モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは1978年にル・マン24時間レースなどを戦った『ポルシェ935/78“モビーディック”』です。
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『ヴィーマックRD320R(2002年)』GT300を変えたレーシングスポーツ【忘れがたき銘車たち】
1976年にFIAの大規模な車両規定区分改変によって誕生した新グループ5。本場欧州ではシルエットフォーミュラ、日本だとスーパーシルエットと呼ばれて、ニッサンのスカイラインやシルビア、ブルーバードなどのニッサンターボ軍団の走りで人気を呼んでいたカテゴリーだ。
“シルエットフォーミュラ”(グループ5)は、グループ1~グループ4の車両をベースにした改造車で、ボディがベース車両のイメージを残していることという規定があったものの、それ以外の改造範囲はかなり広げられていた(もちろんなんでもアリではない)。
量産車のイメージを崩さないことと決められていた外装も、エアロなどの取り付けが許されており、そのフォルムは「光学的に投影した形状」、つまりシルエットによって規定されていた。
そんなグループ5は1976年に世界メイクス選手権の主役となってから、この規定を視野にいれてベースとなるグループ4マシンを製作した後に、935というモデルを選手権に送り込んだポルシェの独壇場となっていた。
ポルシェは規定施行3年目となる1978年、世界メイクス選手権の制覇を935を使う有力プライベーターに任せ、ワークスとしては935をル・マン用に改良して、当時ル・マン24時間レースにおいて総合優勝を狙っていたグループ6のプロトタイプカー、ポルシェ936を援護射撃することを狙った。その935のル・マン向け改良版というのが、935/78である。
935/78はル・マンのユノディエールストレートでの最高速を向上させるべく、まずエンジンの排気量を3211ccに拡大。さらにシリンダーヘッドを空冷SOHC2バルブから、水冷DOHC4バルブへとモディファイしてパワーアップ。これらの改良によってエンジンの最高出力は845PSにも達していたとされる。
またボディもフロントオーバーハング延長とロングテール化を実行した。この改良型ボディをまとった姿から935/78はモビーディック(小説に登場する白い鯨のあだ名)を称された。
935/78は世界メイクス選手権のシルバーストンラウンドなどへの参戦を経て、本番となる1978年のル・マンへとエントリー。予選ではグループ6勢に割って入る予選3番手をマークしたものの、決勝では8位フィニッシュ。結局この年の勝利もポルシェの最大のライバルであったルノー・アルピーヌに奪われてしまった。
そしてポルシェワークスとしては、935への関与を基本的にはこの年限りで終えることになった。
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