圧倒的パワーのE63 S
text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
photo:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
エンジンについてはどうか。AMGのV8が圧勝だろうか。
たしかに、サーキットで3台を乗り比べれば、E63 Sのアドバンテージはまず揺るがない。ライバルたちより200kgほど重いとはいえ、86.7kg-mものトルクは圧倒的だ。モンスター級といってもいい。
E63 Sは不気味なくらい速い。ドリフトモードで前輪の駆動力を切ったなら、ドライ路面での3速でもずっとホイールスピンしっぱなしだ。
そしてもし、今回のテストでラップタイムを計測する機会が設けられたとしたらどうだっただろうか。思うにこの大きなメルセデスにとって、より軽くて小さく、スプリングがハードなライバルたちにコーナーでつけられた差をストレートで挽回するのは、些細な問題ではないはずだ。
三者三様にして強力なエンジン
V8搭載のC63が存在しようとしまいと、E63 Sのようなクルマが存在する限り、M3は決して直線加速でスーパーセダンのトップに輝くことはできないだろう。
ただ、そんなことはまったく問題ではない。M3はそれでも十分すぎるほど速い。公道上でも、サーキットでも、場所を問わずにだ。510psで不足を感じるのではないか、という心配は無用だ。
ジュリアのV6は、AMGのV8に匹敵するキャラクターの持ち主だ。弾けるような、やや芝居がかった、愛さずにはいられないような甘美さがある。さらに、M3の直6では太刀打ちできない、魅力的なサウンドを奏でる。
だが、このイタリア製エンジンは、ややピーキーで、わずかにラグがある。実際のところ、本当にハードに走らせるには回転を上げなくてはいけないし、中速域の柔軟なエリアはすぐに終わってしまう。
M3のストレート6ならば、過給エンジンとしてはきれいに回り、レスポンスは歯切れよく、パワーデリバリーは驚くほどリニアで、アルファのような問題はない。トルクバンドの広さでも、パフォーマンスそのものでも優っている。
結局はそういうことだ。トリノから5年前に送り出されたクアドリフォリオに対するミュンヘンの対応は、まずボンネットの下から始まったのだろう。
エンジン以上に光るシャシー
しかし、M3をトップに押し上げる要素は、そのミュンヘンの対応が深く浸透しているシャシーやステアリングだ。その差はわずかで、万人に共通するものではないかもしれないが、少なくともわれわれテスター陣にとっては決定的だった。
不肖ソーンダースとプライアー、そしてジェームズ・ディスデイルの3人は、M3とジュリア、E63 Sの3台に乗り、二日間にわたって公道とサーキットを走り回った。その結果、プライアーとディスデイルはアルファがベストだと結論づけた。
それをここに書くのは気がひけるのだが、事実を隠すのはフェアではない。オートカー の試乗テストは、きわめて民主主義的に行われるのが通例だ。
問題は、筆者たるソーンダースが、3人の中でもっとも長い時間をM3の運転席で過ごし、これがわずかながらもほかの2台よりよかったと思ったことだ。その意見は、原稿を書いていても変わらない。それが、多数決を覆す結論をお伝えする理由だ。
AMGの独擅場はアウトバーンのみ
新型M3は、今やかなり大きなクルマになった。全幅をE63 Sと比べると、カーボンファイバーでカバーされたドアミラーを含むと広い。ボディだけなら狭いものの、その差はごくわずかだ。
しかしそれでも、全高や重量は十分に低く、俊敏さやフラットさも満足できるもので、活発さも精確さも抜群。ドライバーを夢中にさせる魅力は、E63 Sとは別次元にある。
より大きく重いE63 Sが、サーキットなら勝負になり、アウトバーンでは完全に凌ぐのも事実だろう。しかしそれも、運転面の魅力全体を評価するなら、ほかの要素ほど価値は見出せない。より小さい2台のほうが明らかに上だ。驚かされるほど違うかもしれない。
M3が本領を発揮するのはサーキットや舗装の滑らかなA級道路で、くぼみのある不整路面のB級道路ではない。とはいえスーパーセダンは、裏道を飛ばすのに向いているクルマでは本来ないのだが。
スポーツカーのようにシャープなジュリア
M3よりはジュリアのほうがバンプを滑らかに乗り越え、車幅がナローに感じられるだろうが、出来のいいホットハッチやライトウェイト2シーターのほうがそれらの点では優るはずだ。
スーパーセダンたるもの、広く、スムースで、速度域の高い道に向いたクルマだ。タイトでバンピーな道を走ると、アルファであっても減衰力が不足しパワーはオーバー気味だと思わされる。
しかもM3とジュリアは、全開で飛ばせるサーキットでの走りもまたみごとなものがある。
ジュリアはなかなかに非凡なクルマだ。コンパクトでモダンなセダンだが、なにかまったく違うものに乗っているかのような物理法則がはたらく。エネルギッシュで軽いタッチと、苦労なしに得られるアジリティは、マツダ・ロードスターを思わせる。
鋭い走りはアルピーヌA110のようだ。ドリフトのしやすさはトヨタ86に近いものがある。それらすべてが、キャビンは広大ではないまでも、ファミリーカーとして及第点にはある4ドアのボディに盛り込まれているのだ。
シャープなだけではないM3
ところがM3は、さらに楽しませてくれる。得るものがより多く、手触りにも運転感覚にも一層引き込まれるものがある。
公道上では、シャシーとパワートレイン、トラクションコントロールの設定をいろいろ試して好みのコンビネーションを探し、ステアリングホイール上にあるメモリースイッチに保存することができる。
保存した設定は、M1/M2と記された明るいオレンジのボタンを押せばすぐに呼び出せる。これほどうまく設定機能を使えて、ドライビング体験をより豊かなものとするのに役立てているパフォーマンスカーはほかにない。
サーキットでは、アルファに近い敏捷性を発揮しつつ、限界領域ギリギリでのボディコントロールやシャシーバランスでは勝っている。スロットルでアジャストできるハンドリングもプログレッシブで申し分ない。ステアリングやガッチリと取り付けられたリアアクスルからは、フィードバックがふんだんに伝わってくる。
ここ20年ほどで最高のM3
M3は少なくともジュリアより110kgは重いので、より硬いスプリングやブッシュが必要になるはずだ。にもかかわらず、ツーリングでの快適性も十分に確保されていると感じられた。
受け入れやすい事実ではないかもしれないが、このG80型はここ20年ほどで最高のM3だ。敬意を集めるE46型以来の傑作といってもいい。
無論、スタイリングの問題はある。デザイナーがグリルの機能性を主張しても、好き嫌いはいたしかたない。しかし、ルックスはひとつの要素に過ぎない。
明確で、なすべきことをすべてわきまえているBMW Mのドライビング体験は、まったくの別格といえるほどだ。本当にすばらしい。
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