10月15日に大分県のオートポリスで開催された2023スーパーGT第7戦『AUTOPOLIS GT 450km RACE』の決勝。GT300クラスはランキングトップで臨んだ52号車埼玉トヨペットGB GR Supra GTが2連勝を飾り、ランキング2位の2号車muta Racing GR86 GTに20ポイント差という圧倒的優位な状況で最終戦もてぎを迎える。
最終戦を残した段階でシリーズチャンピオン候補が52号車と2号車に絞られた2023年のGT300。もてぎでは2号車が予選ポールポジションの1ポイントを獲得することができなければ、その瞬間に52号車のチャンピオン決定となる。そして、今回のレース結果によりランキング上位を争っていた数チームが最終戦を残した段階で、完全にチャンピオン獲得への権利を失うことになった。ここでは、上位4チームによる“敗北の声”をお届けする。
埼玉トヨペットSupraがmuta GR86の猛攻を凌ぎ2連勝。20点リードで最終戦へ【第7戦GT300決勝レポート】
■「気づいたら回っていた」UPGARAGE NSX GT3
前戦となる第6戦SUGOで劇的な大逆転劇で今季3勝目を飾ったかに見えた18号車UPGARAGE NSX GT3。しかし、レース後に最低地上高違反により失格となり、52号車と10ポイント差のランキング2位でオートポリス戦を迎えた。
9番グリッドから決勝に挑んだ18号車だったが、15周目の1コーナーで96号車K-tunes RC F GT3が後方から接触。グラベルにストップし、レースには復帰したものの17位ノーポイントに終わり、チャンピオンを獲得することは不可能となった。
ステアリングを握っていた小出峻はいつもどおりブレーキを踏んだものの、「僕が気がついたときにはもう回って(スピンして)いました」と避けられないアクシデントだった。追突した96号車からは謝罪があったというが、小出は「レースなので特に気にしていません」と続ける。
しかし、このアクシデントで周回遅れになったことも影響し、18号車は結果的にチャンピオン争いから脱落。小出にとっても“ルーキーチャンピオン”という称号を手に入れられなくなった。
「やっぱりチャンピオンへの権利がなくなってしまったことはすごく悔しいです。結果は後から付いてくるので(チャンピオン争いを)考えないようにはしていましたけど、目指してないわけではもちろんありません。『目指していた』という気持ちもあるので、本当に悔しいという一言に尽きます」
「まだ最終戦が残っているので、“ルーキーシーズン3勝目”を目指します」と小出。モビリティリゾートもてぎはホンダNSX GT3との相性も良いだけに、実現可能な目標だろう。
■「すごく難しかった」Studie BMW M4
第3戦で優勝を飾り、続く第4戦でも2位に入ったことで、今季は常にランキング上位につけていた7号車Studie BMW M4の荒聖治。こちらも第7戦にはトップと10ポイント差のランキング3位で迎え、11番手から決勝レースをスタートするも、ペースが上がらずに8位でレースを終えた。
荒はレース後、「本当にこのサーキットはタイヤの扱いが難しいです。GT500に譲るとタイヤカスを拾ってしまい、グリップを回復するのに時間がかかってしまいます」と険しい表情をみせる。
「もう少し速いペースで走ることができれば……という感じでした。序盤だけでなく、中盤から終盤までタイヤの状態が良いときはかなりのペースで走ることができますけど、それを長く続けることができれば……でしたね。なんか、すごく難しかったです」
「今回は(他車の)速さが段違いだったので厳しかった」と続け、チャンピオンの可能性が消滅した最終戦もてぎでは、スペングラーとともに優勝を目指す。
■「平等じゃない」リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R
今季はサクセスウエイトが重いながらも善戦を続け、この第7戦でも17番手スタートから12ポジションアップの5位でレースを終えた56号車リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R。
決勝では予想以上に「タイヤが持った(米林慎一エンジニア)」ことで、当初の作戦を変更して1回目のピットインを引っ張る。56号車は45周目に最初のピットストップを行うと、その2周後にオリベイラをピットに呼び戻し、給油のみを行って再びレースに復帰するという作戦を採った。
「僕のスティントでは、タイヤをマネージメントしながらもペースがかなり良かったので、行けるところまでいきました」と第1スティント担当の名取鉄平。しかし、上位勢には追いつけないままチェッカーを受けることになり、名取は性能調整(BoP)への不満を続ける。
「レースをしている以上しょうがないですけど、(BoP)を平等にしてくれれば、もっとしっかりと結果を残すことができると感じています」
「前回(SUGO)はいろいろなアクシデントがあったのでしょうがない部分もありますけど、どちらにしても今回は予選からブリヂストン勢が速かったので厳しい戦いでした。でも、そんな状況でもポジションを上げることができましたし、FIA-GT3車両とヨコハマタイヤ勢ではトップなので、悪くはなかったと思います」
56号車は第5戦でのタイヤ脱落トラブルによるリタイアを皮切りに、前戦SUGOではGT500クラスの100号車STANLEY NSX-GTとの交錯アクシデントと、悪い流れが続いてしまったことがチャンピオン争い脱落に影響したのかもしれない。
最終戦に向けては「チャンピオンを獲ることはできなかったですけど、来年に繋がる走りが最低限できたらいいなと思っています」と名取は締めた。
■「抜ききれずに悔しい」SUBARU BRZ R&D SPORT
2021年のチャンピオンにして、2023年も井口卓人と山内英輝のコンビを継続する61号車SUBARU BRZ R&D SPORT。しかし、今季は予選で速さを披露しても、決勝では思ったような結果を残すことができず、第6戦SUGO終了時点でのランキングは7位となっていた。
ここまで勝利がない61号車にとって、このオートポリスはチーム、そしてGTA-GT300規定車両が得意としているサーキット。その期待どおり、予選ではトップの2号車と0.125秒差の2番手につける。
しかし、迎えた決勝では序盤から2号車についていくことができず、井口が担当した最終スティントでは31号車apr LC500h GTの根本悠生との3番手争いを繰り広げるも、オーバーテイクは叶わず4位フィニッシュとなった。
「(31号車に)追いつくまではすごく良かったんですけど、やっぱり後ろついてからはタイヤの磨耗なども含めて厳しかったですね。追い抜ききれなかったことは悔しいです」と井口。
この結果チャンピオン獲得が叶わなくなった61号車。井口は最終戦で「捨てるものや失うものはないので、ただ思いっきりやるだけです」と、いまだ掴めていない今季初勝利を狙う。
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