トレーラーの牽引に適したEVトップ10
電気自動車(EV)が完璧に適しているアクティビティがあるとすれば、それは「牽引」だ。瞬時にきめ細かく制御されたトルクを発揮する強力なモーターを搭載したバッテリー駆動EVは、重い荷物を運ぶために作られたようなものだ。
【画像】辛口AUTOCAR英国編集部が「お気に入り」の大型EV【キアEV9の走りと内外装をチェック】 全24枚
しかし、紙の上では明確なことも、実際には曖昧でわかりづらいことが多い。EVは理論的にはヘビー級のキャンピングトレーラーでも引っ張ることができるが、多くのメーカーはそれを推奨していない。
その大きな理由の1つが、航続距離だ。牽引には膨大なエネルギーが必要で、多くの場合、実走行での航続距離を半分以下にまで縮めてしまう。それから、重量の問題もある。EVの駆動用バッテリーや乗員、トレーラーなどをすべて足した総重量は大変なものになる。
しかし、時代は変わり、技術も向上した。多くのEVがトウバー(牽引フック)を装着できるように設計され、通常は大排気量エンジン車でしか牽引できないような荷物も引っ張れるようになった。優れたガソリンエンジン車やディーゼルエンジン車(最高3500kgまで牽引可能)に匹敵するまでにはまだ少し時間がかかるが、牽引したい人、EVに乗り換えたい人には多くの選択肢がある。
(翻訳者注:各車両のスペックや価格は英国仕様に準じます)
1. キアEV9
長所:牽引時でもスムーズな走り。6~7人乗り。スペースの有効活用。
短所:路上で巨大に感じる。車庫入れがしにくい。インテリアの素材感が価格に見合わない。
最大牽引重量:2500kg
WLTP航続距離:503km~561km
英国編集部が気に入ったクルマは、たまたまEVだった。また、物を引っ張る能力も優れている。
最大牽引重量はEVとしては非常に大きい。しかし、EV9の魅力は、牽引時の走行性能だ。AUTOCARの姉妹誌『What Car』誌が毎年行っている牽引テストでは、時速30-60マイル(48-97km/h)加速で5.5秒という驚異的なタイムで審査員を驚かせた。審査員はまた速道路での安定性にも感銘を受けた。
EV9は、その牽引能力だけでなく、室内空間の広さからファミリーカーとしても優れている。6人乗りと7人乗りの仕様があり、どちらを選んでも後部座席には大人が余裕をもって座れる。
2. BMW iX
長所:卓越した洗練性。広さと多用途性。豪華なインテリア。
短所:賛否両論あるエクステリアデザイン。回生ブレーキは改善の余地あり。キャンプ場によっては派手すぎる?
最大牽引重量:2500kg
WLTP航続距離:413~614km
BMWがEVのフラッグシップモデルで成功を収めたことは否定できない。挑戦的なスタイルのiXは、特に上位の「xドライブ50」で競合の多くを打ち負かすような高い総合力を誇っている。
最高出力523ps、最大トルク78kg-mと十分すぎるパワーを備えているだけでなく、80.7kWのバッテリーを搭載し、一回の充電で610km以上走行できるとされている。
ここで注目したいのは2500kgという最大牽引重量で、これはヘビー級の内燃機関モデルに匹敵する。
さらに重要なのは、最高出力325psの「xドライブ40」でも同じ牽引能力が得られることだ。また、どちらもツインモーターの四輪駆動システムを採用しており、滑りやすいフィールドからトレーラーを引っ張り出す際にも優れたトラクションを発揮する。
3. テスラ・モデルX
長所:スーパーチャージャー・ネットワーク。スポーツカー並みの加速。充電時間が短い。
短所:左ハンドルのみ。不安定な乗り心地。平均以下の製造品質。
最大牽引重量:2268kg
WLTP航続距離:542~594km
テスラ・モデルXは最大2268kgの牽引が可能で、多くの大型ディーゼルSUVに匹敵する。
大型の二軸トレーラーの連結も容易だ。ただし、ロングレンジ仕様の594kmの航続距離が大幅に減少する可能性がある。
とはいえ、100kg-mを超える瞬間トルクを持ち、重い荷物を運んでも性能に大きな影響が及ぶことはないだろう。さらに、モデルXにはエアサスペンションが標準装備されているため、必要に応じて車高を上げたり下げたりすることで、トレーラーを連結しやすくなり、走行中も安定を保つことができる。
