2019年にF1デビューを果たし、2024年にはF1で6年目のシーズンを迎えるマクラーレンのランド・ノリス。ここまで2位表彰台はあるものの、優勝には手が届いていない状況だ。
これについてマクラーレンのチーム代表を務めるアンドレア・ステラは、ノリスのポテンシャルが、まだ最大限まで発揮されていないと考えているようだ。
■マクラーレン、昨年途中から開発を進めてきたレッドブルの”不愉快なサプライズ”を警戒
ノリスは2023年シーズン、開幕直後こそ厳しい戦いを強いられたものの、マシンのアップデートが成功した中盤以降は一気に競争力を上げ、表彰台の常連となった。チャンピオンとなったレッドブルのマックス・フェルスタッペンには太刀打ちできなかったものの、実に7回の表彰台を獲得。ドライバーズランキングでも自己最高の6位となった。
そんなノリスについてステラ代表は、まだ潜在能力が全て発揮されていないと考えている。前述のとおりノリスはコンスタントに表彰台を手にしたものの、ミスも多く、取りこぼしたグランプリもあった。
「コース上での事象の何かについて、言及すべきではないと思う。プロスポーツのこれほど高いレベルでパフォーマンスを発揮する時には、総合的に見るのが非常に重要なんだ」
ノリスのミスについて尋ねられたステラ代表はそう語った。
「人間で言えば、身体的な状況と精神的な状況が影響しあっている場合が多い。それと同じように、精神状態は全体的な満足度と、チームといかに緊密になれているかということに繋がっている」
「ただこのシリーズは、非常に競争が激しいので、常に完璧にまとめあげる必要がある。それが違いを生むんだ。彼はまだ、ポテンシャルの全てを発揮できていない。彼については特に、どれほど優れているのかということについてはほとんど解明されていないのだ」
「時々彼は、我々を驚かせるようなパフォーマンスを発揮する。昨年のサンパウロGPのことを思い出して欲しい。スプリントの予選(スプリントシュートアウト)で、セクター1でコンマ2~3秒失ったのに、ポールポジションを奪ったんだ。どうしたら最後の5つのコーナーでポールポジションを獲得できたのか? 本当に素晴らしいパフォーマンスだった」
「しかしこのレベルだと、一貫性が違いを生み出すんだ。マックス(フェルスタッペン/レッドブル)は、どれだけ安定して力強いパフォーマンスを発揮できるかという点で、本当に新しい基準を確立していると思う」
フェルスタッペンは2021年に、22戦中18戦で表彰台を獲得。その後22年は17戦、23年は21戦でトップ3フィニッシュを果たした。超ハイレベルで、高い安定性を発揮しているわけだ。
一方でノリスは、未勝利ながら通算13回の表彰台と、通算633ポイントを獲得。これはいずれも、未勝利ドライバーの中では最多記録だ(表彰台回数の記録は、ニック・ハイドフェルドと同数)。
ただノリスには、2021年のイタリアGP(チームメイトのダニエル・リカルドが優勝)や同年のロシアGP(雨が降り出した中スリックタイヤでステイアウトしたことが裏目に出て、勝利を逃した)など、勝利まであと一歩というレースもいくつかあったのも事実だ。
1勝目を挙げることができれば、ノリスはリラックスできるようになると思うか? そう尋ねられたステラ代表は次のように語った。
「最初の勝利が重要だと思うかと尋ねられると、その答えはノーだ」
そうステラは語った。
「初優勝が効果的なのは、ある程度自信を持つことができるようになるからだ。それにより、他のことも少し楽になると思う」
「しかし現時点では、そうはならないだろう。その主な理由は、我々がランドに安定して優勝を争える状況を提供できていないからだ。そう言うべきだろうね」
「ランドが初めてレースに勝てば、それは素晴らしい瞬間になるだろう。彼にはその準備ができている。ただそれよりも、我々が準備をしっかり整え、彼がチャンスを掴めるようなクルマを提供することが重要なんだ」
なお昨年のカタールGPのスプリントでは、ノリスのチームメイトであるオスカー・ピアストリがトップチェッカー。先輩よりも先にF1での”勝利”を手にすることになった。
決勝レースでも、ピアストリがノリスよりも先に優勝を手にしたら、頭を悩ませることになるか? そう尋ねると、ステラ代表は次のように語った。
「オスカーが勝利を収めた時のことを尋ねられた際、私の脳裏に浮かんだのは『頭が痛いな』ということじゃなく、『わぁ、楽しみだな』ということだった」
「昨年のレッドブルの強さを考えると、それが達成できれば信じられないようなリザルトということになるだろう。他の人が付け入る部分はほとんど残されていなかった」
「だからもしオスカーが勝利を収めることができたら、それは信じられないほどの感動になるだろうし、ランドも感動することだろう。だってそのことは、我々がレースに勝てるクルマを持っているということを意味しているんだからね」
「ランドは、非常に公平な人物だ。彼は『オスカーができたことと同じことをするためには、何を改善する必要があるんだろうか?』と自問自答するような人なのだ」
■レッドブルがノリス獲得を狙っている??
なおレッドブルは、ノリスをフェルスタッペンのチームメイトとして獲得することを考えているという情報もある。マクラーレンとノリスの契約は2025年末まで結ばれているが、それ以降もノリスを起用し続けるためには、マクラーレンとしては大きく前進する必要があるだろう。
「我々がしなければいけないのは、彼が望む環境を与え続けることだけだ」
そうステラ代表は言う。
「その結果、彼がライバルチームに自分を売り込むのではなく、このチームに留まってくれるとに自信を持っている」
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