力的な方法でコラボレーションできるような相性の良さを感じていたためだ」と同氏。
「私たちは考え方がかなり似ていて、彼らが参加してくれたことをとても嬉しく思っている」
「正直に言うと、IMSAを続けると決めたとき、私たちはもっと責任を持ちたいと考えていた。そのためにはプロバイダーやパートナーが必要であることは明らかだった」
「ランボルギーニ・スクアドラ・コルセとして、ここには施設もなければロジスティクスも人材もない。(年間5レースのためにそれをすべてやるのは)意味がないんだ。これは一般的な戦略の変更ではないし、私たちの側ですべてを構築しても結局継続しなければ意味がない」
「そのため、私たちは非常に短期間で準備できる適切なパートナーを探していた。何年も前から計画していなかったことは明らかで、少し時間的なプレッシャーがあったのは事実だ」
「我々はすぐにライリーとのコミットメントを見つけた。だから、彼らを迎えることができてスーパーハッピーだ! 彼らがマシンの改善にも大いに貢献してくれると確信している」
■北米での活動休止も検討されていた
今年ランボルギーニは、WECハイパーカークラスのフルシーズン・キャンペーンを休止し、IMSAのデイトナ24時間、セブリング12時間、ワトキンス・グレン6時間、インディアナポリス6時間、プチ・ル・マン(ロード・アトランタ10時間)という5つの耐久レースにのみ参加する予定だ。
モーアによると、同社は2025年にランボルギーニSC63でレースにまったく参加せず、完全に開発に集中することも検討されていたことを認めた。なお、最終的にはIMSAと北米市場の継続的なサポートを優先して“完全休止”の可能性が除外されたという。
アクティブなLMDhメーカーは、年間に実施できるテスト日数に制限がある。これがランボルギーニが最初の検討においてポイントになったと考えられている。
「テストに関しては正直に言って、確かに評価・検討していた」とモーアは語った。
「しかしIMSAとの約束もあるため、完全にレースの現場を離れることはしたくなかった」
「私たちはIMSA代表のジョン・ドゥーナンや彼のチーム全体と非常に良好な関係を築いている。彼らとの協力的な話し合いでIMSAから撤退しないことに決めた。なぜなら、私たちにとっても、アメリカは世界中で最大のマーケットであり、継続したいと考えていたためだ」
「純粋にレギュレーションの観点から言えば(参戦継続は)少なくとも代替案にはなるが、最初から撤退はしたくないと言っていた」
レスキウッタは次のように付け加えた。「(比較対象のいない)テストに行くと、つねにトップになる。これでは自分がより良い結果を出したと考え、誤った安心感を生み出してしまう」
「実際に改善を測れるのは、同じフィールドにいるライバルと比較したときだけだ」
「我々にとっても妥協点を見つけなければならない。ルーベン(・モーア)が言ったように、私たちはIMSAをサポートしたいのでIMSAで存在感を示す必要がある」
「IMSAは我々に知名度を与えてくれる。マーケットでの知名度はつねに重要だ」
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