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アストンマーティン ヴァルハラを読み解く。次世代型ハイパーカーの実情に迫る

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アストンマーティン ヴァルハラを読み解く。次世代型ハイパーカーの実情に迫る

ASTON MARTIN VALHALLA

アストンマーティン ヴァルハラ

アストンマーティン ヴァルハラを読み解く。次世代型ハイパーカーの実情に迫る

最速のハイパーカー候補、ヴァルハラ

アストンマーティンから、新たなミッドシップ・ハイパーカーが誕生することが明らかになった。ノルウェー神話に登場する宮殿、VALHALLA(ヴァルハラ)の名を掲げるそれは、これまでAM-RB003のコードネームで呼ばれてきたモデルで、2019年のジュネーブ・ショーでワールドプレミアが行われている。

AM-RBという開発コードからも明らかなように、このモデルはAM-RB001(ヴァルキリー)、AM-RB002(ヴァルキリーAMR-Pro)の血統を受け継ぐモデルと考えられる。その血統とはすなわち、AMが意味するところであるアストンマーティンと、RBが意味するレッドブル・アドバンスド・テクノロジーズとのコラボレーションによって開発が進められていることを物語っている。

もちろん後者には、F1GPで天才的デザイナーとも称されるエイドリアン・ニューウェイ氏も関係しており、その空力デザインはヴァルキリーと同様に、このヴァルハラにおいても大きな技術的なトピックスとなることは間違いないだろう。

F1由来のV6ターボに電気モーターをセットアップ

アストンマーティンはこのヴァルハラに、最先端のF1マシンで採用されたテクノロジーを惜しみなく採用したと語る。同時にそれはヴァルキリーからの影響も強く受けたモデルではあるが、ヴァルハラとヴァルキリーはお互いにまったく別々のコンセプトによるモデルであるという。

それを最も直接的に象徴していのは、ミッドに搭載されるパワーユニットの選択で、ヴァルキリーがコスワースとの共同開発による6.5リッターのV型12気筒エンジンをベースに、インテグラルパワートレインのエレクトリックモーター、リマックの軽量バッテリーシステムを組み合わせ、パワーユニット全体で1160psの最高出力を可能にしているのに対し、ヴァルハラは正式なスペックは現在の段階では発表されていないものの、同レベルの最高出力を誇るV型6気筒ターボエンジンとエレクトリックモーターを組み合わせたパワーユニットを搭載することが明らかにされている。

最高出力は1000ps、回生システムも搭載か

アストンマーティンの主張するF1マシンとの共通性を考えるのならば、排気量は1.6リッター。運動エネルギーや熱エネルギーの回生システムも採用されるということになるのだろうか。いずれにしてもどこまで現在のF1マシンが搭載するエンジンをヴァルハラで再現するのかは興味深い。

ちなみにアストンマーティンから発表されているヴァルハラのシステム出力は1000ps。組み合わされる8速トランスミッションにも、F1マシン由来の技術が導入されているという。またこのエンジンには、カストロールが開発し、すでにヴァルカンで採用例があるカートリッジ式のシーリングオイルシステム、Nexcelが採用されており、わずか90秒でのオイル交換が可能とされる。

航空機に採用される空力テクノロジーを搭載

エクステリアデザインは、ヴァルキリーのそれと比較すると、いくぶん控えめなデザインになったようにも思える。とはいえ、ストリートにいきなりこのヴァルハラが登場すれば、衆目はこのハイパーカーに集中することは間違いないだろう。F1マシンと同様に複数のエレメントで構成されるフロントスポイラーや、ボディサイドの大胆な造形。リヤフェンダーはタイヤを完全には被っておらず、リヤビューからはタイヤのトレッド面を直接見ることができる。大型のリヤディフューザーやテールランプのデザインも大胆かつ先進的だ。

