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多くのクルマ好きにシンデレラフィットするフル電動EV/レクサスRZ450e“version L”試乗

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多くのクルマ好きにシンデレラフィットするフル電動EV/レクサスRZ450e“version L”試乗

 モータースポーツや自動車のテクノロジー分野に精通するジャーナリスト、世良耕太がレクサスRZ450e“version L”に試乗する。レクサス初のBEV専用モデルとして2023年3月に登場した新型RZ。走行性能も室内空間も装備も“上質なおもてなし”に包まれたレクサスならではの新型は、電気自動車の未来を先取りする注目の一台だ。新型RZの実力を深掘りする。

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レクサス、BEV専用『RZ』にFWDモデル『RZ300e』を追加。同時に一部改良を実施

 クルマにシンデレラフィットというものがあるとしたら、「このクルマがそうなのでは?」とウットリとしたのがレクサスの電気自動車(BEV)『RZ450e』である。自分の感覚にぴったりだからといって、カボチャの馬車が迎えに来るわけでもなく(来られても困るが)、心地良い印象だけが残った。

 無粋なことを言ってしまえば、『RZ450e』はBEV専用のプラットフォームを含めハードウェアの多くをトヨタのBEV、bZ4Xと共用している。71.4kWhのバッテリー容量は同じだし、前輪と後輪を独立して調圧できる2チャンネル回生協調ブレーキシステムも同じだろう。同じ要素を数え上げればキリがなさそうだが、そんなことが野暮に思えるほど、『RZ450e』は“レクサス”のBEVになっている。

 そもそもエクステリアのデザインからして、「おっ!」と思わせるインパクトがある。伝統的なレクサスの顔なのはひと目でわかるが、開口面積は極端に小さく、顔の半分をマスクで覆ったような印象。エンジンを積んだクルマは冷却風を取り込むためグリルに相応の開口部を確保する必要があるが、BEVの場合は極端に狭くて済む。その特徴を生かした顔作りだ。

 レクサスはこれまで“スピンドルグリル”と呼ぶテーマで顔をデザインしてきたが、RZでは“スピンドルボディ”を取り入れた。顔だけでなくボディ全体でスピンドル(紡織機で糸を巻き取る紡錘=ぼうすいの形をイメージ)を表現するという。

 先の『ジャパンモビリティショー2023』に、レクサスは『LF-ZC』を出展した。2026年に導入予定のこの次世代BEVが取り入れているのがスピンドルボディだ。フェイス(顔)に留まらず、ドアサイド、リヤバンパーへと断面を連続させることで、スピンドルを表現している。『RZ』はいわば、未来のBEVの形を先取りした格好だ。

 ドアを開ける行為ひとつとっても“新しさ“が感じられる。電気制御の『e-ラッチシステム』を採用しているからだ。ドアノブのスイッチに触れるとカチャっという機械音とともに解錠される仕組み。すでに『NX』や『RX』で採用済みの技術ではあるが、電気仕掛けであるぶん、BEVとのほうがなじみがいいように感じる。

 インテリアの空間づくり、雰囲気づくりがまたいい。レクサスは送り出すモデルごとにクオリティが上がっているのをヒシヒシと感じる。レクサスは『RZ』のインテリアを「上質なおもてなし空間」と表現しているが、まさしくそのとおり。肌触りのいいウルトラスエードのシートに腰を下ろし、コックピットに収まった瞬間、手厚くもてなされている気分になる。

 と同時に、ドライバーの気分を高揚させるムードづくりがされている。『RZ』のコックピットは、多分にコックピット=操縦席的だ。メータークラスターと一体になった大型のセンターディスプレイ(タッチ操作式)はドライバー側に傾いており、適度な囲まれ感を演出。レクサス初となるダイヤルシフトノブ(「R」「N」「D」の切り替えを直感的に行うことができ、好印象)は実際に機能的であるだけでなく見た目もいい。ダイヤルの見た目と感触が想起させるのだろう、オーディオ機器のボリュームダイヤルを触るときのような厳粛な気分になる。

 エクステリアやインテリアの見た目や、手に触れる物の質感も大事だが、BEVとしての走りも重要。シンデレラフィットではないかと感激したのはむしろ『RZ450e』がもたらす走りの影響が大きい。ステアリングを切り込んだ際のクルマの反応や車体の動きにしても、アクセルペダルを踏んだときの加速方向の動きにしても、徹底してスムーズで、急な動きは顔を出さない。とても上品だ。

 といってもたもたしているわけではない。『RZ450e』はフロントに最高出力150kW、最大トルク266Nm、リヤに最高出力80kW、最大トルク169Nmのモーターを搭載する。車両重量は2100kgあるが、胸のすくような走りを体感するには充分なスペックだ。フル加速を試みても、首がガクンと後ろに倒れこむような下品な動きは見せず、速いんだけどスムーズな加速を披露する。これは、制御の賜物だ。

 減速時も同様で、極めて上品。ピッチ変動が少ない。旋回時も同様。ロールはほどよく抑えられており、品良く旋回する。スロットルオンでの旋回では、舵にまだ余裕が残っていることがステアリングホイールを握る手に伝わってくる。だから、気持ちにゆとりを持ちながら気持ち良くコーナーに向かっていける。それが、交差点の角であっても。

 上品かつ気持ちいい走りの実現には、ラジエターサポート部の補強などのボディの強化と、四輪駆動システム「DIRECT4」が効いていそうだ。DIRECT4は車輪速センサー、加速度センサー、舵角センサーなどの情報から、前輪と後輪の駆動力配分を100:0~0:100の範囲で制御。加速時や減速時はピッチングを抑え、旋回時は切り始めとコーナー脱出時で前後の配分を変えるなどし、俊敏な動きを実現する。

 ボンネットフードを開けて「ははーん、気持ちいい走りの理由はここにもあったか」と、手を打つ思いをしたのは、車体の微小な変位を効果的に減衰するヤマハのパフォーマンスダンパーを見つけたからだ。

 目視はできないが、フロントだけでなくリヤにも付いている。筆者は過去に複数のクルマでパフォーマンスダンパー「あり」と「なし」の比較試乗をしており、このダンパーの装着によってクルマがワンランク上の引き締まった動きになるのを知っている。『RZ450e』にも間違いなくその効果は現れているはずで、パフォーマンスダンパーを選択したレクサスの判断に拍手を送りたいほどだ。

 『RZ450e』はきっと、筆者だけでなく多くのクルマ好きにシンデレラフィットするはずである。ラグジュアリーなだけでなく思い通りに動く、魅力たっぷりのフル電動SUVだ。

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