サイズを比べて気づくこと
DSオートモビルのフラッグシップであり、このブランドでは初のセダンでもあるDS 9が上陸した。Eセグメントに属するので、メルセデス・ベンツEクラスやBMW 5シリーズなど強力なライバルのいるカテゴリーに送り出されることになる。
【画像】DS 9日本仕様 デザイン/内装【細部まで見る】 全46枚
日本仕様は1.6L直列4気筒ガソリンターボと、これにモーターを組み合わせたEテンス(E-TENSE)と呼ばれるPHEVの、2タイプのパワーユニットがある。
いずれもDS 7クロスバックに設定されているものであるが、DS 7クロスバックのEテンスが4WDだったのに対し、こちらはエンジン車ともども前輪駆動だ。
グレードはガソリン車とEテンスの双方に、リヴォリとオペラが用意される。今回試乗したのはガソリン車の上級グレード、オペラだった。
ボディサイズは全長4940mm、全幅1855mm、全高1460mm。
かつてのクラシックDSより長くて幅広く、DSブランド最大と言いたくなるところだが、実はDS 7クロスバックを上回っているのは長さだけで、高さはもちろん幅も下回っている。
背の高いSUVでは走行性能を確保する関係で、幅も広くする必要があり、その必要がないセダンはスレンダーにできるということもあるが、フォーマルユースも想定して必要以上の威圧感を抑えたのであれば、フランスらしい美意識が宿っていると評価できるだろう。
デザインの見どころは?
ちなみにこの寸法、シトロエンではかつてのフラッグシップC6にかなり近い。自国の最上級の自動車はこのぐらいと、フランス人は考えているのかもしれない。
ただしエクステリアは、ブランドの精神的なルーツであると思われるクラシックDSはもちろん、C6よりも普通だ。
C6が8年間で約2.3万台しか売れなかったことを踏まえ、オーセンティックな姿を選んだのかもしれない。
とはいえウエッジシェイプにしたり、フェンダーを張り出したりという攻めのフォルムではなく、エレガンスを重視したプロポーションであるところはこのクラスとしては新鮮だし、実寸より小ぶりに見えるところも個人的には好ましいと感じた。
その一方で、グリルやヘッドランプ、リアコンビランプに仕込まれたDSブランドならではの装飾は、並み居るEセグメントのライバルと比べても際立っている。シックな服に華やかなアクセサリーを組み合わせるという、フランスらしいセンスが表現できていると解釈した。
内装 DSの中でも格が違う
インテリアはDS 7クロスバックに似るが、インパネは宝飾品を思わせるパールトップステッチが走るレザーで全面が覆われるなど、仕立ては確実に格上。
加えてもちろん、SUVより明確に低いヒップポイントが、見える景色を別物としている。
ピラーが樹脂ではなく、アルカンターラ張りになっていることにも気づいた。ひんぱんに視線に入る部分ではないが、こういう細かい部分のこだわりが、特別なクルマであるという印象をもたらすものだ。
エクステリアと共通しているのは、インパネ中央のアナログ時計やセンターコンソールのスイッチなど、ディテールを華やかに見せつつ、基本はゆったりした曲線でシンプルに描き、過剰な演出を控えていること。アンビエンスライトも優しい色調で、派手にしないところに品の良さを感じる。
SUVの台頭で、セダンはドライバーズカーとしての意味合いが強まっている。その結果、ドライバーを囲むような造形など、エモーショナルな演出が目立つようになった。そんな中でDS 9の運転環境は、Eセグメントでは異彩を放っていると感じた。
乗り心地/後席について
リアシートは身長170cmの自分なら、楽に足が組める。Eセグメントのセダンとしてはかなり広い。
前輪駆動のメリットを教えられるし、かつてのC6とほぼ同じ、2895mmのホイールベースも効いている。低くて長い空間は、SUVが主流になった今では貴重でもある。
このボディサイズにして車両重量が1640kgに収まっていることも、前輪駆動ならではだ。なので225ps/30.6kg-mをもたらす1.6Lターボと8速ATによる加速は、力強いとは言えないものの充分。
音は最近のエンジンとしては低音で、クラシックDSの4気筒を連想させた。
サスペンションはDS 7クロスバックに続いて、アクティブスキャンを装備する。フロントガラスに装着したカメラが前方路面の凹凸を識別し、ショックアブソーバーの減衰力を電子制御することで、快適な乗り心地と走行安定性を両立するもので、コンフォートモードを選択したときに作動するという。
その効果はDS 7クロスバック以上で、ゆったりした周期の揺れがなんとも心地よい。背が低い分、サスペンションチューニングの自由度が大きいのだろう。セダンなので、リアからのノイズやバイブレーションが遮断されていることもわかる。
SUVでは、こうはいかない
極め付けは目の前に広がるエンジンフード中央の太いモールだ。
昔はいくつもの車種にこうした装飾があったが、最近はロールス・ロイスやベントレーなどのラグジュアリーブランドぐらい。他のEセグメントとは格が違うことを教えられた。
この眺めを目にしつつ、同じフランスのハイエンドオーディオブランド、フォーカルの14個のスピーカーから流れてくる良質なサウンドに耳を傾けながら、コンフォートモードで車体の揺れを楽しみながらクルージングしていると、後輪がかなり遠くにあることが伝わってくる。
この感覚もまた、クラシックDSやC6を思わせるものだ。
スタイリングはオーセンティックかもしれないが、そこに仕込まれた数々の技はDSブランドのフラッグシップにふさわしいし、この世界を成立させるにはセダンでなければならなかったことが理解できた。
DS 9オペラ スペック
価格:699万9000円
全長:4940mm
全幅:1855mm
全高:1460mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
燃費(WLTC):14.4km/L(欧州値)
燃料:ガソリン
車両重量:1640kg
パワートレイン:1598cc直4ターボ
最高出力:225ps/5500rpm
最大トルク:30.6kg-m/1900rpm
ギアボックス:8速オートマティック
駆動方式:前輪駆動
乗車定員:5名
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みんなのコメント
小振りで取り回しのいい新しいCクラス、良い具合に外したボルボのS60・・・。
DSはディーラー網が貧弱なのも難点。
何かイマイチだなあ。
売れないでしょ?少なくとも日本では。