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ポルシェ356 バイ・エレクトロジェニックへ試乗 フラット4へ戻せる純EV化

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ポルシェ356 バイ・エレクトロジェニックへ試乗 フラット4へ戻せる純EV化

エンジンで走る356にも戻せる改造

今までフラット4エンジンが載っていた場所に、駆動用の電気モーターが収まった、ポルシェ356。このクルマを手掛けたのは、ロンドンから西に離れたオックスフォードシャー州を拠点とする、純EVコンバージョンを得意とするエレクトロジェニック社だ。

【画像】純EV化されたポルシェ356 エレクトロモッドのクラシックモデルは他にも 全89枚

このポルシェ356は、とあるオーナーの希望で作られたものだという。市街地でクラシック・モデルを運転したいものの、内燃エンジンがあまり好きではないという考えへ沿うように。恐らく、英国初の純EVコンバージョン、エレクトロモッドの356だと思う。

ただし、オリジナルの1.6Lフラット4も残されている。エンジンで走るポルシェに戻したいと、いつの日か再考した時に備えて。純EV化への改造は、可逆的に行われている。英国の場合、オリジナルの登録を保持するうえでも、その必要性がある。

純EVのシステムは、ベース構造を活かして搭載されている。その大部分は、シャシーへ手を加えることなく組み込まれている。そうしなければ、1963年式ポルシェ356のアイデンティティが失われてしまうだろう。

このエレクトロモッドが、極めて巧妙に実施されていることは間違いない。36kWhの容量を持つ駆動用バッテリーとインバーター、関連する機器類は、フロントの荷室を含む妥当なところへ振り分けてレイアウトされている。

一見するとオリジナルと変わらない美しさ

かつてのエンジンルームに搭載される、駆動用モーターの最高出力は121ps。以前と同じ、4速MTを介してリアタイヤを駆動する。

トランスミッションはシングルスピードのATを選ぶことも可能だが、自ら操りたいというオーナーの意見を尊重したという。純EVと聞くと重いクルマを想像すると思うが、車重はオリジナルから約35kgしか増えていないそうだ。

外から眺めている限り、通常の356との違いはわからない。充電ポートも、従来のフィラーキャップの裏側に隠されている。ホイールやタイヤ、車高もオリジナルのまま。ボディやインテリアも、初期のポルシェの雰囲気を湛えている。

メーターパネルを覗くと、燃料計がバッテリーの充電量を示すメーターに交換されている。目に見える違いといえば、その程度だ。航続距離は225kmが主張されているが、今回は短距離を走ったに過ぎず、実際の距離はわからない。

運転席まわりの環境は、元の通りシンプル。小さなドライバーズシートと、大きなステアリングホイールが組み合わされている。どこも美しく仕立てられており、腕の立つ専門家によってレストアされたばかりのポルシェのようでもある。

MTが残されたことで、ドライビング体験は純EVとしてもかなり独特。60年前のトランスミッションを傷めないように、エレクトロジェニック社は駆動用モーターの選定には気を使ったという。

4速MTでも変速する必要性はない

システムをオンにしたら、クラッチペダルを左足で踏み込む。シフトレバーで1速か2速を選んで、クラッチペダルを離す。この時点でクルマは動かない。そこからアクセルペダルを踏むと、356は発進する。

スピードが増すほどギアからのメカノイズが大きくなるが、面倒なら2速のまま走り続けることも可能。シフトアップするとしても、回転数を合わせる必要はない。

もちろん、アクセルペダルを低速で緩めてもエンストはしない。緩やかに惰性走行して、そのまま停止する。ブレーキペダルを踏めば、機械的なブレーキも作用して明確な制動力を得られる。

筆者は、オリジナルのポルシェ356を運転した経験がない。それでも、今回試乗したエレクトロモッド版は、ステアリングホイールの反応が正確で、惹き込まれる楽しさがあった。

ペダル類やステアリングホイールなど、操縦系の重み付けはバランスが良い。駆動用モーターはシームレスにボディを進め、とても運転しやすいとも感じた。

エレクトロモッドは約589万円から

エレクトロジェニック社が提供するエレクトロモッドのメニューは、3万8000ポンド(約589万円)から。だが、創業者のスティーブ・ドラモンド氏によれば、10万ポンド(約1550万円)を軽く超える金額が投じられるケースも少なくないという。

前例のないモデルの場合には手間が掛かるが、2台目以降の作業は簡単になる。ランドローバーのコンバージョン・キットは、2万5000ポンド(約387万円)で提供する予定もあるようだ。これは、必要な知識があれば社外でも組み込めるとのこと。

今回試乗したポルシェ356に要した費用は、5万4000ポンド(約837万円)。別のモデルや特注の内容なら、値段も変わってくる。

エレクトロモッドに賛否両論はあると思うが、オーナーは自らが望んだ美しいクルマを、より頻繁に運転するようになるという傾向はあるらしい。ガレージで眺めているだけより、良いことだとは思う。

ポルシェ356 バイ・エレクトロジェニック(欧州仕様)のスペック

英国価格:20万ポンド(約3100万円/ベース車両を含む)
全長:4010mm(標準356)
全幅:1660mm(標準356)
全高:1320mm(標準356)
最高速度:177km/h(予想)
0-100km/h加速:8.0秒(予想)
航続距離:225km(予想)
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:1000kg(予想)
パワートレイン:AC同期モーター
バッテリー:36.0kWhリチウムイオン(実容量)
最高出力:121ps
最大トルク:23.8kg-m
ギアボックス:4速マニュアル

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