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【軽セダン、着せ替え車、オープンSUV…】新ジャンルに挑戦するも散ったクルマたち

掲載 更新 3
【軽セダン、着せ替え車、オープンSUV…】新ジャンルに挑戦するも散ったクルマたち

 何事も新しい分野やジャンルに挑戦するには大変な勇気が要る。

 特にクルマは巨額の開発費が掛かるうえに販売後のアフターケアも必要になる商品だけに、その度合いはほかのものより大きく、新しいジャンルはなかなか生まれない。

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 クルマにもハイブリッドカーを認知させたトヨタプリウスを筆頭に新ジャンルに果敢に挑戦して成功したモデルもある反面、残念ながら散ったものも多々ある。成功例よりも失敗例のほうがはるかに多く存在する。

 たとえ失敗したとしても、挑戦することで得たものはあるハズだから、無駄ばかりではないと断言しておきたい。

 当記事ではキワモノで終わらせるのは酷な、果敢に挑戦しながらも無残に散っていったクルマたちを紹介していく。

文:永田恵一/写真:DAIHATSU、NISSAN、SUBARU、SUZUKI、MITSUBISHI、TOYOTA

【画像ギャラリー】商談の嵐!! 新ジャンルの構築に成功&認知させたクルマたち

軽自動車セダン

挑戦車:ダイハツオプティ(1999年デビュー)

ダイハツの軽自動車では高級路線で登場したオプティは、2代目ではトランクが独立した3ボックスセダンのジャンルに果敢に挑戦

 ダイハツオプティはリーザの後継車として、ミラに対し若干上級かつスペシャリティな要素を持つ軽自動車として初代モデルが1992年に登場し、まずまずの成功を納めた。

 軽の規格改正もあり1998年11月に登場した2代目モデルは初代モデルのコンセプトを発展させるべく、軽としては同社で1960年代から1970年代にかけてラインナップされたフェロー以来となる3BOXの4ドア、かつサッシュレスドアの4ドアハードトップとなった。

このアングルからだとトランクが独立しているのがよくわかる。軽枠でボディサイズに制約があるため、高級感よりも狭さのほうが強調されてしまった

 2代目オプティは確かに要素としてはスタイリッシュであったが、実車が特にスタイリッシュではなかったのが残念だった。

 しかし失敗した最大の理由は、サイズが限られている軽自動車で3BOXとするのはやはりキャビンとラゲッジスペースが狭く無理があったことで、2002年にあえなく絶版に。

 オプティのコンセプトは2006年登場のソニカが引き継いだが、そのソニカも短命に終わった。

着せ替えカー

挑戦車:日産エクサ(1986年デビュー)

エクサクーペのリアビュー。リアコンビのデザインにもこだわりが感じられる。Tバールーフによるオープンエアも楽しめた

 エクサはパルサークーペ、パルサーエクサと続いたパルサーの2ドアクーペがパルサーから独立したモデルである。エクサはクルマそのものこそ比較的手軽な成り立ちの2ドア車だったのだが、注目したいのはそのリア部分である。

 日本仕様は標準状態ではオーソドックな形状となるクーペと、シューティングブレイクのようなキャノピーの2つがラインナップされ、それぞれのリア部分は脱着可能で、天気がよければピックアップトラック的に大きな荷物を運ぶことができる。

 おまけにエクサは全グレードがスチール製ながらTバールーフだったので、オープンエアモータリングも楽しめた。つまりそれぞれ1台で3つのボディタイプが楽しめたのだ。

 さらに日本仕様は法規の問題で断念したが、メインとなるアメリカ仕様は日本仕様のクーペで、リア部分はオプションで脱着可能なキャノピーを購入することも可能だったため、アメリカ仕様だと1台でなんと5つのボディタイプに着せ替えができたのだ。

こちらがシューティングブレイクのようなワゴン形状のキャノピー。リア部分の基本骨格は同一で、北米では着せ替えできたが日本では法規により認可されず

 このコンセプトは住宅環境がよくリア部分の置き場に困らないアメリカでは好評だった。

 仮に日本で法規的に認められていたとしても、アメリカとは対照的に特に都市部だと住宅環境がよくない。オープンカーのハードトップの置き場所すら困る日本ではそれよりも大きいリア部分の置き場などないも同然。

