快晴に恵まれたモビリティリゾートもてぎでの2024年スーパーGT第8戦『MOTEGI GT 300km RACE』の決勝は、スタートスティント担当の坪井翔が序盤で首位奪取に成功し、後半担当の山下健太も盤石のドライブを披露。後続に20秒近い大差を築いた王者36号車au TOM’S GR Supraが、まさに完璧なレース運びでトップチェッカーを受け、最終戦となる12月の第5戦鈴鹿ラウンドを前にタイトル連覇を大きく手繰り寄せる今季2勝目を飾っている。
台風接近により開催が延期されることとなった第5戦鈴鹿に始まり、第6戦SUGOは予選がキャンセル、第7戦オートポリスも土曜の天候不良によるワンデー開催に追い込まれるなど、今季のシリーズは天候に翻弄され続けてきた。
この第8戦もてぎのレースウイークも例外ではなく、11月1日(土)の予選日は走行が危ぶまれるような雨量と霧が発生することに。しかし、幾度かの赤旗やディレイも経ながら、午前の公式練習と午後の予選を実施した両クラスは、ヘビーウエット条件のなかホンダ/HRC陣営が最前列をロックアウト。64号車Modulo CIVIC TYPE R-GTがポールポジションを奪い、隣に並ぶ8号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GTとともにホームコースでの必勝態勢を整える。
しかし、その背後ではランキング首位を行く王者36号車au TOM’S GR Supra(サクセスウエイト=SW:53kg)が、燃料リストリクター1ランクダウンの措置が残るなか圧巻の予選を戦い抜き、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)陣営内の38号車KeePer CERUMO GR Supraを従え2列目3番手を得るなど、ドライ勝負が想定される決勝に向け好位置につけた。
■2度のフルコースイエローで上位陣の順位が動く
ここもてぎは、そのコース特性からカレンダー随一の“燃費に厳しい”トラックであり、ストップ・アンド・ゴーのレイアウトでブレーキにも大きな負担を強いる。搭載量半減ながらひさびさにサクセスウエイト(SW)を搭載した各車が、ぶっつけ本番の決勝でどんなレースペースを維持し、どんな戦略を採るのかが見どころとなった。
航空自衛隊F-2戦闘機のウエルカムフライトに続き、定刻11時30分のウォームアップ走行時にも上空からジェットエンジンの轟音でエールを送られたGT500の各車は、ここで週末初めて持ち込みスリックタイヤのコンパウンドを見定める忙しい20分間を過ごすと、大きなトラブルなく13時ちょうどのパレード&フォーメーションラップを迎える。
そのウォームアップ時点で気温21度、路面温度29度だったコース上は、双方ともにコンディションを維持してスタートが切られると、先頭集団はクリーンな立ち上がりを見せる。しかし中団では39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraの関口雄飛が前方の16号車ARTA大津弘樹をパスした一方、5番手発進だった14号車ENEOS X PRIME GR Supraの大嶋和也はタイヤのウォームアップ性能が異なるか、このオープニングラップで8番手まで下がることに。
早くもGT300のラップダウンを迎え始めた7周目には、ピットレーン出口付近でコースサイドに停止車両が発生し、ここでFCY(フルコースイエロー)が発動。続く8周目のリスタートでは首位攻防に動きがあり、2番手ARTAの松下が5コーナー進入での解除に乗じてアウト側から仕掛け、立ち上がりでわずかに接触しながら64号車Moduloの前に出る。
このラップでランキング2位の37号車Deloitte TOM’S GR Supraも、16号車ARTAをかわして6番手へ。しかし9周目にはふたたびGT300車両がトラブルからコースオフを喫し、即座に2回目のFCYとなる。
