大谷翔平選手の投打にわたる活躍で一気に浸透した“二刀流”という言葉。しかし、MLB広しといえども、二刀流で活躍しているのは大谷選手のみ。
いっぽう、自動車の世界ではどうだろうか? “走ってヨシ”だけにはとどまらない二刀流のクルマは数えたらキリがないほど存在する。どうせ乗るなら走りだけではなく、他にも「これは!」という際立った能力を兼ね備えたクルマがいいと思うのは誰でも同じ。だったら、二刀流のクルマを探してみませんか?
「二刀流」なんてもんじゃない!! 走ってヨシ! 積んでヨシ! 後悔なしの超優秀車4選
文/FK、写真/トヨタ、スバル、フォルクスワーゲン グループ ジャパン、マツダ
VWのゴルフR ヴァリアントは走りの良さが際立つ“R指定”のステーションワゴン
スマートな走りも刺激的な走りも思うがままという使い勝手の良さがうれしいゴルフR ヴァリアント。フロントグリルの“R”ロゴがタダ者ではない雰囲気を醸し出す
SUVやミニバンの勢いに太刀打ちできず、今や風前の灯火といった状況にあるステーションワゴン。
しかし、ハッチバックのゴルフ Rとともに2022年10月にデビューしたステーションワゴンのゴルフ R ヴァリアントは、市街地における紳士的な振る舞いとは裏腹にワインディンロードではスポーツカー然としたホット走りを披露してくれる二刀流の代表格だ。
その心臓部にはRの名にふさわしい最高出力320PS&最大トルク42.8kgmを発生するゴルフ史上最強の2.0リッター直列4気筒DOHC 4バルブインタークーラー付きターボエンジンを搭載するが、その走行性能を高めているのはエンジンだけではない。
プロのレーシングドライバーなみのクイックな変速を可能にした7速DSGトランスミッションをはじめ、走行状況に応じて前後輪のトルク配分を制御しつつ左右後輪のトルク配分も最適制御することで旋回性能を高めるRパフォーマンストルクベクタリング、先代モデルからのインチアップで高い制動力を実現した18インチブレーキシステムなど、走る・曲がる・止まるを徹底追求するR専用の装備が満載されているのだ。
また、エクステリアはR専用デザインのバンパーを採用するとともにサイドシルも専用のボディカラー同色となっており、リアに採用されたグロスブラックのディフューザーと4本出しのエクゾーストパイプもスポーティな雰囲気をいっそう高めている。
とはいいながら実用性にも長けており、4650mmの全長に対してホイールベースが2670mmと長めに設定されていることから室内空間は大人4人が乗っても広々としており、ラゲージスペースも最大1642リッターと必要にして十分な積載能力を備えている。
走りが良くて室内も快適で、しかも荷物もたっぷり積めるなんて、これってもはや三刀流!?
日本のステーションワゴンにはスバルのレヴォーグがあるじゃないか!
新たなデザインコンセプトである“BOLDER”をスバル量産車で初めて採用したことで個性をより大胆に際立たせ、意のままにコントロールする楽しさや先進性を表現
二刀流のステーションワゴンは何も輸入車に限った話ではなく、日本にも走りと実用性を兼備したモデルは存在する。それは、2020年10月に発表された2代目のレヴォーグだ。
レヴォーグは“より遠くまで、より早く、より快適に、より安全に”というスバルのDNAを継承したうえで最新技術を結集し、先進安全・スポーティ・ワゴン価値の3つのテーマを進化させたパフォーマンスワゴン。
先進安全の面では、360度センシングを実現して安全性を進化させた新世代アイサイトを全車に標準装備。
走りも新開発となる1.8リッター直噴ターボのDITエンジンやスバルグローバルプラットフォームとフルインナーフレーム構造の採用によって質感を向上させている。
また、スバルのデザインフィロソフィーであるDynamic×Solidを深化させた新デザインコンセプトのBOLDERをスバルの量産車で初採用。走りと見た目の両面においてスポーティさが大胆に表現されている。
快適性や積載性を実現するワゴン機能やインテリアに磨きがかけられたことも2代目のトピックで、大型センターインフォメーションディスプレイやアイサイトX搭載グレードに採用のフル液晶メーターで構成された先進的なデジタルコックピットは運転に必要な情報の認知から操作をよりスマートにサポート。
もちろん、ステーションワゴンならではの荷室の広さも大きな特徴で561リッター(カーゴフロアボード上部:492リッター、サブトランク:69リッター)という大容量を確保するとともに、広い開口部も実現している。
2023年1月にはSTIのパフォーマンスパーツをはじめとする特別装備を採用し専用チューニングすることで操安性の向上と上質な乗り味を実現した、500台限定の特別仕様車であるSTI Sport♯を発表。
残念ながら即日完売となってしまったが、スポーツカーをも凌駕するその走りは二刀流以外の何ものでもない。
マツダのCX-60は男心をくすぐる国産乗用車唯一のストレート6の走りが最高!
