完璧といえる2.4Lの自然吸気エンジン
新しいトヨタGR86のフロントへ搭載される、2.4Lへ拡大された自然吸気の水平対向4気筒エンジンは、アイドリング時からスリリングなサウンドを響かせる。意欲的に回るユニットの可能性を、静かに主張するように。
【画像】乗り手の気持ちを鷲掴み トヨタGR86 善は急げ 日本のスポーツモデルは他にも 全136枚
エンジンルームから車内へは、トヨタがアクティブ・サウンドコントロールと呼ぶパイプでノイズが伝達される。低回転域では雑音も多いが、負荷が高まるほど音質は良くなっていく。
従来より人工的に聞こえるものの、耳障りなことはまったくない。最近では新鮮に思える自然吸気エンジンの息吹を、存分に楽しむことができる。
パワー感は大幅に増強されている。フラット4は4000rpmを超えた辺りから本領を発揮しはじめ、実際に速いだけでなく、聴覚的にも気持ちを高ぶらせていく。最高出力は234psがうたわれる。
レスポンスは即時的で、回転上昇は滑らか。レッドゾーンの7000rpm+αまで、勢いよく吹け上がる。一生懸命回したくなる質感は、完璧といっていいだろう。
ステアリングホイールからは、若干ながら、手のひらへの感触が薄くなった。先代より大きい18インチ・アルミホイールと高性能なタイヤ、僅かに直径が小さくなったステアリングホイールなどが原因かもしれない。
これらによって、パワーステアリングの働きが強められた可能性もある。だが、郊外の一般道を積極的に運転するような場面で、先代の備えていた輝きが失われたわけではない。
グリップ力と落ち着きを増したシャシー
総じて、新しいGR86は先代よりシリアスに運転することで輝くスポーツカーになったようだ。意欲的に旋回し、カーブでは高い速度域を保てる。エンジンの回転数を高め、大きいサウンドに浸りながら湧き出るアドレナリンに浸れる。
シャシーは、グリップ力を確実に増している。パワーが向上したことと相まって、惹き込まれるようなコーナリングも味わえる。その反面、クルージング時のしなやかな落ち着きは、僅かながら減じてもいる。
従来よりハードコアな仕上がりともいえ、日常的な低い速域ですぐ手に入る楽しさは、ほんの少し狭められた様子。そのかわり、速度域を問わず走りを堪能できる可能性は広げられた。
カーブの続く英国郊外の道へ足を進めると、グリップ力が高められ、サスペンションが引き締められたことを実感する。路面のツギハギや隆起部分を通過すると、明確な振動がドライバーへ伝わってくる。舗装状態では、ロードノイズも小さくない。
先代の86は、ドリフト・チューニングされた1980年代の日本車の現代版に思えた。新しいGR86は、よりハードコアになった1990年代の日本車的。
86の性格は、2代目で僅かながら決定的に変化したといえそうだ。これには、賛同できないという人もいるかも知れない。
ドライバーの気持ちを鷲掴みにする
姿勢制御が穏やかで、グリップ力が限定的だった初代の86。比較すれば操縦性の懐が深く、乗ってすぐに誰もが手懐けやすかった。
新しいGR86では、フロントエンジン・リアドライブというシャシー特性を引き出し堪能するために、より積極的に運転しなければならない。高めの速度域で、コーナーへ飛び込んでいく必要がある。
18インチのホイールと、ミシュラン・パイロットスポーツ4タイヤも、そのために与えられたのだろう。2万9995ポンド(約504万円)という価格の英国では、標準仕様になっている。
トヨタGR86は、ドライバーへの要求を高めつつ、先代より幅の広い能力を獲得した。端的にいって、非常に素晴らしい現代のスポーツカーだ。ただし、10年前に登場した86のような興奮には至っていないようにも感じた。
従来以上に速く、グリップするGR86の体験に、より多くのドライバーが心を動かされるだろうか。初代以上に商業的な成功は得られるだろうか。すでに注文の受付を終えた英国では、不必要な疑問といえるけれど。
ガズー・レーシングは、ここ数年で素晴らしい評価を築き上げてきた。あと少しだけ興奮を高めることも、現在のトヨタならできたはずではある。とはいえ、新しいGR86がドライバーの気持ちを鷲掴みできることも間違いはない。
トヨタGR86(英国仕様)のスペック
英国価格:2万9995ポンド(約504万円)
全長:4265mm
全幅:1775mm
全高:1310mm
最高速度:225km/h
0-100km/h加速:6.3秒
燃費:11.4km/L
CO2排出量:200g/km
車両重量:1276kg
パワートレイン:水平対向4気筒2387cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:234ps/7000rpm
最大トルク:25.3kg-m/3700rpm
ギアボックス:6速マニュアル
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みんなのコメント
日本でもそうなりそうだけど