三代目となるメガーヌR.S.は2018年8月30日に発売されたが、並外れて凄い走りを手に入れていたのだ。その凄さを3回にわたってお伝えしていこう。その2回目は搭載されたテクノロジーの詳解だ。
※関連記事:【新型メガーヌ ルノー・スポールの比類なき走り vol.1】三代目ルノースポールが開発の頭脳とともに日本にやってきた
ルノーメガーヌはCセグメントのハッチバックで、この3代目となるルノー・スポール(R.S.)は5ドアハッチバックとなって登場した。走りが魅力のR.S.ではあるが、これまでの3ドアからすれば、格段に使い勝手も向上する。
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4コントロール搭載
その新型メガーヌR.S.のハイライトのひとつが4輪操舵される「4コントロール」だ。リヤ操舵される新しい走りの世界だ。メカニズムとしてはシンプルで、リヤアクスルにタイロッドを装着し、アクチュエーターで動かす仕組みだが、各社が4輪操舵を取り入れてもなかなかしっくりくるモデルは少なかった。それは、瞬時の反応が可能なデバイスと、シミュレーション技術が投入できたことがこれまでと大きく異なっているからだ。
メガーヌR.S.はその4輪操舵を、ドライバビリティを追求するルノー・スポールモデルに搭載していることからも分かるように、ダイナミック性能の新しい世界観へのツールとして搭載してきたわけだ。リヤ操舵は同位相で1度、逆位相で2.7度の舵角を持ち、その切替えは車速が約60km/hで変わる。またレースモードを選択したときの切り替わりは100km/hに変更される。かつて経験した、4輪操舵は車庫入れが下手になる、ということはなく停車時と後退時はリヤ操舵しない。
いわずもがな、低速では回頭性があがり、小回りが効く。高速領域ではスタビリティがあがり、安定方向へと車両の動きが変わるというのが4輪操舵の狙いだが、その狙った通りに仕上がっている完成度の高さが今回のメガーヌR.S.の真骨頂だろう。
そもそもリヤが操舵されてしまうとなれば、ジオメトリーの設計自体が旧来の常識とは違う考え方で設計されなければならない。特にFFのメガーヌであれば、アッカーマンジャントー・ジオメトリーがあり、アンダーステアが出ない時点で、常識を覆すことになるわけだ。
このジオメトリーの設計には、シミュレーション技術の進化が大きな影響があったとルノー・スポールのテストドライバー、ロラン・ウルゴン氏は言う。また、リヤ操舵のタイミングの基本は、車輪速とフロントステアリングの操舵角をベースにデータがつくられ、ケースバイケースで転舵速度も加味されてリヤ操舵されるという。車両が限界を超えるような緊急事態などでも安定方向へ修正していく動きをするというわけだ。
4HCC搭載
この「4コントロ―ル」に組み合わされるサスペンションは、リヤはなんと、トーションビーム。FFのスタンダードなレイアウトでここまでの完成度には舌を巻く。一方、フロントは初代のR.S.から採用している「DASS(ダブル アクシス ストラット サスペンション)」式で、これは急加速や大きくストロークするような場面でも仮想キングピン軸が理想の位置になるジオメトリーのアイディアで、正確なハンドリングを可能にする技術だ。
このサスペンションに装備されるのがKYB(カヤバ)と共同開発した「HCC(ハイドロリック コンプレッション コントロール)ダンパー」を前後に装備している。これが第3世代となったメガーヌR.S.のもう一つのハイライトだ。
このHCCダンパーはセカンダリーダンパーを本体内に装備しているのが特徴で、基本はモノチューブ(単筒式)で、ダンパーのボトム部にオイル溜まりを作り、樹脂製のサブ・ピストンロッドがこのオイルを押し出すことで減衰を作っている。キーとなるのは、シリンダー壁に造られたオイル流路用のホール形状、ホール数そして、オイル粘度などだ。ちなみに歴代R.S.に使用されてきたダンパーはSACHS(ザックス)、オーリンズ、モンローといったところだった。
ちなみに装着されるタイヤも専用にブリヂストンと共同開発されている。タイヤサイズは245/35R19でポテンザS001。同じ名称のタイヤは多くあるが、メガーヌR.S.専用に開発したタイヤになる。また、装着されたタイヤブランドはこのブリヂストン1社だけである。
