純EVでクロスオーバーのメガーヌ
執筆:Vicky Parrott(ヴィッキー・パロット)
<span>【画像】ルノー・メガーヌに純EVのクロスオーバー登場 競合モデルと比較 全118枚</span>
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)
純EVをお考えの方へ、新しい有力な選択肢がルノーから登場する。開発完了間際の状態ながら、今回試乗させていただいたクロスオーバー、メガーヌ Eテック・エレクトリックがそれ。
ルノー・メガーヌといえば、フランス生まれの由緒あるファミリー・ハッチバックの1台。今後数年間、メガーヌのPHEV版も並行して選べるが、こちらの場合はエンジンとガソリンタンクではなく、駆動用モーターとバッテリーが積まれている。
単にドライブトレインを入れ替えただけではない。クロスオーバー化され、ウエストラインが高められた。レンジローバー・イヴォーク風に。シャープなヘッドライトの中央に、新しくなったルノーのロゴがあしらわれる。かなりスポーティに見えると思う。
このスタイリングは、本来ならメガーヌ Eテック・エレクトリックの高性能仕様へ与えられるものだったらしい。ルノーでデザインを取り仕切る、ローレンス・ヴァン・デン・アッカー氏は次のように話している。
「誰もがこのデザインを評価していたので、標準モデルのスタイリングとして採用しました」。上級グレードでエッジの効いた20インチのホイールが標準装備されることも、その一端を示すものだろう。
この純EVがベースとするのは、電動パワートレインに最適化された、CMF-EVと呼ばれる最新のプラットフォーム。この構造を採用した初めての量産モデルとなり、ルノーの期待はいつも以上に大きい。
クラスで最も楽しいモデルになる可能性
メガーヌ Eテック・エレクトリックは、実容量が40kWhか60kWhの駆動用バッテリーを搭載する前輪駆動。WLTP値での航続距離は、300kmか470kmがうたわれる。
急速充電は、直流のDCで最大130kWまで対応。残量10%から80%まで、最短30分で充電できるという。40kWhのバッテリーの方が、許容する充電容量は小さくなると思われる。交流のACでは、共通して22kWまで対応する。
このメガーヌ Eテック・エレクトリックのメディア発表時、ルノーは「このクラスにおけるGTI」という表現を用いていた。身内のルノー・スポールではなく。引き合いに出されたフォルクスワーゲンは、うれしく感じないと思うけれど。
60kWhのバッテリーを積んだ試乗車を運転した感想として、真のホットハッチと呼ぶのは誇張気味かもしれない。だが、3万ポンド(465万円)から4万ポンド(620万円)の価格帯で選べる純EVのファミリーカーで、最も楽しいモデルになる可能性は高そうだ。
ドライブモードでスポーツを選ぶと、ステアリングホイールの操舵感は重みを増す。それでも、反応はクイックで軽快。フロントタイヤは、喜んでコーナーに飛び込んでいこうとする。
トラクションも感心するほど高く、右足で踏むアクセルペダルに対する反応も迅速。パワーの掛け具合で、直感的にコーナリングラインを調整していける。フィーリングはかなり良い。
比較的軽い車重が生む多くのメリット
静止状態から一気にアクセルペダルを踏み込み、218psの最高出力を解き放つと、フロントタイヤを空転させながら発進した。路面が湿っており滑りやすかったことは事実ながら、技術者は発売までに修正を与える予定とのこと。仕上がりを待とう。
乗り心地は感心するほど良い。このクラスでは、ベストにランクインできそうだ。一部の純EVでは処理しきれない、大きなバンプを超えた後の揺れ残りも感取されなかった。
橋桁の継ぎ目などを超えると衝撃が届いていたが、試乗車が履いていた20インチという大きなホイールも原因なはず。それでも、コーナリング時の姿勢制御には締りがあり、衝撃吸収性にも優れている印象だ。
この姿勢制御を叶えているのが、1624kgという純EVとしては比較的軽い車重。新開発となる、軽量な駆動用バッテリーとモーターの貢献が大きいのだろう。加えてドアパネルもアルミ製で軽い。
内燃エンジンを積むこのクラスのハッチバックと比べれば、300kg前後は重いことも事実。だが、58kWhの駆動用バッテリーを積むフォルクスワーゲンID.3より、約200kgも軽い。メリットが得られる違いだといえる。
軽快な操縦性や、良好な乗り心地だけでない。電費効率にも軽さは影響を与える。60kWhの駆動用バッテリーで470kmの航続距離をルノーは主張するが、例えば64kWhのバッテリーを積むキアeニロと同等の距離を走れることも、それを証明している。
エアコンには、新しいヒートポンプを採用。走行で生じる熱エネルギーを効率的に回収し、暖房に利用しているという。
この続きは後編にて。
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