■九州や四国で軽自動車のシェアが50%超え
近年、新車価格が軒並み上昇していることもあり、車両価格や維持費が安い軽自動車が人気を集めています。
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この人気の要因には、軽自動車の商品力が向上しているほか、公共交通機関が不便なエリアでの生活の足として活用されていることがありそうです。
全国的に見ると、新車市場における軽自動車のシェアは約40%といわれていますが、地域によっては50%以上にのぼるところも存在。
そんな軽自動車のシェアを都道府県別に見ていくと、50%を超える地域が西日本に集中していることがわかります。
走行しているクルマの2台に1台が軽自動車というのはかなりの占有率だといえますが、なぜ西日本では軽自動車が多く走っているのでしょうか。
一般社団法人 全国軽自動車協会連合会が公表している「軽三・四輪車県別保有台数と保有シェア(2022年3月時点)」をチェックしてみると、軽自動車のシェア率が50%を超えているのは、高知県(55.6%)、長崎県(55.4%)、和歌山県(54.4%)、沖縄県(54.1%)、島根県(53.4%)、鹿児島県(52.8%)、鳥取県(52.7%)、愛媛県(52.4%)、宮崎県(51.6%)、佐賀県(51.2%)の10県。
とくに九州と四国に集中しており、この10県以外でも、香川県と徳島県もシェア率は50%弱。大分県が約50%となっています。
逆に軽自動車のシェアが低いのは、東京都(21.5%)と神奈川県(27.2%)。北海道も札幌地区(29.6%)は低く、ほかのエリアもそれほど突出することもなく北海道全体では32.6%と低くなっています。
この傾向をさらに裏付けるキーワードがあります。それは「離合(りごう)」です。東日本ではあまり聞き覚えのないワードですが、西日本(とくに九州や四国)では当たり前のように使われる言葉だといいます。
離合の本来の意味は「鉄道の単線区間で、上りと下りの列車が駅や信号所などで行き違う」こと。これをクルマに置き換えると、狭い道でのすれ違いを意味しているのだとか。狭くカーブの多い山岳路などで対向車と出会い、「離合できんかもしれんな」というような使い方をするのだそうです。
離合は、軽自動車のシェアが高めの広島県(44.9%)や山口県(47.5%)でもよく使われており、西日本の道路事情を表しているワードのひとつであり、主要幹線道路はともかく枝道に入ると狭い道が多く、ギリギリすれ違うケースが多い道路事情を象徴しているといえそうです。
狭い道ですれ違うには小さいクルマのほうが扱いやすく、軽自動車が売れる理由のひとつとなりそうです。
■公共交通インフラが少ない地域では軽自動車が重要な移動手段に
徳島県出身のYさん(40代)に、軽自動車のシェアが高い四国の道路事情を教えてもらいました。
「四国に軽自動車が多いと思います。というのも、東京や神奈川のように大都市と比べて鉄道などの公共交通機関が充実していなからです。
四国を横断する道は多いのですが、中央に四国山地がある関係で縦断できる道は限られています。
そうなると、海岸線に近いエリアには道が増えるのですが、隣接する港町では道幅が非常に狭いところもまだまだ多いんです」
海沿いの狭く曲がりくねった道が多い四国では一般道も狭いことが多く、さらに公共交通機関である鉄道の路線や本数も限られているとなれば、日常の足としてクルマを利用する人が増えるのはもっともです。
普段は電車で移動できクルマ1台で用が足りてしまう都市部とは違い、1家庭で2、3台のクルマが必要なエリアも多いということでしょう。
複数台を所有するということは、クルマ関連の税金もそれなりの額になることから、税金も含め維持費が安い軽自動車が選ばれるのは必然といえそうです。
「私の地元は古い住宅も多く、各家がブロック塀などで仕切られているうえに道幅も狭いんです。
また農地のあぜ道なども道幅が狭いうえに曲がりにくいので、小回りが利く軽自動車を選ぶのはごく自然の成り行きといった感じでした」(徳島県出身 Yさん)
またYさんいわく、徳島県は少ないものの、高知県では軽自動車の「車庫証明」がいらない地域も多いそうです。
登録車は国土交通省が母体となる各地域の陸運局が管理していますが、軽自動車は各自治体での登録。つまり自治体の判断次第では車庫証明がいらない場合もあり、手続きが簡略化できることも、軽自動車が普及する要因のひとつかもしれません。
「軽自動車であれば駐車スペースも確保しやすいですし、維持費も安い。地元の徳島では1人1台は大袈裟ですが、2、3台所有している家も多いです。
地方では軽自動車は日常生活に欠かせない交通手段なんです」(徳島県出身 Yさん)
※ ※ ※
西日本で軽自動車が多い理由、それはその土地ならではの特性と道幅、公共交通機関の充実具合など各県の交通事情が関係しているようです。
そんな意味からも軽自動車の重要性と、進化してきた理由がよくわかります。今後間違いなく車種が増えそうな軽EVも、こういった地域では一気に普及するのかもしれません。
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