生命体が地面に踏ん張り、後ろ足で前に向かって跳躍するような生命感を表現した魂動デザインの真髄を体現したCX-60
新世代ラージ商品群第1弾として2022年9月に登場した2列シートミッドサイズのCX-60も二刀流にふさわしい一台ではないだろうか?
大容量バッテリーの床下配置をはじめ、重量物を徹底的に重心に近づけるレイアウトを採用して軽快な運動性能を実現したCX-60。なかでも注目は、先行発売となった直列6気筒ディーゼルエンジンを採用したハイブリッドモデルだ。
予約受注期間に申し込みがあったユーザーの4割以上が選択した直6ディーゼルエンジンと電動化技術M HYBRID BOOSTを組み合わせた“e-SKYACTIV D”は、アクセルを踏み込んだ瞬間から感じられる人馬一体の走りと燃費性能向上を両立。
また、このシステムのパフォーマンスを存分に発揮させるべく、ダイレクト感と伝達効率に優れる新開発のトルコンレス8速ATを組み合わせることで、ドライバーの気持ちの変化にも小気味良く反応する走りを披露してくれる。
そんな走りの良さもさることながら、CX-60では上質な乗り心地も徹底追求されており、クッションバネやバックサスペンションが進化したシートは骨盤をしっかりと支えることで脊椎の可動域を確保。
コーナーで発生する横Gに対してバランスをとろうとする人の反射的な動きを容易とする構造も取り入れられており、身体とのフィット性も抜群だ。
加えて、CX-60ならではのユニークな機能として特筆すべき点は自動ドライビングポジションガイドの採用。
ドライバーの目の位置を検出するカメラとドライバーの身長入力よりドライバーの体格を推定し、マツダが考える最適なドライビングポジションを提供してくれるのだ。
それでいて、車両本体価格は299万2000円(2WDの2.5リッターガソリンエンジン車)からとリーズナブルなのだから注目を集めるのも無理はない。
何でなくなるの? スポーツセダンの雄=トヨタ・カムリの新車を買うなら今でしょ!
2022年8月の一部改良では外板色にエモーショナルレッドIII(写真はWS“レザーパッケージ”)を新設定したカムリだったが……残念ながら2023年12月下旬に生産が終了に
2023年12月下旬の生産終了が決定したトヨタのカムリ。
1980年1月にセリカの4ドアセダンとして発売を開始して以降、世界各国で販売され人気を博し、2022年もグローバル販売台数は約60万台を達成している。
しかしながら、2022年の国内販売実績は6000台弱と低調なセールスに終始したことも生産終了に起因しているのではないだろうか。
そんなカムリの現行モデルは、TNGAに基づくエンジンとプラットフォームの一新を受けて、2017年7月にデビュー。その最たる特長となるのが卓越したハンドリング性能がもたらす意のままの走り、クラストップレベルの燃費性能、上質な乗り味といったところだが、それ以上に見逃せないのは磨き抜かれた美しいスタイリングにある。
TNGAに基づいてデザインされたエクステリアはエンジンと乗員レイアウトを下げて低重心シルエットを実現。フロント周りも、スリムなアッパーグリルと立体的なロワグリルを対比させて低重心かつワイドなスタンスをいっそう際立たせている。
メリハリのある面使いとシャープなボディラインで構成されたサイドビューやショルダーを張り出させて安定感を演出したリアビューもアッパーミドルセダンたる存在感をアピールしている。
2018年8月にはショックアブソーバーのロッドガイドブッシュ、ピストンバンド、オイルを専用開発したスポーティグレードのWSを追加。ただでさえ乗り心地に優れるカムリのサスペンションにライントレース性向上という要素が加わったことで応答性の高い操舵フィーリングとフラットな走りを実現した。
しかし、次期モデルが登場する予定もないカムリなだけに、新車を買うなら今しかない、ということも最後に付け加えておきたい。
ここでは、走りが良いことに加えて“多くの荷物が載せられる”、“室内空間が広い”、“乗り心地が良い”というクルマをピックアップしたが、その他にも二刀流となる要素は多分に存在する。
パフォーマンスアップが著しい昨今のクルマにおいて走りが良いのはもはや当たり前になりつつあるので、自分なりに二刀流のもうひとつの要素となるストロングポイントを見つけてみてはいかがだろうか?
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