ゴルフやポロの影が薄くなっていた?
最近、フォルクスワーゲンが『らしさ』を取り戻しつつあるという会話になることが多い。
【画像】通称8.5代目!新型フォルクスワーゲン・ゴルフ 全75枚
個人的にはここ数年あまり取材する機会がなかったので、あくまで少し外から見ていたイメージとなるが、電動化モデルのIDばかりがクローズアップされていて、フォルクスワーゲンの基幹モデルである、ゴルフやポロの影が薄くなっていたように思う。
そこで、日本自動車輸入組合(JAIA)の『モデル別新車登録台数順位』、そのベスト10から過去5年間のフォルクスワーゲンだけを拾ってみたところ、こんな結果となった。
2024年
3位:ゴルフ6394台
2023年
2位:ゴルフ1万723台/4位:Tロック6596台/5位:Tクロス6179台
2022年
3位:ゴルフ9241台/5位:Tクロス6570台/6位:ポロ6368台/8位:Tロック5123台
2021年
2位:Tクロス9159台/5位:ゴルフ7631台/6位:Tロック7241台/7位:ポロ7075台
2020年
3位:ゴルフ1万264台/4位:Tクロス8930台/7位:ポロ6806台
ご覧のようにTクロス/Tロックが基幹モデルと言えるほどの成長を見せ、ゴルフ、ポロと共に3本柱を掲載していることがわかる。ちなみにゴルフは本データが掲載されている2003年以降、2015年まで首位を走っており、2014年には年間3万1410台も販売していた。
当時に比べると絶対的な台数こそ減っているが、為替や輸送費高騰などがあり、現在は輸入車にはかなり不利な状況。しかもSUV人気や趣味の多様化で、分散していることも考えられる。というわけで外から見ていたのはあくまでイメージで、実際のゴルフは堅調に販売を重ねていたというわけだ。
光るフロントエンブレムが8.5代目の識別点
そんなゴルフの最新モデルを取材する機会があった。8代目のマイナーチェンジ版で、『8.5代目』などと通称されるものだ。
ボディパネル自体は変わっておらず、前後ライトやバンパーのデザインが変更となっているが、それよりもフロントエンブレムがイルミネーション、つまり光るタイプになっており、識別点としてはかなりわかりやすい。
室内では、10.25インチのデジタルクラスター(メーター類)と12.9インチの大型モニターが特徴だ。後者は大きすぎる? という声もあるが、これはフォルクスワーゲンに限らず過渡期にあるように思う。もう数年すれば、物理スイッチとのバランスも落ち着くだろう。
GTIを除くエンジンのラインナップは、1.5Lマイルドハイブリッド(116ps/220Nmまたは150ps/250Nm)と2Lディーゼル(150ps/360Nm)の3本立て。今回は後者の『TDIアクティブ・アドバンス』と、前者150psの『eTSI Rライン』に試乗することができた。
実はあまり取材する機会がないと書きつつ、8代目のTDIには高速を中心に長距離で乗ったことがあり、「これはディーゼルのGTIだ!」と感動したことがある。スポーツモードにした時の硬質感と速さがひと昔のGTIを思わせるもので、燃費ももちろんいいので、これは日常のアシとして最強だ! と感じたのである。
今回は街乗り中心であったが、もはやディーゼルとは思えぬ静粛性があり、静かによく走る印象。トルクがしっかりあり、アクセルに対する反応もいいのでキビキビと走ることができる。曲がり方もキレイだった。
写真からも伝わる地味さがいい
そして何よりもいいと思ったのが、写真からも伝わるこの地味さだ(褒め言葉です)。オイスターシルバーメタリックと呼ばれるボディカラー、控えめな17インチのホイールデザイン、派手さを感じさせない内装。まさに『道具フォルクスワーゲン』デザインの真骨頂だと思う。
しかし運転していて昔ほどシンプルすぎる感じを受けないのは、12.9インチモニターの恩恵だろう。また、ゴルフも年々サイズが大きくなって……と感じていたが、他のモデルも軒並み大きくなっているので、全長4295mm、全幅1790mm、全高1475mmのゴルフは、むしろ街中でちょうどいいサイズに思えてきた。
続いて乗ったeTSIのRライン。Rとは言うものの足まわりはガチガチでなく、たまに「もしかしてちょっと硬い?」と思う程度。18インチのタイヤというよりも、ヘッドレスト一体型のシートがそう思わせるのかもしれない。地味な(繰り返しますが褒め言葉です)アクティブ・アドバンスと比べると、正直Rのデザインはかなりカッコよく洗練されており、極端に書けば、実用車とプレミアムカーぐらいの違いがある。
走り出してみると、TDIとはアクセルに対する反応が違っていて、すぐに力強く加速するディーゼル(TDI)に対し、マイルドハイブリッド(eTSI)はジワっと加速し始める感じがした。あくまで比較の話なので、毎日乗っていれば気にならないかもしれないが、購入を検討されている方は、試乗で確かめることをお勧めしたい。
フォルクスワーゲンらしさとは何か、とは難しい問いだが、個人的には『道具フォルクスワーゲン』という言葉に尽きると思っている。機械、道具としていかに優れているか。今回の2台で言えば、特にTDIは道具として最高の選択肢になり得ると感じた。道具という意味では、ワゴンならなおよしであろう。
フォルクスワーゲン・ゴルフのスペック
フォルクスワーゲン・ゴルフTDIアクティブ・アドバンス
全長×全幅×全高:4295×1790×1475mm
ホイールベース:2620mm
車両重量:1430kg
エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
排気量:1968cc
最高出力:110kW(150ps)/3000-4200rpm
最大トルク:360Nm(36.7kg-m)/1600-2750rpm
燃料タンク容量:51L
ギアボックス:7速AT(DSG)
タイヤ:F&R255/45R17
燃料消費率(WLTCモード):20.8km/L
価格:450万8000円
フォルクスワーゲン・ゴルフeTSI Rライン
全長×全幅×全高:4295×1790×1475mm
ホイールベース:2620mm
車両重量:1350kg
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
排気量:1497cc
最高出力:110kW(150ps)/5000-6000rpm
最大トルク:250Nm(25.5kg-m)/1500-3500rpm
燃料タンク容量:51L
ギアボックス:7速AT(DSG)
タイヤ:F&R255/40R18
燃料消費率(WLTCモード):18.7km/L
価格:455万3000円
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