ヴァルハラのボディで最も注目しなければならないのは、FlexFoilと呼ばれる新技術が採用されたリヤウイングだ。そもそも新世代航空機に採用するために、NASAとMIT(マサチューセッツ工科大学)との共同で研究が進められてきたこの技術は新型の可変翼ともいえるもので、今回発表されたプロトタイプには装着されていなかったが、何百もの同じ部品を組み合わせてひとつの翼を成型し、走行中にその形状を変化させることで理想的な空力特性に微調整するものだ。

はたしてヴァルハラに採用されるリヤウイングは、どのようなフィニッシュ、そして機能を実現することになるのだろうか。ちなみにマクラーレンは先日発表されたスピードテールにおいて、テールエンドに航空機のエルロンに相当する機能を追加している。より高レベルな空力の追求という意味では、すでにハイパーカーの世界において自動車と航空機の間で技術的な交流は確実に始まっている。

LMP1スタイルのドアにより乗降性は良好

ボディ素材は、ヴァルハラももちろん軽量なカーボンだ。左右のドアは乗降性を高めるためにルーフの一部とともに上方に向かって開き、開閉のいずれにおいても大きな力を必要とはしない。キャビンに乗り込む時にまず驚かされたのは、センターモノコックのサイドシルが低くデザインされていたこと。いわゆるサイドシルを乗り越えるという作業は、このヴァルハラではほとんど気にならない。

快適な運転環境を築く“APEXエルゴノミクス”

コクピットに収まると、キャビンはヴァルキリーのそれよりもはるかに広く快適な空間であることに気づく。アストンマーティンがAPEXエルゴノミクスと呼ぶ、ドライバーの背中の中心、ステアリングホイール、そしてペダルを一直線上に配置し、ほかのスイッチ類へのアクセス、すなわち操作性も十分に考慮したコクピットは、実際にはかなり扱いやすく感じるだろう。

ドライバー自身のスマートフォンをインフォテインメントシステムに使用するBring-Your-Own-Technologyのコンセプトも最新モデルらしく面白い。またエクステリアからは左右のサイドミラーを確認することはできないが、それはドアの内側にあるコンパクトなカメラからの画像をモニターに映し出す仕組み。後方も同様にモニター画像をバックミラーに映し出す。

想像以上に快適性を考慮したインテリア

楕円形のステアリングホイールにはシフトスイッチやパドル、ドライビングモード、オートクルーズのスイッチなどが整然とレイアウトされている。その後方にあるメーターパネルも視認性は素晴らしく、ドライバーは視線を大きく動かすことなくドライブに必要なインフォメーションを得ることが可能だ。

細いセンターコンソールで仕切られたパッセンジャーシートも、ドライバーズシートと同様に着席するとまず感じるのはバックレストの薄さだが、その絶妙なホールド感は走りの楽しさを大いに高めてくれるに違いない。

予想価格は1億5000万円。デリバリーは2021年から

ヴァルハラの生産は500台の限定で行われ、デリバリーは2021年の後半から開始されるという。1951年に当時のDB2のハイパフォーマンスモデルに与えられたVantage、その頭文字たる“V”の称号を現代に継承し、そしてまたその頂点を極めるAM-RBシリーズの最新作としてデビューを果たしたヴァルハラ。500台のみ生産されるヴァルハラには1億5000万円ほどの価格が設定されると噂されるが、その血統の確かさ、そして最新世代のハイパーカーとしての話題性、さらには希少性を考えれば、それは十分に魅力的な設定といえるのではないか。

もちろん世界中の市場で、それを求めるカスタマーの声は日に日に高まりを見せることは確かなところ。ちなみにアストンマーティンでは、デリバリー先によって右/左の両ハンドル仕様を生産する計画だという。もちろんカスタマーは、ボディカラーなどの仕様を自分自身の好みで決定することができる。そのためのミーティングもまた、アストンマーティンの最新ハイパーカーを買うための大きな楽しみのひとつといえるのかもしれない。

TEXT/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)

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