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【馴染みある運転感覚が好印象】ボクソール(オペル)・コルサ-e 航続距離336km

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【馴染みある運転感覚が好印象】ボクソール(オペル)・コルサ-e 航続距離336km

50kWhのバッテリーを搭載しEV化

text:Simon Davis(サイモン・デイビス)

【画像】コルサ-eと導入進むコンパクトEV 全96枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


遂にコルサも、バッテリーに充電した電気だけで走れる時代がやって来た。自動車の急速な進化を実感する。

オペルからコルサの初代が登場したのは1982年。2020年の今では、336kmの航続距離を得たEVになった。ドイツのオペルと英国のボクソールにとって、最も重要なクルマの1台だといっても良いだろう。

ちなみに英国では、スペイン製の初代コルサは、ノバと呼ばれて売られていた。途中でコルサと呼び方が変わっても、毎年の販売台数は堅調で、英国でも成功したモデルの1台。ライバルと呼べるのは、フォード・フィエスタくらい。

新型コルサに純EVを追加することで、ボクソールとオペル、フランスのオーナーは、さらに高みを目指していることは間違いない。ガソリンエンジン版のコルサと同様に、コルサ-eが土台とするのは、グループPSA製のコモン・モジュラー・プラットフォーム(CMP)。

今ではおなじみのアーキテクチャで、新しいDS 3クロスバックやプジョー208も利用している。コルサと同様に、EV版もラインナップしているのはご存知の通り。

このCMPは、当初から純EV化を前提に設計されている。だとしても、ガソリンエンジン版のコルサを、ゼロ・エミッションのコルサ-eへと作り変えるのは、簡単なことではない。燃料タンクとエンジンを外して、バッテリーとモーターを積んだだけではないのだ。

50kWhのバッテリーも含めて、追加となる車重は345kg。エンジン版のコルサと同様な走行性能とハンドリングを得るために、足腰や骨格にも変更を受けている。

車重は増えても加速は活発

リアのトーションビームを後方へ動かし、前後トレッドを拡大。数mmだけだが、ホイールベースも伸ばされている。フロントのサブフレームは強化品となり、サスペンションのスプリングとダンパーも見直した。ステアリングの応答性も調整を受けている。

Hの形をした重いバッテリーの搭載位置の都合で、重心高は10%ダウン。リアシート下に大部分が収まり、フロントシートの下にも少し割り振られている。

同期電動モーターの最高出力は135psで、最大トルクは26.4kg-m。シングルスピードのトランスミッションを介して、前輪を駆動する。

車重は1455kgもあるから、コルサ-eは運動神経に優れたコンパクトカーではない。それでも電気モーターらしく、スタートダッシュは力強い。乾燥路面であれば、カタログ値通りの0-100km/h加速時間を達成できるだろう。

一方でこの手のコンパクトEVの場合、都市部で多用する30km/hくらいから80km/hまでの加速性能の方が、重視されるはず。コルサ-eは、ややパワーが絞られるノーマル・モードでも、この速度域での活発な加速が楽しい。

アクセルペダルを踏み込めば、感動すら覚える力強さで前へ飛び出す。だが、滑りやすい路面でペダルを踏みすぎると、トラクションコントロールが介入するほど激しくフロントタイヤが空転する。普通の感覚で右足を操作している限り、上質な走りを味わえる。

素晴らしく落ち着いた車内空間

回生ブレーキの強さは、最も回生率の高い設定でも、ほどほど。ブレーキペダルの感触に違和感はない。回生ブレーキから通常の摩擦ブレーキへ切り替わったタイミングは明確にわかるが、移り変わりはスムーズ。

電気自動車が初めてのドライバーでも、今まで通り運転できる。ここが重要だと思う。

今回コルサ-eを試乗したのはドイツ・ベルリンだったが、都市部でも高速道路でも、外の喧騒から切り離された車内空間が得られている。高い速度域でも、車内は素晴らしく落ち着いた雰囲気が漂う。風切り音は最小限で、タイヤの転がり音も、路面を問わず静かだった。

この穏やかな空間に邪魔が入るのは、橋桁や路面の隆起部分を通過した時に、強めの振動が伝わる場面。それでも、よほど大きな路面の剥がれでもない限り、振動はよく丸められている。

強い入力があると、ドスンと大きめの音が聞こえることもあるが、サスペンションが仕事をしっかりしてくれるから車内は平穏。遮音性も充分に高い。

増えた車重を実感するのは、コーナリング時。ステアリングは正確で、重み付けも丁度いいから、ドライバーが不安になることはない。

圧倒的なグリップ力を感じたり、運転に熱中してしまうような、喜びを感じるわけではない。それでも、快適な中にも充分に煮詰められた運転体験は味わえる。ライバルにも少なからず影響を与えるはず。

EV普及を助ける馴染みのある運転感覚

さらにコルサは、華やかなデザインも特徴。シックなプジョーe-208の隣に並ぶと、もう少し活気が欲しくも見えるけれど。

全体の質感は良く、運転席の座面は驚くほど低い位置に調整することもできる。その下にはバッテリーが隠れているはずなのだが。リアシートの空間も十分にあり、荷室容量も267Lと不満はないだろう。

英国の場合、補助金を引いた後の価格は2万7165ポンド(388万円)。コルサとしては高額に感じるが、7.5時間で満充電にできる、家庭用充電器もセットでの価格となっている。

コルサ-eは、100kWの直流急速充電器にも標準で対応しており、その場合は30分で充電を終わらせられる。ライバルモデルはオプションでの対応となるから、ボクソール(オペル)の決定が清々しい。

コルサ-eは、ホンダEやミニ・エレクトリックなど、走行性能重視のコンパクトEVとは別の仕上がりだとはいえる。純EVを検討している人にとって、走りも確かに重要ではあるが、コルサ-eが持つ馴染みのある運転感覚も、同じくらい重要であるはず。

潜在的なユーザーをEVへと導くには、まだ少しの時間が必要だろう。だが、すでに悪い選択でなくなっていることは確かだ。

ボクソール(オペル)・コルサ-eのスペック

価格:2万7165ポンド(388万円・英国補助金適用後)
全長:4060mm
全幅:1765mm
全高:1435mm
最高速度:130km/h
0-100km/h加速:9.3秒
航続距離:336km(WLTP複合)
CO2排出量:0g/km
乾燥重量:1455kg
パワートレイン:ハイブリッド同期モーター
バッテリー:50kWh
最高出力:135ps/3674-1万rpm
最大トルク:26.4kg-m/300-3673rpm
ギアボックス:シングルスピード

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