最大7人乗りでトランクも大きく、牽引車としての実用性をさらに高めている。ガルウィングドアはキャンプ場で注目を集めるだろうが、作りの雑さや無気力なドライビング・ダイナミクスなど、妥協点がないわけではない。新車の場合、現時点では左ハンドルしか用意されない点にも注意したい。
4. テスラ・モデルY
長所:スーパーチャージャー・ネットワーク。室内の広さ。航続距離。
短所:乗り心地と静粛性。ボタンが少ない。製造品質。
最大牽引重量:1588kg
WLTP航続距離:455~532km
テスラ・モデルYは、上記のモデルXよりも小型で、道幅の狭い都市部に適したバージョンである。そして、右ハンドルがある。
ファルコンドアではなく従来型のドアを採用し、ぶっ飛んだ「プラッド」仕様も存在しない。優れた航続距離と牽引能力を備えた、はるかに実用的な中型SUVとなっている。
オプションの牽引パッケージを購入すると、ご想像通りトウバーが装備されるが、牽引モードという専用ソフトウェアも付いてくる。このモードなしでも牽引は一応可能だが、テスラは使用を強く推奨している。自動緊急ブレーキの制動力を下げ、ステアリング自動介入を無効にし、クルーズ・コントロール使用時の前方車両との車間距離を伸ばすことで、走行を助けてくれる。
What Car誌のテストでは、モデルYは牽引時に航続距離が約57%短くなることが明らかになった。これは競合車と比べると優秀な方だ。
5. キアEV6
長所:良好な航続距離。バランスのとれたシャシー。牽引時の安定感。
短所:インテリアの質感は競合車に劣る。ステアリング・フィールがいまいち。不器用なクライメートコントロール。
最大牽引重量:1800kg
WLTP航続距離:440~528km
兄弟車のヒョンデ・アイオニック5よりも価格は高いが、キアEV6はベースグレードでもパワフルで、最大牽引重量が200kg多い。
クーペ風のボディに77.4kWhの大型バッテリーを搭載し、モーター出力は後輪駆動のベース車の228psから最上位グレード「GT」の585psまで幅広い。
ここで紹介するすべてのEVと同様、大きな荷物を牽引するとバッテリーの消耗が極端に激しくなる。しかし、プラス面もある。800Vの充電システムにより、超急速充電器を利用すればわずか18分で10~80%の充電が可能だ。
E-GMPプラットフォームをベースとするEV6は、GTグレードで0-100km/h加速3.5秒を謳い、リミテッド・スリップ・ディファレンシャルを標準装備している。
6. BMW i4
長所:サイズの割に優れた牽引重量。BMWらしいハンドリング。優れた運動性能。
短所:実際の航続距離はそこそこ。派生モデル「M50」は必ずしも最適解ではない。トランクが比較的小さい。
最大牽引重量:1600kg
WLTP航続距離:415~590km
意外なことに、BMWは電動SUVの iX3の牽引重量を750kgと低く設定しているが、セダン(ハッチバック)のi4は1600kgを牽引できる。
この数値は、「eドライブ40」と最高出力543psの「M50 xドライブ」の両方で同じである。低出力のeドライブ40でさえ、停車時から43.8kg-mという逞しいトルクを発揮することを考えれば、驚くには当たらない。
実用的なハッチバック開口部を備えた470Lのトランクは、キャンプやトレーラー用の小物類を簡単に収納できる。大きな荷物を運んでいないときは、BMWらしいパフォーマンスと優れた洗練性、そしてキビキビとした魅力的なハンドリングを楽しめる。
i4は、牽引能力という点では最高とは言えないかもしれないが、What Car?誌によれば、キャンピングトレーラー牽引時の航続距離のロスは約56%に抑えられ、同誌がテストしたEVの中ではトップクラスに優れている。
7. メルセデス・ベンツEQS SUV
長所:航続距離が長い。長距離でも非常にリラックスできる。広い。
短所:低速域での乗り心地がかなり悪い。多用途性は低い。高級車にしては豪華さが足りない。
最大牽引重量:1800kg
WLTP航続距離:584~585km
その名が示すように、このモデルは基本的にEQSセダンの車高を上げたSUVバージョンである。
バッテリー車専用に設計された先進のEVA2プラットフォームをベースにしている。シングルモーターの後輪駆動仕様と、ツインモーターの4マチック四輪駆動仕様があり、後者は泥だらけの野原からキャンピングトレーラーや馬車を引っ張り出すときに便利だ。
