F1のモータースポーツ担当ディレクターを務めるロス・ブラウンは、2007年にマクラーレンでF1のキャリアをスタートしたルイス・ハミルトンについて、世界タイトル6度獲得という実績にふさわしいドライバーだと述べている。
「ルイスは、タイトルを取った6度の世界選手権すべてにおいて、チャンピオンの名にふさわしい働きをした」と、ブラウンは今週『The Guardian』紙に対して語った。
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「彼は良い時期に良いチームに入った。今はパフォーマンスレベルもピークに達している。ミスを犯さないし、本当に素晴らしいドライバーだ。彼のパフォーマンスは並はずれている」
「ルイスが勝てているのは偶然ではない。彼が勝てるのは、素晴らしい仕事をしているからだ。そのことを評価すべきだ」
ハミルトンは、7度目のタイトル獲得を目指して2020年シーズンに臨む事になるが、実際に達成すればミハエル・シューマッハーの持つ歴代最多記録に並ぶ。シューマッハーは7回のタイトルのうち5回をフェラーリ在籍中の2000年から2004年にかけて達成しており、当時のチームのテクニカルディレクターがブラウンだった。
一度はF1を引退したシューマッハーだが、メルセデスと契約してF1復帰を果たしたときに、シューマッハーとチーム代表に就いていたブラウンとのコンビが復活した。そして、そのシューマッハーのシートを2013年から引き継いだのがハミルトンだった。
つまりブラウンは、近代のモータースポーツにおけるふたりの素晴らしいドライバーを比較できるただひとりの人物ともいえるが、ブラウン自身はそれは不可能だと強調する。
ブラウンは「マシンも違うし時代も違う。ふたつの異なる競走だ」と主張しているが、ある部分ではハミルトンとシューマッハーは非常に似通っているとも話す。
「ふたりとも、マシンで見せる働きという意味ではとてつもない才能の持ち主だ。無から新しい何かを生みだしてしまうのだ」
「予選では、何度かルイスの見事な走りにスタッフのみんなが言葉を失ってしまったことがあった。そしてミハエルのときも同じことが起きていた。彼らにしかできないことがあるということだ」
「ルイスは驚くほどプロフェッショナルだし、熱心で献身的だ。一方ミハエルは、ルイスが必要としないような細かい部分へのこだわりが非常に強い」
「ミハエルが走った時代は、今とはテクノロジーのレベルが違っていた。データ分析も非常に原初的だった。今は、ドライバーがマシンを降りたときには、エンジニアがすべてのコーナーに関するマシンの動きを分析したシートを携えている」
「私がミハエルと最初に仕事をしたときには、コーナーの番号を振った紙を一緒に見ながら、彼がどこでアンダーステアやオーバーステアしたのかを説明し、それから分析に入っていた」
■規則変更に必要な“満場一致方式”が妨げに
ブラウンが古き時代を好むのは驚きではない。F1を経営する側に移って以降、ブラウンは昔のレースと同じようなコースでの接近戦を復活させるべく、規定や技術規則の改定に向けた努力を続けている。
「現在のマシンは、特に互いが接近したとき、空力的にはひどいものだ。近づいた瞬間に破片が飛び散ってしまう。あれはレーシングカーではない」
「戦車は必要ないが、適正なレースができる程度には頑丈であるべきだ。だが我々はそれを失ってしまった」
またブラウンは、あらゆる規定の変更について、FIAやF1商業権保有者であるリバティ・メディアと全10チームとが合意することの難しさが、F1を正しい方向へと引き戻すうえで障害になっているという。
「我々は、あらゆる試みを妨げるこの満場一致方式を変えたいと思っている。(この方式は)非生産的な仕組みだからだ」
「間違いすら変えられないような、柔軟性に欠け、硬直した状況を変えようとしている。F1の発展は、技術規定や競技規定だけで達成するものではない。財政規定も、組織統治も必要だ」
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