小柄なベントレーになった可能性も
筆者には意外だったのだが、ローバー・ミニを設計したアレック・イシゴニス氏は、オースチン1800とモーリス1800が自信の最高傑作だと考えていたようだ。タイヤがボディ四隅にレイアウトされた、5ドアの前輪駆動サルーンだった。
【画像】個性的な英国クラシック オースチンとウーズレー 同時代のホーネット マキシ アレグロも 全76枚
開発時のコードネームはADO17。小さなハッチバックのミニを拡大し、間口を広げたようなモデルだったが、それと同等の魅力を備えてはいなかったと思う。
確かに車内空間は広大だった。全長4191mmと決して大型とはいえないボディながら、リアシート側の前後長は、当時のロールス・ロイス・ファントムよりゆとりがあったほど。
一方、1967年に発表されたオースチン3リッターに対しては、それほどの自負はなかったようだ。1971年までの4年間に生産された数は、1万台にも満たなかった。経営の厳しかったブリティッシュ・モーター・コーポレーション(BMC)社の、悩みのタネだった。
多様なBMC社のモデル郡のなかでは高価格帯に属しながら、収益性に優れるともいえなかった。ただし、イシゴニスの名誉のために触れておくと、彼は意図的に3リッターの計画から距離が置かれていたようだ。
この3リッターは、一時的に接近していたロールス・ロイスとも関係していた。安価で小柄なベントレーのベースになる可能性が模索されていたという。デザイン検討用の模型を超えることはなかったけれど。
ハンサムな見た目にハイドラスティック・サス
コードネームADO61が与えられた3リッターは、直列6気筒エンジンを積んだ1930年代の上級モデルの、世代をおいた後継モデルに相当した。1950年代のオースチン・ウェストミンスターの次期モデルとして、ジョージ・ハリマン氏によって立案された。
ADO17のシャシーを拡大し、ヘッドライトは4灯化。基本的なスタイリングは、1963年4月には固まっていた。ひと回り小さいオースチン1800に似ていたものの、問題にはならなかったようだ。廉価モデルとの関係性を感じる以前に、充分に新鮮だった。
サスペンションは様々な内容が検討されたが、セミトレーリングアーム式に、ハイドラスティックというラバーへオイルを封入した独自の油圧スプリングを採用。当時のライバルより、技術的な高さを証明するものといえた。不具合の発生率も高かったが。
改めて3リッターを目の当たりにすると、やはりハンサムだ。1800と並べば、お互いを高め合ったことだろう。ウーズレーやバンデンプラ仕様があれば、重厚感すら漂わせたかもしれない。
ところが、3リッターはオースチン・ブランドから広がらなかった。発表時点では、明確にモデル展開も方向付けされていなかった。旧式化したウェストミンスターを置き換えるモデルとして、至急に必要だったからかもしれない。
初期の販促資料を確認すると、3リッターはまだウェストミンスターと呼ばれている事がわかる。また量産版のデラックス仕様が1968年のディーラーへ並ぶ前に、特別な顧客向けとして、100台の先行生産モデルが貸与されてもいる。
評価に優れなかった2.9Lの直6エンジン
1968年にBMC社はレイランド・モーターズ社と合併し、ブリティッシュ・レイランド(BL)社として再編。傘下に加わったローバーの上級モデルや、ジャガーの手頃なモデルと、内部競争が生じることになった。
特にオースチン3リッターのライバルになったのが、1967年のローバーP5B。こちらは庶民のロールス・ロイスとして、高い人気を集めていた。
自動車メディアが3リッターを本格的に評価し始めたのは、1969年になってから。新車価格がAT車で1900ポンドと高く、ツイン・キャブレターを積んだオースチン1800 Sと比較した場合、価格価値で勝らないことは明らかだった。
格下といえた1800 Sの最高速度は、160km/h近くへ達していた。FFで車内にはトランスミッション・トンネルがなく、3リッターより車内にはゆとりもあった。
特に否定的な意見が集中したのが、2912ccの直列6気筒エンジン。MGCと共有のCシリーズ・ユニットで、7ベアリング化されていたものの、開発コストが抑えられていた。燃費は優れず、P5Bと比べて加速性能も劣っていた。
それでも、3リッターはボディの特装を手掛けるコーチビルダーには歓迎された。クレイフォード・エンジニアリング社は3台のステーションと13台のリムジンを制作している。また霊柩車へも多数コンバージョンされている。
後継として誕生した2.2Lのシックス
経営にもがいていたBMC社が、苦しみながら誕生させた3リッター。実用性と適度な豪華さを備え、アメリカ車に媚びたスタイリングとは異なる、ひと回り大きいモデルを欲した英国人へ届けることが目指されていた。
農場の経営者や裁判官、公務員、会社の役員などがターゲットだった。運転手を雇うような人も想定されていた。だが実際は、1970年代初頭にそんな層は多く存在しなかった。
ウーズレー仕様としてV8エンジン版が投入されていれば、市場の反応は違ったかもしれない。先進的なサスペンションに、剛性の高いボディシェルが与えられ、少なくとも操縦性は以前のウェストミンスターより優れていた。
ミニのチューニングを得意としていたダウントン・エンジニアリング社と共同で、高性能なエンジンを開発しても良かっただろう。創業者のダニエル・リッチモンド氏は3リッターを個人的に購入し、Cシリーズを119psから177psへ強化したという話もある。
今ひとつ精彩に欠けた3リッターだったが、2227ccの6気筒エンジンを搭載した新たなサルーンが後を継いだ。それが、1972年のオースチン2200とモーリス2200、ウーズレー・シックスだ。
ミドルサイズ・サルーン、フォード・グラナダへの対抗モデルでもあり、シックスはウーズレーのフラッグシップでもあった。伝統あるブランド名を冠した、当時唯一のモデルだった。
この続きは後編にて。
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みんなのコメント
クルマは無駄に大きくなりすぎたと思う。