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【新型スズキ・スイフトスポーツ試乗 MTvsAT】BMW Mを思わせる望外に高いGT性能。ノーマルのまま乗るなら6速AT車を選べ!

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【新型スズキ・スイフトスポーツ試乗 MTvsAT】BMW Mを思わせる望外に高いGT性能。ノーマルのまま乗るなら6速AT車を選べ!

スズキが昨秋デビューさせた、グローバルでは3代目、日本国内では4代目となる新型「スイフトスポーツ」。その6速MT車と6速AT車、両方とも都内から箱根のワインディングまで往復して感じられたのは、おおよそホットハッチらしからぬ、ロングツーリング性能の高さだった。

新型スイフトスポーツにおける最大の技術的トピックは、やはりエンジンのターボ化に尽きる。2代目ZC31S型、3代目ZC32S型に搭載されていたM16A型1.6ℓ直4NAから、エスクード1.4ターボに採用されたK14C型1.4ℓ直4直噴ターボに変更。さらに、エスクード用がフラットなトルク特性なのに対し、スイフトスポーツ用は1500rpm付近から約220Nmものトルクを立ち上げた後、さらにもう一段階トルクアップさせる特性を与えている。

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これにより、先代スイフトスポーツの160Nmはもちろん、エスクード1.4ターボの210Nmをもしのぐ、230Nmの最大トルクを2500~3500rpmの広範囲で発生。最高出力も140psと、先代スイフトスポーツおよびエスクード1.4ターボより4ps高めながら、発生回転数を先代スイフトスポーツの6900rpmから5500rpmへと大幅に引き下げているのが特徴だ。

さらに、低・中負荷域にウェイストゲートバルブを閉め、タービン回転数を高く保つノーマルクローズ制御を用いることで、アクセル全閉から全開での過給応答性を2000rpm時で0.17秒短縮。サブマフラーを先代のシングルからデュアルに変更するなどの構造・容量変更により、排気音量がエンジン回転数に対してリニアに立ち上がるよう改良されている。

吸気系では、空冷式横置きインタークーラーや大容量エアクリーナー、冷却系ではラジエーターのフルサイズ化および電動ファンのダブル化などにより、冷却性能を高めながら静粛性もアップ。エンジンマウントもペンデュラム方式とするなど、高トルクに対応しつつ軽量化された。

そして、もう一つの大きなポイントは、骨格のつながりをスムーズにすることで軽量高剛性化を図る新プラットフォーム「ハーテクト」の採用だ。ボディは標準車と同様に、980MPa級のものを重量比17%、先代の3倍におよぶ割合で採用するなど超高張力鋼板を多用しつつ、内外装やパワートレイン、シャシーに至るまで徹底的に重量を削減することで、先代スイフトスポーツに対し70kg軽量化。車重を6速MT車で970kg、6速AT車で990kgにまで落としている。

さらに、リヤドア開口部上部およびテールゲート開口部下側左右に合計12点のスポット溶接打点を追加。その動力性能と走行ステージに相応しいボディ剛性を手に入れた。

最初に試乗したのは、従来の7速MTモード付きCVTに代えて設定された6速AT車。よりダイレクトな加速感・変速感が味わえるよう、エスクード1.4ターボ用に対し最終減速比が3.502から3.683に下げられ、トルクコンバーターの特性も変更されたという、そのモデルに触れてまず感じたのは、やはり軽さだった。

ドアを開閉し、シートポジションを合わせ、エンジンを始動し、ミラーを調整、シフトレバーをDレンジに入れる。それら一連の操作が全て、わずかな力で行うことができる。しかも、そこに安っぽさは決してなく、適度な節度感が味わえるのだから、これは女性のドライバー(や同乗者)にとっても好ましい操作感といえるだろう。

そしてアクセルペダルを踏み込めば、従来のCVT車のようなラバーバンドフィールはなく、至ってスムーズに加速していく。これは、ローギヤ化などによる加速レスポンス向上が図られた6速ATのみならず、1500rpm付近で220Nmものトルクを生み出す1.4ℓターボエンジン、そして70kg軽量化され1tを切ったボディの恩恵を最も強く感じる瞬間だ。

その後速度を上げていき、流れに乗って走ろうとしても、何らストレスを感じることはない。一般道はもちろん高速道路でも、2000rpm強まで回せば余裕を持って巡航することができる。

ただし、ホットハッチらしいと言うべきか、特に冷間時のシフトショックはやや大きめ。195/45R17 81Wのコンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5も温度依存性が高く、コンパウンドが暖まらないうちは路面の凹凸を正直に拾い、ロードノイズも大きめだった。

一方で風切り音は速度域が上がっても小さく、エンジン音も最大トルクを発生する2500~3500rpm以下ではロードノイズに打ち消されるほど。むしろ高速域では風切り音がロードノイズを打ち消すのか、耳障りな雑音が減り、快適性は増すように感じられた。