するとまたも解除直後にポジション変動が起き、ダウンヒルで80km/h定速からの復帰が遅れた8号車ARTAが、背後の64号車Modulo、36号車auと立て続けに90度で先行され3番手に後退。勢いそのままの坪井翔は、続く11周目の5コーナーで64号車Modulo伊沢拓也も捉え、出力が抑制された車両ながらここでトップに立つ。
一方、ジリジリとポジションを上げていた37号車Deloitteの笹原右京は、エンジントラブル発生か最終セクターをスロー走行で戻り、そのままガレージインに。これでタイトル戦線に黄色信号が灯る状況となってしまう。
ここから64号車Moduloを先頭に2番手争いが激化すると、ペース回復の鈍った8号車ARTAに38号車KeePer CERUMOの石浦宏明が仕掛け、鮮やかに90度のインを刺した石浦が3番手を奪っていく。さらに18周目にはリプレイを演じるように64号車Modulo伊沢も捉え、これでピットウインドウを前にGR Supraのワン・ツー体制へと変わる。
■ファイナルラップまで続いた3番手争い
レース距離3分の1となる“ミニマム”の周回数を前に、大集団と化した3番手争いでは、8号車ARTA松下が意地を見せ21周目のV字コーナーで64号車Moduloを捉え、ここでようやく3番手へ。すると23周目突入時点で続々とルーティン作業のタイミングが訪れ、まずは38号車KeePer、8号車ARTAらが先行し、続くラップで64号車Moduloや14号車ENEOS、そして25周目突入で王者36号車auも作業を終え、これで全車がミニマムの戦略を採用。残る3分の2をチームメイトに託す展開となる。
問題なく作業を終えた首位36号車auの山下健太は、2番手の38号車KeePer CERUMOの大湯都史樹に対し、直後の26周目時点で12秒971のセーフティマージンを維持。一方で64号車Moduloの大草りきはピット作業での遅れもあったか、ここでトップ10圏外まで下がる厳しい状況へと追い込まれる。
ここから30周を過ぎてギャップを15秒まで拡大した首位の36号車auに対し、2番手の38号車KeePer CERUMO大湯、3番手の8号車ARTA野尻智紀はテール・トゥ・ノーズへ。さらに4番手には16号車ARTAの佐藤蓮、そして39号車DENSO中山雄一のトップ5で推移していく。
さらに3分の2の距離を消化した45周目、GT300クラス車両が1コーナーでコースオフを喫したのと刻を同じくして、FCY発動前のタイミングで14号車ENEOS X PRIME福住仁嶺が、タイトル候補である100号車STANLEYの山本尚貴を90度アウト側からオーバーテイク。これで6番手に浮上し、かつての先輩でもあるライバル車両から貴重なポイントを奪い取る。
残すは10周となる53周目。ここで2番手以下のポジション争いが大きく動き、ペースの落ちた38号車KeePer大湯に対し、背後の8号車ARTA野尻が1コーナーから照準を合わせると、続く3コーナー進入でインを奪って2番手を奪還。
すると背後では、6番手を走行していた14号車ENEOS X PRIME福住が突如スローとなり敢えなくポジションダウン。
これがトリガーとなったか、トップ10圏内を争う17号車Astemo CIVIC TYPE R-GTの塚越広大と、3号車Niterra MOTUL Zの三宅淳詞がS字への進入でサイド・バイ・サイドの勝負から交錯。巻き添えとなったGT300クラス車両も跳ね飛ばすアクシデントとなり、ダメージを追った17号車はスロー走行の14号車とともにピットレーンへとステアリングを向ける(レーシングアクシデント判定)。
終盤はブレーキングのたびにホイールから大量のカーボンダストを巻き上げながら粘った38号車大湯は、背後の16号車佐藤を抑え切ることに成功。最後の表彰台スポットを死守し、最終戦に向けタイトル候補としての望みを繋ぐことに。
そして2位の8号車ARTAに19秒519もの大量リードを築いてファイナルラップに突入したチャンピオンの36号車auが、まさに横綱相撲ともいうべきレースで完勝を飾り、2年連続チャンピオン獲得に向け“視界良好”の『ノーウエイト』鈴鹿へ臨むこととなった。
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