エントリーグレードの「450」は最高出力360ps、最大トルク58kg-mだが、ツインモーター仕様は81.5kg-mに向上している。
最上級グレードは543psの「580」で、0-100km/h加速4.6秒を達成する。全車に108kWhのバッテリーが搭載され、航続距離は最大585kmと謳われている。また、標準装備のエアサスペンションにより、重い荷物を運んでいるときもボディが水平に保たれる。
8. アウディQ8 eトロン
長所:上質なキャビン。充実した車載システム。広い室内空間。
短所:実走行での航続距離が短い。バーチャル・ドアミラーは面倒。ハンドリングはクラストップレベルではない。
最大牽引重量:1800kg
WLTP航続距離:455~535km
アウディはQ8 eトロンの牽引能力にかなり自信を持っている。2020年、最高出力407psの「55クワトロ」を使って、ゼネラルモーターズのEV1(鉛蓄電池を搭載した1990年代のクーペ)を積んだ1800kgのトレーラーを、米国オクラホマ州タルサからテキサス州オースティンまで800kmを牽引して見せたのだ。
ただ、この旅では平均速度100km/hを記録したと言われているものの、停車して充電する時間は含まれていない。なぜなら、他車と同様、牽引時には航続距離が短くなるからだ。
実際、約400kmの航続距離は半分以下に低下し、160km強にとどまった。
長距離を走らないのであれば、Q8 eトロンはどのモデル(503psの「S」、スタイリッシュなスポーツバック、エントリーグレードの「50」)でも同じ1800kgの最大牽引重量を持ち、エアサスペンションがボディを水平に保ってくれる。
また、キャンプで溢れる荷物を収容できる660Lのトランクも備えている。
9. メルセデス・ベンツEQA
長所:充実した装備。高速走行時の静粛性が高い。回生ブレーキが扱いやすい。
短所:競合車より価格が高い。乗り心地が柔らかすぎる。期待はずれの航続距離。
最大牽引重量:1800kg
WLTP航続距離:418~557km
メルセデス・ベンツのEVのエントリーモデルであるEQAは、上位モデルであるEQCに匹敵する牽引能力を備えている。
シングルモーター仕様の「EQA 250」では750kgの牽引が可能だが、ツインモーター四輪駆動の「EQA 300 4マチック」または「EQA 350 4マチック」にアップグレードすると、最大牽引重量は1800kgまで向上する。
これは大型キャンパーや、サーキット専用車の運搬にも十分な容量だ。
電動トウバー(トランク内のボタンに触れるとリアバンパーの後ろから下りてくる)がオプションで用意され、エレクトロニック・スタビリティ・プログラム用のトレーラー・アシスト機能も標準装備されている。
このシステムでは、ブレーキを緻密に制御してトレーラーの危険な揺れを軽減する。また、極端な状況下ではモータートルクを減らし、制動力を高める。
10. アウディQ6 eトロン
長所:賢いインフォテイメント。優れた乗り心地。安定したダイナミクス。
短所:競合車に比べて高価。牽引時の航続距離が未検証。
最大牽引重量:2400kg
WLTP航続距離:最長615km
アウディQ6 eトロンは、アウディ/ポルシェの共同開発による洗練された新プラットフォーム「PPE」を初めて採用したモデルだ。PPEの「P」は「プレミアム」、つまり高級EVのために特別に設計されたもの。スコダのような安価なブランドとは共有されず、ダイナミズムと運動性能を重視している。
その高い操縦性から、高級な牽引車としても優れていると言える。最大牽引重量が大きく、重いものを引っ張りたい人には便利だが、トウバーはやや高価な有償オプションだ。
まだ発表されたばかりなので、本稿執筆時点では牽引時の航続距離をテストできていない。しかしアウディは、バッテリーをあまり消耗させることなく、キャンピングトレーラーを牽引して長距離を走る能力に自信を持っているようだ。
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みんなのコメント
そもそもトレーラーを牽引するような人々は、EV単体の短い航続距離で敬遠するでしょう。