そして、長距離長時間の高速走行時に役立つものと期待されるのが、サイド&カーテンエアバッグ、リヤシートベルトプリテンショナー&フォースリミッターとともに「セーフティパッケージ」として、6速AT車のみならず6速MT車にもオプション設定される、予防安全装備の数々である。

フロントガラス上部の単眼カメラとレーザーレーダーにより、歩行者にも対応する衝突被害軽減ブレーキ「デュアルセンサーブレーキサポート」や誤発進抑制機能(6速AT車のみ)、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能、ハイビームアシスト機能を備えたほか、新たに車線逸脱抑制機能を追加している。

さらに、フロントロアグリル右側のミリ波レーダーによって、アダプティブクルーズコントロール(ACC)を実装。セーフティパッケージ装着車のオプションとして、全方位モニター用カメラも設定した。

事故のリスクに対する警報は、他のスズキ車と同様に音が大きくメーター表示も派手で、居眠り運転していたとしても即座に目が覚め、緊急回避の動作を取るのに大いに役立つ。ただし、トンネル出口での逆光や対向車のハイビームなどでデュアルセンサーブレーキサポートが誤作動を起こしやすい傾向にあるため、障害物検知のプログラムを早急に改善する必要がある。

新たに追加された車線逸脱抑制機能は、軽くステアリングを握っていればハッキリ体感できるほど積極的に操舵アシストを行うため、自分の意思でクルマを操りたい時は煩わしく感じるものの、楽に巡航したい時は疲労軽減に寄与してくれる。

このクラス、特にホットハッチとしては珍しいACCは、1.4Lターボ&6速ATの大トルクと高レスポンスのおかげで小気味よく加速してくれる一方、車間距離を最短の設定にしても大きく取り過ぎる傾向にある。特にスイフトスポーツは車重が軽く制動力も高いため、周囲の車両の流れに取り残されず後続車を滞らせないよう制御をチューニングすることは可能なように思われた。

そしてたどり着いた、箱根のワインディング。初めはAT任せのまま、やや速めのペースで走らせてみると、坂道走行の制御ロジックが組み込まれているらしく、減速時は積極的にシフトダウンし、逆に加速時やアクセルオフ時はむやみにシフトアップを行わない。そのためアクセルオフ時には適切なエンジンブレーキ、アクセルペダルを踏み込めば即座に溢れんばかりのトルクを得ることができる。軽くジョギングする程度の気持ちでワインディングを流したいという時は、ATモードを維持した方が、むしろ速く楽に走れるだろう。

そして、最も重要なハンドリングや路面への追従性は、もはや絶品と言うより他にない。ダンパー・スプリング・スタビライザーのみならず、リヤはトーションビームまで剛性を高めた専用品を採用したおかげもあり、ステアリング操作に対し極めてクイックかつリニアに反応し、コーナリングの過程でもさしたる修正舵を必要としない。かつゆっくりとロールしながら弱アンダーステアを維持するため、何ら不安を覚えることなく旋回できる。

路面の凹凸に対しても、大きな凹みに対してこそやや強めのショックを室内にもたらすものの、それ以外はいたってオンザレール。サスペンションが極めてしなやかに凹凸をいなし、車体の姿勢をフラットに保ってくれる。フロントセミバケットシートの高いサイドサポート性も相まって、車体のみならず乗員も姿勢と視線の変化が少ないため、速く安心して走れるだけではなく、快適で疲れにくいというのも大きな美点だ。

その走り味は、ほぼ同じパワートレインを持ち、走りにおいては無類の完成度を誇るエスクード1.4ターボに酷似しており、しかも車重が230~250kg軽く(ただしエスクードは4WD、スイフトスポーツはFF)、ボディサイズは全てにおいて一回り小さいのだから、速くないわけがない。楽しくないわけがない。「乗らなきゃわからないのかよ、そんなことまで」と言われそうだが、実際に乗ってみたら、期待以上の速さと楽しさだったのだから、ただただ驚かされるばかりだった。

だが、その持てるポテンシャルを全て使い切って走りたいとなると、物足りない部分が見えてくる。メーター上は6250rpm以上がレッドゾーンとなっているが、ATモード、パドルシフトを駆使したMTモードを問わず、実際には5800rpm付近で自動的にシフトアップする。これは後日試乗した6速MT車でも、5800rpm付近でレブリミッターが働いてしまっていたため、状況はさほど変わらないというのが、また大きな問題だ。

コントロール性の面ではもちろん、特に4000rpm超でターボエンジンとは思えないほどの快音を奏でるこのK14Cを堪能し尽くせないという意味でも、この自動シフトアップ制御と低いレッドゾーンは疎ましく思えてしまう。

なお、6速MTはアルトワークス用5速MTとほぼ同様の改良メニューが与えられているものの、残念ながらストロークが10mmも長い50mmとなっており、ブッシュなどもアルトワークス用ほど硬くはない。筆者のようにアルトワークスと同じシフトフィールを期待して6速MT車に乗ると、率直に言ってガッカリしてしまうのだが、長距離長時間走行する際にはむしろちょうど良く、疲れにくいという点で好印象だった。

