遂にハイブリッドを得た992型911
992型のポルシェ911で、スイートスポットといえるバランスの良さにあったのがGTS。カレラよりパワフルで対峙する喜びがあり、911 ターボやGT3級にハードでもシリアスでもない。多くのドライバーも、それを評価してきたと思う。
【画像】3.6Lの驚異的レスポンス 992.2型ポルシェ911 競合の上級クーペと写真で比較 全145枚
ところが、シュツットガルトの技術者が911のハイブリッド化を決めた時、選んだのはGTSだった。これを知った少なくないポルシェ・ファンがSNS上で嘆き、怒ったようだ。ただし、車重が2tに達するという噂は間違いだ。
2018年に発表された992型には、2024年に幅広い改良が施され、ポルシェが992.2型と呼ぶほどの進化を遂げた。英国価格を約1万ポンド(約202万円)も上昇させる電動化技術が、その中心にあることは間違いないだろう。
911 GTSの水平対向エンジンは、新開発の3.6L 6気筒シングルターボ。従来のツインターボ・ユニットより、排気量は0.6L拡大した。レブリミットは7500rpmで、最高出力は484ps、最大トルクは57.9kg-mを発揮する。
ここへ、電圧400Vのハイブリッド・システムを実装。エアコンのコンプレッサーは電動になり、補機ベルトで回す必要がなくなった。スターターモーターも不要になった。
そのかわり、電流を整えるインバーターを搭載。8速デュアルクラッチAT内には、54psと15.3kg-mの駆動用モーターが内蔵された。このトランスミッションは、当初から電気モーターを組む前提で設計されていたという。
ターボチャージャーにも、電気モーターが内蔵されている。タービンを早期に回したり、回転を維持するために。
システム総合541ps 車重増は実質80kg
駆動用バッテリーはフロントにあり、容量は1.9kWh。余剰な運動エネルギーで発電し、走行中は充電もされる。ポルシェがT-ハイブリッドと呼ぶ、新しいパワートレイン総合での最高出力は541psで、最大トルクは62.1kg-mになる。
ボディスタイルは、後輪駆動でクーペのカレラと、カブリオレ、四輪駆動のタルガから選択可能。ポルシェによると、ハイブリッド技術により車重は50kg増えたという。後輪駆動のカレラGTSは1595kgで、最も重いタルガ4 GTSでは1745kgになる。
だが、これにはトリックがある。リアシートが無償オプションという設定に、フェイスリフト後は変更されたのだ。従来どおり+2にすると、さらに約30kg増える。それでも、同等クラスのスポーツカーでは軽い部類に入るが。
0-100km/h加速は、カレラGTSで3.0秒。最高速度は312km/hで、燃費は9.3km/Lが主張される。CO2の排出量は244g/kmだ。
後輪操舵システムは、改良後のGTSでは標準装備に。サスペンションは、10mm低い設定になる。ボディロールを抑制するオプションのPDCCは、電圧400Vに対応する新しい電動油圧システムへアップデートされた。
タイヤサイズは、リアが315/30 R21で、フロントは245/35 R20。フロントとリアにはアクティブ・エアロが実装され、ヘッドライトもリフレッシュした。一文字のテールライトも、変更が加えられている。
素のカレラもアップデート 992.2のピュアな魅力
非ハイブリッドの911 カレラも、同時にフェイスリフトを受けている。3.0L 6気筒エンジンはそのままだが、改良前のGTS用ターボを獲得した。インタークーラーは、同じく911 ターボ譲りとなり、最高出力は394pへ上昇。ブレーキも大径化された。
インテリアでは、メーターパネルが完全にモニター化。中央がタコメーターという配置は変わらない。新しくスタートボタンも獲得している。
今回は、複数の992.2へ試乗したが、順に印象をお伝えしていこう。最初にステアリングホイールを握ったのは、リアシートの付いた911 タルガ4 GTSだ。
少し大きく重く感じられるのは、ハイブリッド化前と変わらない。新しいパワートレインは、直線加速で重さを忘れさせてくれるが、カーブへ侵入すると思い出してしまう。
その後、スペインのアスカリ・サーキットへ移動。ここで、非ハイブリッドの911 カレラへ乗り換えたが、サーキットで楽しめる能力は少し減じたように思えた。
タルガより情感豊かで、運転が楽しいことは明らか。身のこなしは軽快で、ラインの調整域も広い。プロのレーシングドライバーが運転する、先導車の911 ターボについていくのはやっと。それでも、目一杯能力を引き出すのは喜びだ。
アクセルとブレーキペダルの操作で、コーナリング・スタンスはアンダーからオーバーまで自在に選べる。ステアリングには鮮明な情報が伝わり、後輪操舵システムは極めて自然。素のカレラには、992.2型の911が持つ純粋な魅力が、すべて詰まっている。
驚異的なレスポンス GTSのベストは後輪駆動
少し熱中しすぎて、手のひらが汗ばんでしまったが、カレラ4 GTSへスイッチ。ここで、ポルシェのハイブリッド・パワートレインの有能ぶりが顕になる。
3.6Lユニットは、従来の3.0Lユニットよりノイズが大きく、レスポンスは驚異的のひとこと。8速デュアルクラッチAT内の駆動用モーターは、エンジンのあらゆる回転数へ対応し、ターボ内のモーターがブーストを維持。ターボラグは皆無といえる。
ブレーキングやコーナリング時は、カレラ以上の重さを感じるものの、同時にしっかり路面へしがみついている感覚もある。直接乗り比べなければわからないかもしれないが、性格はだいぶ違う。従来以上に、差別化されたようだ。
よりダイナミックで積極的だが、アナログな印象は薄い。サーキットを同等のペースで走るのに、ドライバーは素のカレラの8割程度の労力で済むだろう。
そして、最後は後輪駆動のカレラ GTS。四輪駆動ではないぶん、コーナーからの立ち上がりでは安定性が若干落ちるものの、引き換えに機敏さと自在さが増している。
今回試乗した3台のGTSでは、これがベスト。車重は1番軽く、新エンジンの素晴らしいレスポンスを発揮でき、魅力的なステアリングを堪能できる。8速デュアルクラッチATは素早く次のギアを選び、ブレーキは本気の数周でもへこたれない。
992.2のスイートスポットは素のカレラ
さらに、カレラ GTSで公道へ。乗り心地は硬めだが、落ち着きはある。ロードノイズは、一部のライバルよりうるさいものの、許容できる範囲。市街地を穏やかに運転している限り、ハイブリッドの存在は控え目だ。
パワー感は現在の911 ターボと同等で、追い越し加速も余裕。追ってそれもアップデートを受ける予定だが、ここから一層能力が引き上げられるのだろう。恐らく、気が遠くなるような水準に達するはず。
それでも、3.0Lツインターボエンジンを積む、素のカレラが最も魅力的かも。4種類の992.2型へ試乗したが、筆者が最も気に入ったのは1番シンプルな仕様だった。いずれも素晴らしい仕上がりにあるが、911のスイートスポットはGTSではなくなったようだ。
ポルシェ911 カレラGTS(欧州仕様)のスペック
英国価格:13万5834ポンド(約2744万円)
全長:4542mm
全幅:1852mm
全高:1279mm
最高速度:312km/h
0-100km/h加速:3.0秒
燃費:9.3km/L
CO2排出量:244g/km
車両重量:1595kg
パワートレイン:水平対向6気筒3591cc ターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:541ps/6500rpm(システム総合)
最大トルク:62.1kg-m/1900-6000rpm(システム総合)
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック(後輪駆動)
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ハイブリッドは正直がっかり