■EVの先駆者「リーフ」と「ホンダe」を比べてみた
日本では2020年10月末から販売がスタートした、ホンダ初の量産型電気自動車「ホンダe」。
日本への割り当て台数が少なかったということもあり、第1期のオーダー分はすぐに完売となったことでも話題となりました。
注目度の高いホンダeを、日産「リーフ」の現役オーナーが乗り比べてみましたが、ホンダと日産のEVの違いは、どのようなところにあるのでしょうか。
筆者(小鮒康一)が所有するリーフは、40kWhのバッテリーを搭載した2018年式の「X 10万台記念車」という特別仕様車で、国内累計販売が10万台を超えたことを記念してリリースされたモデルです。
装備の内容的には、現在ラインナップされている「X Vセレクション」とほぼ同等の装備を持ったものとなります。
一方、今回チェックしたホンダeはベーシックグレードで、バッテリー容量は35.5kWhでモーター出力は100kW。16インチタイヤを装着するモデルです。
なお、ホンダeには上級グレード「アドバンス」もラインナップされており、こちらのモーター出力は113kW。17インチタイヤを装着しています。
まるでコンセプトカーのような個性的なエクステリアを持つホンダeに対し、2代目モデルではあえて“普通のクルマ感”を強調したリーフは、対極にいるといっても過言ではありません。
リーフのシャープな印象も気に入ってはいるのですが、個人的にファニーなホンダeのエクステリアは好印象。とくに、解放感あふれる「スカイルーフ」はうらやましい装備だと感じました。
シェードを開ければ解放感を味わえるのはもちろんですが、天気のいい日には太陽光が降り注ぎ、冬の寒い時期であっても室内を暖めてくれます。
エンジンという大きな熱源を持たないEVは、暖房で車内を暖めるのが苦手であり、多くの電力を消費してしまうのです。そのため、自然光で暖が採れるホンダeのスカイルーフは、非常に有効というワケなのです。
内装も、あくまで普通のクルマの範疇を超えないリーフに対し、ホンダeはワイドスクリーンのメーターパネルなどを採用した斬新なもの。
高級感を求める人には物足りなさを感じるかもしれませんが、ガジェット好きのユーザーであれば刺さるのではないでしょうか。
ただし、ホンダeはコンパクトなサイズのボディが災いしてか、シートサイズはリーフに軍配が上がります。
リアシートはもちろん、フロントシートもリーフのほうがタップリとしたサイズで、長時間の運転でも問題ありません。
またラゲッジスペースは、ホンダeはRR(後輪駆動)ということも影響して、非常にミニマムとなっていました。
そしてホンダeの特徴のひとつである「サイドカメラミラーシステム」は、普通に走行している分にはすぐに慣れたのですが、後退するときがくせ者でした。
通常のドアミラーであれば、映っているものがそのままその延長線上に存在するわけですが、モニターが内側にあるため駐車場の白線などは脳内で補正しなければなりません。
ドアミラーでの後退に慣れ過ぎてしまった筆者は、そのズレをなかなか補正できずに苦戦してしまいました。
アドバンスに備わるマルチビューカメラシステムがあればそこまで苦戦しないと思われるので、スタンダードなグレードにもオプション設定が欲しいところです。
■ホンダeは航続距離が短いが、電費はリーフに勝る!?
モーターの出力については、リーフ(40kWh)が110kW/320Nm、ホンダeが100kW/315Nmと出力的には大差ありません。車両重量もリーフは1520kg、ホンダeは1510kgと、スペック的にはほぼ同一といえます。
しかし実際に運転してみると、ホンダeのほうが軽快な印象を持ちました。リア駆動という点もそうですが、常用域でのレスポンスはリーフを上回っている感覚です。
その理由は最終減速比にありました。
リーフは8.193なのに対し、ホンダeは9.545とローギヤードだったのです。タイヤの外径は両車ほぼ同一ですから、ギア比が低い分、俊敏な印象を持ったというワケです。
ただし、ローギヤードにすれば当然同じ速度でもモーターの回転数は高くなるので、電費性能に差が出ることになりますが、電費性能でもホンダeのほうが伸びるという結果になったのです。
カタログ上の航続距離(WLTCモード)は、リーフ(40kWh)が322km、ホンダeが283kmとなっています。
リーフの場合、普段使いで8km/kWhくらい走れば良い印象ですが、ホンダeは極端なエコ走行をせずとも9km/kWh台をマークできました。
実電費で1km/kWh違うとなると、バッテリー容量の差を考慮しても航続距離は同等となるわけで、この点はもっとも予想外でした。
電気自動車はモーターの強力な回生ブレーキを利用して、アクセルオフで大きく減速することができるシステムを持っており、リーフでは「e-Pedal」、ホンダeでは「シングルペダルコントロール」と呼んでいます。
同じようなシステムを持つ両車ですが、リーフでは一気にアクセルを閉じるとかなりの減速力が立ち上がりますが、ホンダeではそこまでではなく穏やかな印象です。
また、ホンダeはステアリングに備わるパドルを操作することで、シングルペダルコントロールの減速力の強さを変更できるほか、オフにした状態でもパドル操作で減速力を調整できる(シフトダウンでのエンジンブレーキの要領で)ため、アクセルペダルのみでのコントロールが苦手なユーザーでも速度の調整がしやすくなっているのは美点といえるかもしれません。
電気自動車を走らせるのに欠かせない電気ですが、首都圏のディーラーであれば、ほぼ100%に近い確率で急速充電スタンドが設置されている日産に対し、ホンダのディーラーにはほとんど急速充電スタンドは設置されていません。
ただし、この事実だけを切り取ってホンダが電気自動車に力を入れていないと考えるのは尚早といえるでしょう。
なぜなら、ホンダの充電カードサービスである「Honda Charging Service」は、手数料や月の会費はゼロであり、その代わり急速充電は16円/分、普通充電は1.5円/分という従量課金制。
つまり、他メーカーのディーラーでもサービスエリアでも公共施設でも一律の金額となっているのです。
これは、ホンダeはあくまで自宅充電を基本とし、それで走れる距離の範囲で使用するシティーコミューターであるということが関係していると思われますが、出先での充電は緊急回避的なものという位置付けなのでしょう。
一方のリーフは、過去に展開していた「旅ホーダイ」からも分かるように、62kWhのバッテリーを搭載した「e+」の航続距離458km(WLTCモード)を誇り、電気自動車でも遠出を諦めなくてもいいというキャラクターとなっています。
この辺りはどちらが正しいというワケではなく、ユーザーに選択権があるということでしょう。
個人的には、シティーコミューターとしてコンパクトなボディと後輪駆動の走りの楽しさを持ち合わせたホンダeに惹かれる点も多くありました。
しかし、残念ながら自宅で充電できる環境がないということと、そして何より、332万6400円からのリーフ(40kwh)、441万1000円からのリーフe+(62kwh)に対し、ホンダeはそれを上回る451万円から495万円という車両価格が高いハードルだと感じました。
とはいえ、リーフもデビュー当時は24kWhのバッテリーでも400万円近い価格だったわけですが、ホンダeも時代が進むにつれて買いやすい価格になっていくことを期待したいところです。
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