販売台数こそ苦戦するも団塊ジュニア世代を魅力した「イケメン」ヨンク
「いすゞMu(ミュー)」と聞いてデビュー当時の「ハードカバー」と「ソフトトップ」の姿をすぐに思い浮かべられたらかなりの4×4通だ。なぜなら1989年の5月にデビューしたミューの、その年の登録台数は600台未満だったからだ。
いまでも色褪せない魅力がある「バブル時代に生まれたパイクカーとは」
わずか半年だけの台数とは言え、同じ年にビッグホーンは7500台、ライバルのトヨタ・ハイラックスサーフは2万5000台以上、日産・テラノも1万1000台以上が普通に登録されていた時代だ。
街中には日産R32型スカイラインGT-Rにマツダ初代ロードスター、トヨタ初代セルシオ、トヨタ・ランドクルーザー80など魅力的なクルマが溢れ、百花繚乱の様相。そんななか、街中でミューを見つけるのは、「1日に3台のVWビートルを見たら幸せになる」という都市伝説より難しかったに違いない。
名前の語源は「ミステリアス・ユーティリティー」の頭文字。デビュー当時の「ハードカバー」のシルエットが、シボレー・エルカミーノのようにワンピース・ボディのピックアップスタイルだったことを知る人は少なく、その画像はWeb検索でもほとんどヒットしないほど。
近年、タミヤRCカーにこのクルマが追加されたが、これとて1990年に追加された4シーターのメタルトップ仕様なのだ。
フレーム付きの大柄なオフロードSUVを完全な2シーターと割り切り、荷台をハードカバーで閉じてしまう斬新なスタイルは、後にも先にもこのクルマのみ。
強いていえばショーモデルをモータージャーナリストが絶賛し、発売後に転けたスズキのX-90が似たもの同士かも知れない。
まるでネイティブなヤンキー!? 遊び心満載の2シーターオープンも!
いずれにせよユーティリティすらミステリアスと称し、「遊び」に振り切ることで当代一の個性を放っていた「突き抜けた」クルマだったのは確かなことだ。
とはいえ、ミューはもちろん、ビッグホーンやウィザード、ビークロスといった当時のいすゞ製クロスカントリー4×4はリヤゲートが左に(つまり歩道側に)開き、常用するシフトレバーもトランスファーレバーも左側に配置されていたことからもわかる通り、これらのモデルが設計上優先されていたのは左ハンドルの北米仕様。
一見、国内需要を無視しているように見えるミューの立ち位置そのものが、北米向けだったことが伺える。
当時、北米では保険代が高騰していたスポーツカーに比べてSUVのそれは安く、大学生になった娘に買い与える最初のクルマがSUVだった、なんて話もあったくらい。だから、車内でムフフなことができるかどうかは別にして、遊び心のあるミューは北米でこそ勝算を見いだすことができたのかもしれない。
ちなみに、同時発売の幌モデル「ソフトトップ」は「ハードカバー」のように荷室だけを覆うトノカバー形状ではなく、初代RAV4のようにボディを2BOXスタイルに見せるオーソドックスなスタイル。それでも2シーターだったのだから、座席の後ろには意外に広い空間が広がっていたはずだ。なお、樹脂製のハードカバーはボディとヒンジで繋がっていたため、気軽に取り外すことは不可能。昔のジムニーのようにオープン走行を楽しむならソフトトップモデルがオススメだったのだ。
「事件な乗り物。」などキャッチコピーが突き抜けていた
ついでに言うと、荷室容積の関係でソフトトップは1ナンバー(普通貨物)、ハードカバーが3ナンバー(乗用)だった。これによりミューを「国産初の3ナンバー2シーター」という贅沢な称号で呼ぶことも可能だった。
当時は初代の日産シーマよろしく、3ナンバー乗用車の自動車税が目が飛び出るほど高かった時代の名残があった。ボディサイズとエンジン排気量の両方で5ナンバーを軽々と超えていながら「高級感」ではなく「カジュアルさ」を前面に出すミューの存在は本当に珍しい存在だった。