EDCの搭載
3つ目のハイライトがツインクラッチを初搭載したことだろう。メガーヌR.S.はスポーツモデルだけに、マニュアルトランスミッションのイメージが強いが、今回ゲトラグ製の6速EDC(DCT)を搭載した。5つのドライブモード(マルチセンス)を持つメガーヌR.S.には、新しいギヤレシオとシフトパターンを設定しており、スポーツドライブを思いのままに走れるというわけだ。
パドルシフトはルノーの哲学なのだろう、コラムポストに固定してあるタイプで、ニュルブルクリンでのタイムアタックには必須と言われるパドルシフトを手に入れたのだ。
気になるエンジンは、M5P型の1.8L直噴ターボで279ps(205kW)/390Nmというスペックだ。0-100km/h加速は5.8秒で、ニュルのタイムアタックを見るとFF最速には、350ps/400Nmあたりが基準になるという予測もあり、この少ない排気量、馬力でもコーナリング速度を稼ぐことで、記録を塗り替えるのかもしれない。
エンジンはシリンダーヘッドを新設計している。高い冷却効率を実現する強化構造のシリンダーヘッドとしている。ヘッド周りでは、DLC(ダイヤモンド ライク カーボン)処理された低摩擦表面処理を施したバルブ周りとしている。また、吸気量を増やすために、吸気経路に2つのエアダクトを追加し、新設計の大容量エアボックスを搭載している。開発にはF-1用エンジンのシミュレーション技術が投入されているということだ。タービンはツインスクロールターボで、低回転から大きなトルクを発生するタイプを従来から搭載している。
ドライブモードは5つあり、メガーヌR.S.ではこのモードを「マルチセンス」と呼んでいる。コンフォートモードは、燃費を優先したモードで、ニュートラルがいわゆるノーマルモードだ。そしてスポーツ、レース、パーソナルの3つがある。
スポーツでは、アクセルレスポンス、やステアフィールを重くすることの他に、エンジン音の演出、そしてESCの介入が遅めになる。レースモードでは、クローズドコースでの使用が前提とされるモードで、ESCは完全解除される。そして4コントロールもアジリティを優先した高速走行用の設定に変更される。パーソナルは、個々の設定をできるモードで、他車で言うところのインディビデュアルとイコールだ。
スポーツドライビングアイテム
メガーヌR.S.には専用のブレーキも装備される。フロントにブレンボ社製の4ピストンのモノブロックキャリパーを採用し、ブレーキローターは先代のメガーヌR.S.より+15mm拡大し、355mmとしている。リヤはZF製(TRW)のワンピストンキャリパーを採用している。
これまでのメガーヌR.S.にも採用してきたスポーツドライビングのための装備も継承している。ワンタッチでマルチセンスの「レースモード」へ切り替わる「R.S.ドライブ」ボタンを装備し、ロケットスタートが可能なローンチコントロールも装備する。停車時に左足でブレーキペダルを踏み、右足でアクセルペダルを床まで踏み込む。するとエンジンは3000rpmでキープされ、ブレーキペダルを離すとトラクションコントロールを働かせながらが、駆動スリップせずフル加速する装備だ。
また、マニュアルモードで走行中にブレーキペダルを踏みながら、左のパドルシフトを引き続けると、車速に応じたギヤへ自動でシフトダウンする「マルチシフトダウン」を装備。そして駆動輪の回転差を常時監視し、大きな回転差を検知するとブレーキをかけて姿勢コントロールする「R.S.デフ」も装備している。
次回のvol.3では、実際にハンドルを握り、走行したインプレッションをお伝えします。
価格
・車両価格:メガーヌ ルノー・スポール 440万円(税込)
スペック
・全長:4410mm
・全幅:1875mm
・全高:1435mm
・ホイールベース:2670mm
・エンジン:M5P型1.8L直噴ターボ
・出力:279ps(205kW)/390NM
・ミッション:6速EDC(DCT)
・フロントサスペンション:ダブル アクシス ストラット
・リヤサスペンション:トーションビーム
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