もくじ
ー 今回の比較が持つ意味
ー 共通する概念も
ー ワインディングで実力をためす
ー 蘇る昔の記憶
ー 扱いやすいアルピーヌ
ー ドライバーの腕が試されるクルマ
今回の比較が持つ意味
はじめに断っておくが、これは比較テストではない。勝者も敗者もなければ、登場するクルマじたいもわたしの伝えたいところを形にする意味合いでしかないのだ。
つまりここにあるマクラーレン・セナがべつにほかのハイパーカーでも、あるいはフェラーリ812スーパーファストやランボルギーニ・アヴェンタドールSVJのようなスーパーカーの頂点に位置するクルマでもよかったわけだ。
対するアルピーヌA110にしても今回のお題目にはまちがいなくうってつけなのだが、これが仮にロータス・エリーゼだったとしても意味として変わりはないのだ。
というわけで、さながら羊飼いの子ダビデが巨人ゴリアテを征伐する旧約聖書のくだりのごとく、5万ポンド(717万円)のちっぽけなスポーツカーがカーボンファイバーの鎧をまとった75万ポンド(1億700万円)ものハイパーカーを打ち倒す話を期待された向きには、ごあいにく様というしかない。
共通する概念も
今回の2台、概念や構造には通じるところもある。たとえばミドシップに置かれるエンジン、7速のパドルシフトつきトランスミッション、見事なまでに軽量化に重きをおいた車体構造あたりがそれだ。
だが、世のクルマの中でもっともきわだつ重要な共通点はおそらく、両車ともAUTOCARのロードテストで満点の5つ星を獲得したクルマということだろう。そして今回の記事も、その評価をいささかも貶めるものではない。
そんなことより、いまはるばるウェールズの山の中までやってきたのは、ある問題を投げかけて願わくば答えも見つけ出すためだ。
その問題とは「何をもって『じゅうぶん』とみなすか」ということだ。言葉としてはかんたんだが、これよりうまい言い方が思いつかない。
「じゅうぶんなパワー」といってしまうと、とたんに重量やエンジンのトルクとその出かたを考えた話になってくる。「じゅうぶんな性能」といってもいいのかもしれないが、そうなるとたいていは直線加速性能を思いうかべてしまうだろう。
ワインディングで実力をためす
必死に考えたあげく、こう定義することにした。このウェールズの山道のような世界に冠たるワインディングロードで、どれほどの運動性能を全方面にわたって発揮できるか。
それは持てあますほどのものなのか、はたまたこのクルマでよかったと思えるほどの素晴らしい喜びをもたらすものなのか。ひいては、この手のクルマにより深い楽しみをもたらすものなのかということだ。
そういうわけだから、ここに持ちだした2台が絶対的にすぐれた実力の持ち主なのはおわかりいただけよう。
アルピーヌは、日常に使える融通性を保った上でたぐいまれな運転感覚と反応性をそなえ、現代のスポーツカー界に新風を吹きこんだ近年まれに見るクルマだ。これほどの実力をそなえて普通のひとにも何とか買えそうなクルマなど、大げさでもなんでもなく55年前に出た初代ポルシェ911以来ついぞ記憶にない。
対するセナはどうか。たしかに世の流れを変えるようなクルマではないだろう。だが並のスーパーカーをはるかに見下ろす高みに上がったという点では、功績はおなじくらいかもしれない。
蘇る昔の記憶
ただ、純粋な公道上の性能でいえばたしかに圧倒的に多才なのだが、おなじマクラーレンがもう25年も前に出したF1という一大傑作以降、スーパーカーの能力というものを目に見えて広げたクルマなどそもそもあっただろうかという疑問は依然わだかまったままだ。
さて昔は、といってもそう遠い話ではないが、わたしごときのただのロードテスターがアルピーヌほどの性能のクルマに近づくときはまず一種の畏れのようなものをおぼえ、そしてほかのクルマとははっきりとちがう力を秘めることから来るいくばくかの心許なさをも感じたものだった。
これから向かう山道を見据える前に、おおきくひと息つく。そういえば30年前にこの稼業をはじめたとき、AUTOCARがなんとか借りられた最速のマシンはフェラーリ・テスタロッサだった。
当時もおなじ場所でおなじようにひと息ついたことを思いだす。ほんとうの話だ。パワーウェイトレシオもトルクウェイトレシオも、いまのアルピーヌをほんの少し上まわるくらいでしかなかったのだから。
扱いやすいアルピーヌ
そのアルピーヌだが、ひとことでいうならメガーヌから動力系を借りてきて、敢然とあるいはほとんど強引に、海千山千のスポーツカー勢に殴り込みをかけたクルマだ。われわれはそこに白羽の矢を立てた。まさに、現代スポーツカーの馬力競争に辟易したひとのためのクルマということだ。
そんなわけで、ここからはアルピーヌの居心地の良い、ちいさいながらも意外なほどゆとりを感じさせるコクピットにお供いただきたい。スタートボタンを押して生命を吹き込むと嬉しそうなひと吠えが響きわたり、それはステアリングにつく赤い「スポーツ」ボタンを押すとくぐもったうなりに変わる。かなたへ延びる道は長く曲がりくねり、上下左右あらゆる方向にたえずうねっている。
駐車場から出るときには、もう印象は上々だ。あたかも血液のように、自信が体中を駆けめぐる。走りだしてすぐ2速に上げたら、いざ解きはなつ。すぐさま猛然と、そう、テスタロッサなみの加速が襲う。エンジンがひときわ高く吠えたところで、ギアを上げる。ここからはもっぱら3速と4速を使い分けていく。そういう道なのだ。
お尻の下で、アルピーヌはしなやかに路面をいなしてくれる。ここも凡百のクルマとはちがうところだ。あたかも深呼吸するかのような動きで流れるように路面をなぞり、主にシャシーあるいはときにステアリングを介してドライバーにたえず語りかけてくる。運転のリズムをつかむのがこんなに易しいクルマなど、世界のどこにも売ってはいないだろう。
ドライバーの腕が試されるクルマ
クルマが走りっぷりを見せつけるだけでなくドライバーに頭を使わせようとしていた時代へと、アルピーヌはあざやかなまでに時計の針を巻きもどしてくれる。なんだ、使い古したロードテストの決まり文句かとお思いになるかもしれない。そう、コーナーのたびに感じられる人間と機械のたぐいまれなる一体感、などなどカビの生えた一節の数々だ。
もはや、われわれはふたつの理由でそんな言葉を使わなくなった。ひとつはもう数十年も前にそんな言葉自体に飽きてしまったことだが、世のクルマがそんなふうに感じられなくなったことがもっとおおきな理由だ。
もっとパワーがほしいなど、走っていてこれっぽっちも思わなかったし、アペックスからの立ち上がりでもっとスピードがあればと歯ぎしりすることもなかった。現実世界では、5万ポンド(717万円)のA110に251psのエンジンはまったくもって「じゅうぶん」というほかない。さらに上を望む理由など、どこにあるのか。
試乗を終えたアルピーヌを、セナのとなりに停める。答えを出すのはわたしなのだ。怖れが先に立つ。
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