そして、230Nmもの最大トルクを発生するにもかかわらず、依然としてスイフトスポーツには、6速AT車はもちろん6速MT車にもLSDがオプション設定すらされていない。

そのためコーナリングで車体をアウト側へフルバンプさせずとも、エンジン回転をレッドゾーン付近で維持せずとも、立ち上がりでアクセルを踏み込めばアッサリとイン側がホイールスピン。それ以上の加速を拒むため、より速く走るには、これまで以上に小さく回り直線的に立ち上がるライン取りが求められる。

スイフトスポーツであれば、各パーツメーカーやチューニングショップがバリエーション豊富にLSDを商品化するだろうが、そろそろヘリカルLSDくらいは標準装備してもよいのではないだろうか?

また、先代よりも大幅にサイズアップされたブレーキは、耐フェード性こそ下りの高速ワインディングでも申し分ないものの、絶対的な制動力はもう少し欲しい、というのが正直な所。ペダルタッチもスポンジーでストロークも長いため、フィーリングにこだわるならばサーキットを走らずともブレーキまわりのチューニングは必須だ。

新型スイフトスポーツは、従来からの美点であるワインディングでの軽快な走りも大幅に進化している。だが、最も楽しく快適に走れる場面は、高速道路を主体としたロングツーリングである。6速MT車の方が若干ワインディング向きではあるものの、ロングツーリングの方がより適しているのは6速MT車も6速AT車も変わらない。

そう、新型スイフトスポーツは、「ホットハッチ」と言うよりもむしろ「GT」と呼んだ方が相応しい性格の持ち主である。しかも、ピュアスポーツカーではなく乗用車をベースとし、必要最低限の後席と荷室のスペースを持ち、適度にルーズで疲れにくい操作フィールを備えるという点を含め、BMWの「M」に極めて近い。

スズキは新型スイフトスポーツを含め、過去のモデルにおいても「BMW Mの走りを目指しました」とは公に発していない。だが、「BMW Mの走りを目指しました」と公言しつつ、その走りには遠く及んでいない数々のプレミアムスポーティモデルよりも、遥かにその領域に近い場所へたどり着いている。

しかもその価格は、6速MT車が1,836,000円(セーフティパッケージ装着車は1,922,400円、セーフティパッケージ・全方位モニター用カメラパッケージ装着車は1,980,720円)、6速AT車が1,906,200円(同1,992,600円、2,050,920円)と、20歳代の若い社会人にも手が届きやすいレベルなのだ。

軽自動車ですら200万円を超えることが珍しくなくなった昨今、Bセグメントでしかも付加価値の高いスポーツモデルにおいて、この圧倒的なコストパフォーマンスの高さは、掛け値なしに奇跡と言える。もっともそのおかげで、その後に発売されたスズキ車が相対的に高く感じられるうえ、ホットハッチとしてのスイフトスポーツの立ち位置が不明瞭になったいうジレンマも抱えているが……。

そんな新型スイフトスポーツは、ノーマルのまま乗るならば、またワインディングやサーキットを走る機会が少なく、長距離を走る機会が多いならば、AT免許でも運転でき、イージードライブも可能な6速AT車の方が、その高いGT性能、万能性を享受できる。だが、ワインディングやサーキットを本気で走りたいという人は、不満を抱いた点をチューニングしていくことを大前提として、6速MT車を選ぶべきだろう。

日本はもちろん世界中で「若者のクルマ離れ」が叫ばれて久しいが、今やクルマ離れは若者だけの話ではない。そんな中で登場した、この奇跡のようなコストパフォーマンスを持つホット……いやGTハッチの新型スイフトスポーツを、1人でも多くのドライバーが所有することで、クルマ好きが1人でも増えてくれることを心から願う。

さらに欲を言えば、スズキには現状のスイフトスポーツの走りのまま、中高年のドライバーが乗っても恥ずかしくない落ち着いた内外装を持つ「GT」と、エンジンの高回転高出力化、6速MTのシフトストローク短縮、LSDの装着、足回りとブレーキのさらなる強化を施した「ワークス」を追加設定してもらいたいところだが……。

Specifications
スズキ・スイフトスポーツ セーフティパッケージ・全方位モニター用カメラパッケージ装着車(6速MT車/6速AT車)
全長×全幅×全高:3890×1735×1500mm ホイールベース:2450mm 車両重量:970kg/990kg エンジン形式:直列4気筒DOHC直噴ターボ 排気量:1371cc ボア×ストローク:73.0×81.9mm 圧縮比:9.9 最高出力:103kW(140ps)/5500rpm 最大トルク:230Nm(23.4kgm)/2500-3500rpm JC08モード燃費:16.4km/L/16.2km/L 車両価格:1,980,720円/2,050,920円

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