およそ日本の常識では図れないクルマであることは当のいすゞ陣営が十分理解した上で確信犯的に宣伝しており、初期のカタログを眺めているとそのキャッチコピーの突き抜け感が面白い。曰く「事件な乗り物。」「退屈退治に出かけよう。」「男女かまわず乗ってください。」「もっとマジメに遊びなさい。」などなど……。
ボディカラーも赤や青、緑と目に鮮やかな色ばかり。初期モデルではメタリックやホワイトすらなく、どれも気に入らない人向けに黒だけは担保してあるような状態。当時「街の遊撃手」のキャッチコピーと度胆を抜くスタントでお茶の間のTVを賑わしていたいすゞジェミニのCMそのままに、カラフルで明るく、元気で垢抜けたイスズ・テイストを愛して止まないファンには堪らない設定だっただろう。
なお、ひと足早く北米でデビューした同型車のアミーゴにリヤシートが付いていた、との目撃情報もあったが、これらは現地ディーラーが後付けしたものとのこと。そんな声が本社にも届いたのだろう、1990年にはソフトトップの屋根を鋼鉄に変え、乗車定員を4名まで増やしたメタルトップが登場した。
時を同じくして2.8Lの直4気ターボディーゼルエンジンを追加。それまでは5速MTに2.6L直4ガソリンエンジンを組みあわせたモデルだけだったが、1991年には4速ATも追加され、ラインアップがグッと増えた。
いすゞの乗用車事業徹底で日本では絶版車に……
その後1992年にはソフトトップが姿を消し、1993年にディーゼルエンジンが3.1L化した際にガソリンモデルとハードカバーが廃止され、唯一残ったメタルトップモデルに5ドアモデルが追加されるに及び、主役の座を実用性に勝る「ミュー・ウイザード」に譲っていった。
その後1998年には3ドアモデルが2代目ミューとしてデビュー。5ドアモデルはミューの一族から独立、シンプルに「ウイザード」として発売され、どちらも2002年のいすゞの乗用車事業撤退まで国内供給された。
なお、初代ミューのボディはモノコックではなく、その元となったピックアップ「ロデオ」から譲り受けた頑丈なラダーフレーム構造。駆動系はフロントエンジンリヤドライブのFRをベースとしたパートタイム4WDで、普段は2WDで走りつつ必要に応じて任意に直結4WDに切り替えることができた。
また、ギヤ比をハイ/ロー2段階に切り替えられる副変速機を備え、5速MTなら5×2=10速のギヤを備え、重量物の牽引や悪路でトルクが欲しい時にレバーを切り替えることで、一段とトルクフルな走りを手に入れることができた。
早い話が駆動系はジムニーやジープ、ランクル70系などと同じ構造。フロントサスはダブルウィッシュボーン式トーションバースプリングと当時のサーフやテラノと同じながら、リヤサスはリジッド式リーフスプリングと常用4×4のトレンドよりやや古めの構造。それでもショートホイールベースであることから、アプローチ、ディパーチャ、ランプブレークオーバーアングルという対地3アングルも優秀で本格的なオフロード走行も難なくこなすことができた。
ミステリアスな20世紀の四駆として記憶に残り続ける魅力に溢れていた
後年、ショーモデルそのままのグラマラスなモデルが現実に発売され、世間をあっと言わせたビークロスが「早過ぎた4×4」と惜しまれ、今でも一部のマニアに愛され続けているが、ミューにそれほど息の長い人気がある、という話は聞こえてこない。
でも、あの当時のいすゞの乗用車には他メーカーとは全く違う輝きがあった。「これ日本に入れちゃったらどうだろう?」「実車化したらどうだろう?」など、そこにはマーケティングばかりのクルマ造りとは違う、何やら人間くさい営みがあって、同じカテゴリーでもさまざまなメーカーからクセのあるクルマが登場し、それを一喜一憂するわれわれもまた楽しかった。
ミューはそんな古きよき時代を忍ばせるちょっとミステリアスで、でもチョロQのように愛らしく魅力的な1台だと思う。
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みんなのコメント
懐かしい思い出だなあ