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トヨタ2000GTの「X型バックボーンフレーム構造」採用は必然だった【TOYOTA 2000GT物語Vol.11】

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トヨタ2000GTの「X型バックボーンフレーム構造」採用は必然だった【TOYOTA 2000GT物語Vol.11】

少量生産のスポーツカーに最適なフレーム構造

TOYOTA 2000GTの頑強なX型バックボーンフレーム。エンジンがフロントミッドシップに搭載されていることがわかる。リアサスペンションアーム類は細いパイプ類で構成されていた。TOYOTA 2000GTのボディ構造をどうするか。開発初期段階での大きな課題だった。車両重量が軽く、しかも剛性の高いボディ構造として、すでにモノコック構造の市販車が誕生していたが、フロアや内側の骨格などボディを構成する大きなパネルは大型プレスを使って形成しなくてはならない。

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しかし、それは費用対効果を含め効率を考えると、超少量生産車のスポーツカーには得策ではない。結局、当時のスポーツカーのボディ構造としてオーソドックスなフレーム構造をTOYOTA 2000GTに採用することになった。

フレーム構造の利点として、ボディとサスペンション、そしてエンジンを別々に改良・変更できるので、少量生産に向いている。極端な話、ボディを架装しないシャシーの状態でも走れ、その状態でのテストも可能だ。

開発チームが選んだフレーム構造は、X型バックボーンフレームだった。ボディとデザインを担当した野崎喩は、1964年12月中旬に製作した構造計画図に、すでにX型バックボーンフレームの姿を描き入れていた。

X型バックボーンフレームを選択した理由は、空力性能を追求し、車高を極限まで下げるために、フロアの厚さをできるだけ薄くする必要があったためだ。はしご型フレームではサイドメンバーの高さがあるのでフロアを薄くすることができない。その点、サイドメンバーを低く出来るX型バックボーンフレームは有利だったのだ。

1962年に発表されたロータス・エランに、スポーツカー用としてはじめてX型バックボーンフレームが採用された。デザイナーの野崎は、エランが発表される以前からX型バックボーンフレームの採用に関心があったという。

ロータス・エランは、1962年に発売された2シーターのスポーツカー。FRP製ボディとX型バックボーンフレームを採用し、当初は1.5ℓ DOHCエンジンを搭載していた。当時のトヨタにとって、未知のものを開発するのに既存の技術を参考にするというのは、極めて真っ当な選択だった。ただし、TOYOTA 2000GTとエランのフレームは、板厚が異なり、TOYOTA 2000GTはフレーム単体でほとんどの曲げ剛性を負担していた。それに対し、軽量なエランは板厚が薄く、FRP製ボディと合体することで剛性を確保していた。

フラットな床下は空力性能に有利

TOYOTA 2000GTのサイドビューを見ると、ドア下のサイドステップ部分が極端に薄いことがわかる。X型バックボーンフレームが、フロアの厚さをできるだけ薄くすることに貢献。TOYOTA 2000GTのX型バックボーンフレームは、プロペラシャフト、エキゾーストパイプ、電気配線などをフレームの中に収めていた。そのため、バックボーンフレームの断面は大型化するものの、縦方向の曲げ剛性に有利となった。フレームとボディはほぼリジッドで締結し、剛性と強度を高めていた。ボディとフレームの結合状態でのねじり剛性、曲げ剛性ともに一般車よりも高い数値を実現した。

ボディとフレーム結合の際、サスペンション取り付け部の精度が問題になることを考慮し、サスペンションのサブフレーム、エンジン、ディファレンシャルギアの取り付けは、すべてフレーム単体に取り付けられるように設計。ホイールアライメントの精度もこれにより担保された。

X型バックボーンフレームの採用は、床下の空力特性の向上にも有利に働いた。はしご型フレームやモノコック構造では、床下には補強部材が前後・左右に取り付けられ凹凸があるのが普通だが、TOYOTA 2000GTの床下はほぼ真っ平になっている。

強度と剛性は、フロアトンネルの中に収まるX型バックボーンフレームがほとんど全部を受け持ち、ボルトで結合されるボディの補強部材はフロア上面、すなわち室内側に取り付けられていたのだ。

TOYOTA 2000GT開発当時は、実車風洞実験設備もなく、走る自動車の床面と地面の間の空力理論は未確立だったという。それでも床下をフラットにすることによって空気抵抗が低減されると開発チームは信じ、今までにない床下構造が出来上がった。もし、TOYOTA 2000GTがはしご型フレーム構造を採用していたら、あの流麗なデザインは実現できなかったし、スピードトライアルで見せた200km/h以上での高速安定性はなかったかもしれない。(文中敬称略)

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