 さらにリア部分は重いパーツのため1人では脱着できないことが理由でせっかくのアイディアも受け入れられていなかっただろう。

 そんなこともあり残念ながらこのコンセプトはエクサ1代限りで消滅してしまったが、こんな遊び心を今の日産に取り戻してもらいたいと思っているのは筆者だけじゃないはずだ。

現代の着せ替えカーといえばダイハツコペン。Dフレームの採用により、ローブとセロは前後それぞれ独立して着せ替えが可能となっている

オープンSUV 

挑戦車:日産ムラーノクロスカブリオレ(2011年デビュー:日本未発売)

明らかにSUV史に名を残したムラーノクロスカブリオレ。オープン好きの北米でもそれほど売れず、日本への導入の要望は高かったが正規導入されず

 SUVは無骨なもの、ラグジュアリーなもの、ライトなものなど、個性的なモデルを作りやすいジャンルである。

 その中にはスペシャルティ系のものもあり、最近はクーペルックのSUVが増えているが、2代目ムラーノの北米仕様にはその上を行くオープンモデルのクロスカブリオレがあった。

 ムラーノクロスカブリオレは2代目ムラーノを2ドア化し、電動ソフトトップを持つという、エレガントかつラグジュアリーな雰囲気を持つモデルだった。

 しかし販売は振るわず、日本導入もなく、日本では販売されない現行の3代目ムラーノにもオープンの設定はない。

4ドアのムラーノを2ドア化しているのがポイント。全高も低くなり、ソフトトップを閉めた状態でクーペルックに仕上げられているのがわかる

 しかし現行モデルには今のところないが、レンジローバーイヴォーグの先代モデルにはムラーノクロスカブリオレの影響を受けたと思われるコンバーチブルがあった。

 日産ももしかしたらプレミアム性の高いインフィニティのSUVで同じことをしていれば結果は変わったのかもしれない。

軽自動車を拡大した3列7人乗り1BOXカー

挑戦車:スバルドミンゴ(1983年デビュー)
    スズキエブリィ+(1999年デビュー)→エブリィランディ(2001年デビュー)
    三菱タウンボックスワイド(1999年デビュー)
    ダイハツアトレー7(2000年デビュー)

軽1BOXをベースに3列シートの多人数乗車のパイオニアがスバルドミンゴ。コンパクトで扱いやすく自慢の4WDと組み合わせてそこそこ人気となった

 軽規格の中で室内空間を最大限に持つ軽1BOXカーはラゲッジスペースも四角く非常に広い。

 その点にも注目し、軽1BOXカーのサンバートライに1Lの3気筒エンジンを搭載し(当時のスバルの軽は2気筒)、3列シートの7人乗りの小型1BOXカーとしたのが1983年登場の初代ドミンゴである。

 初代ドミンゴはなんとか7人が乗れる室内空間に加え、当時のサンバーに対し全長で230mm、全幅も35mmしか拡大されていないというコンパクトさを生かした機動力の高さも評価され、なかなかの成功を納めた。

 1994年には初代モデルと同じ手法で2代目モデルに移行したが、3気筒エンジンの古さに加え、1998年に軽の規格改正があったこともあり、ドミンゴは二世代で残念ながら姿を消した。

ミニバンブームを機にドミンゴが構築した軽1BOXベースの多人数乗車の再ブームを狙って投入されたスズキエブリイ+&エブリイランディ(写真はランディ)

 1998年の軽の規格改正後の1999年から2000年にかけてエンジンの搭載位置こそリアとフロントシート下という違いはあったものの、ドミンゴと同じ手法で軽1BOXカーをベースに小型1BOXカーとしたのがエブリィ+&エブリィランディ、タウンボックスワイド、アトレー7である。

軽1BOXのタウンボックスを大型化したのがタウンボックスワイド。ただし拡幅はオーバーフェンダーで対処したので室内スペースは変わらず

軽1BOXベースの多人数乗車モデルで最後発となったのがダイハツアトレー7。トヨタブランドではスパーキーの名前で販売された

 この3台は登場後にホンダモビリオやトヨタシエンタといったコンパクトミニバンが登場したことで、より広く乗用車的なコンパクトミニバンの台頭でベースとなる軽1BOXカーのフルモデルチェンジを機に絶版となってしまった。

 この種のクルマはその是非はともかくとして、軽1BOXカーから全長こそ300mm程度ストレッチされているものの、全幅はほぼ変わらず、ホイールベースは共通という小ささで7人乗りを成立させていた技術力というか根性に驚く。

 また日本ではもうないジャンルだが、インドではスズキがこの4台と同じコンセプトのイーコをいまだに販売しているのを見ると、新興国などではまだ需要があるようで、この4台がやってきたことが間違いではないことを強く感じる。

マルチスズキはインドでエブリイランディをイーコとして販売。日本では需要がなくなったモデルだが、インドではまだまだ需要が見込めるようだ

コンセプトまで異業種コラボ 

トヨタのWiLL戦略
デビュー:Vi(2000年デビュー)
     VS(2001年デビュー)
     サイファ(2002年デビュー)

モッコリした前後フェンダー+クリフカットによりエクステリアデザインはかぼちゃの馬車という表現がぴったりのWiLL Vi

 1999年から2004年にかけてトヨタ、花王、アサヒビール、パナソニック、近畿日本ツーリストなどによるWiLLと名付けられた異業種合同プロジェクトがあり、トヨタはトヨタ主導で開発したWiLLブランドのクルマも販売した。

 第1弾は2000年登場のWiLL Viで、これはズバリ初代ヴィッツをベースにしたシンデデラのカボチャの馬車をモチーフにしたコンパクトカーである。

 第2段となる2001年登場のWii VSは当時のカローラランクスをベースに、ステルス戦闘機をモチーフとした内外装に仕立てたモデルだった。

デザインはステルス戦闘機というWiLLブランドで最初で最後のスポーツモデルとなったVS。現在も中古車として売られているが、目立ち度は抜群

 第3弾として2002年に登場したWiLLサイファは初代ヴィッツベースの超個性的なデザインを持つモデルなのはWiLL Viと同じだ。

 しかしサイファは通信カーナビのG-BOOKや、現在のクルマのサブスクリプション(定額使用プラン)に通じるところもある携帯電話料金のように走行距離によって利用費が課金さされるカーリースを行うといった新しさもあった。

Viがかぼちゃの馬車のようなデザインなのに対し、サイファはハロウィンのかぼちゃのような雰囲気のデザインが与えられていた

 WiLLのクルマはサイファ以外内外装の個性が強すぎたのに加え、WiLLプロジェクト自体が解散となったため短命に終わった。

 しかしサイファのG-BOOKのように将来につながるものが残ったのは救いだった。WiLLシリーズはキワモノ的に盛られがちだが、先見性とチャレンジ精神が盛り込まれていたのだ。

キワモノのように見えるWillサイファだが、G-BOOKをはじめ通信系のパイオニア的存在だった。コネクテッドが注目されているように、先見性は確かにあった!!


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みんなのコメント

3件
  • 『エクサ(2代目KN13型)』と『コペン(現行)』の間に『AZ-1』を入れてあげてよ!

    「単なるガルウィングで目立とうとした軽」と思われがちだけど、実はアウターパネルが応力を受け持たない「スケルトンモノコック」と言う特殊なフレーム(メイン部材はペリメーター型)だった為、FRPの外板は着せ替えが可能だった。

    なんたって、外板自体が無くても走行ができるほどの剛性で、まるでレーシングカーのような本格的な作りだったという、正にバブルが生んだ鬼っ子なんだよね。
  • Viは2人で乗るのはいいけど後席が狭すぎた記憶が…VSは2ZZ-GE搭載グレードなら気持ちよく走れたけど後席の窓が小さくかつ高い位置にあるので後席に乗ると閉塞感が凄かった、最近だとC-HRの後席が近い感じかな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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