2022年3月9日、ドイツ・ハンブルクで往年の名車ワーゲンバス(タイプ2)のコンセプトを受け継いだEV「ID.Buzz」のワールドプレミアが開催された。
EVコンセプトモデルとして2017年のデトロイトショーで公開されて以来、4年の開発期間を経て、晴れて正式発表されたID.Buzzの詳細をお届けする。
「ワーゲンバス」がEVで復活!? ついに発表されたVW ID.Buzz
※本稿は2022年3月のものです
テキスト・解説/木村好宏、試乗/グレッグ・ケーブル(Kimiura Office)、写真/Volkswagen、Kimiura Office
初出:『ベストカー』2022年4月26日号
■あの「ワーゲンバス」の面影が!!
後席用ドアにスライドドアを採用するミニバンスタイル。ワーゲンバスをイメージさせる2トーンカラーも特徴
フォルクスワーゲンは、ビートル(タイプ1)と並んで長く同社のアイコンであったワーゲンバス(タイプ2)のEVコンセプトを2017年のデトロイトショーで公開した。
その後、4年間の開発を終えて、今回ドイツのハンブルクで市販モデル「ID.Buzz」のワールドプレミアが開催されたのである。
今年秋からドイツで出荷が始まるID.Buzz量産車のプラットフォームはEV専用のMEBで、フラットなフロアのリアにモーターを搭載するレイアウトは、偶然にもワーゲンバスとそっくりである。
2トーンカラーのボディデザインはコンセプトモデルに近いが、フロントにわずかだが段差があるシンプルなワンボックスで、メッキのお化けのような日本製ミニバンとは趣味のよさで一線を画す。
装飾は少なく、わずかにバンパースカート部分にメッシュグリルでアクセントが付けられている程度だ。
ボディサイズは全長4712mm、全幅1985mm、全高1937mm、そしてホイールベースは2988mmとなる。これはワーゲンバスを起源に持つ現行型マルチバン(T-7)よりもひと回り小さい。
そのために空気抵抗Cd値はマルチバンより0.015低い0.285。しかしフラットなフロアによって室内空間は広々としており、5人乗り2列バージョンの積載容量は1121L、最大で2205Lを確保する。
リアに搭載されたモーターの出力は150ps/31.6kgmで、およそ2.3トンのボディを0-100km/hまで10秒前後で加速させ、最高速度は145km/hに達する。航続距離400kmといわれるバッテリーの容量は77kWh。
充電時間はAC充電で8時間15分、170kWのDC急速充電では80%までおよそ30分といわれている。
■プロトタイプに試乗!
ワールドプレミアに先立ってプロトタイプに試乗した
このワールドプレミアに先立って試乗したプロトタイプは2列シートの5人乗りで、虹色のようなカムフラージュをまとっている。
すでに発売されているクロスオーバーのID.4よりもさらに26cm高いシートに乗り込むと、ワイドなフロントウィンドウによって前方は大きく視界が広がる。
ドライバーの正面には5.3インチの小さなディスプレイ、そしてダッシュボードには12インチのタッチ機能付きモニターがレイアウトされている。
インテリアの仕上げは良質で、カラートリムで華やかさを演出している。
ドライブモードは、ステアリングコラムから伸びたレバーで「D:ドライブ」と「B:バッテリー」が選択できる。
前者はメカニカル抵抗を減らしたセーリング、後者は回生を活発に行う。
スタートは通常のEVに比べるとやや緩慢だが、電気モーター特性のおかげですぐにトルクが立ち上がり、市街地では問題なく交通の流れに乗ることができる。また11.1mの回転直径のおかげで取り回しや駐車を容易にしている。
アウトバーンでのおよそ130km/hの巡行速度では空気抵抗を感じるが、乗り心地はフラットで快適である。
意外だったのはワインディングロードでの安定したロードホールディングで、これも床下におよそ400kgの電池がレイアウトされているための、低重心によるものだ。
このID.Buzzの価格はまだ発表されていないが、およそ6万3000ユーロ(約805万円)からと予想され、ドイツおよび欧州では今年の5月から予約注文が開始、秋から出荷が始まる。
日本での価格や発売時期はまだ明らかにされていないが、おそらく2024年のアメリカでの発売に続くものと思われる。
【番外コラム】日本はID.4が今年上陸予定
日本には2022年導入予定のID.4
VWの電気自動車、IDシリーズは、コンパクトハッチのID.3、SUVのID.4とID.5がすでに市販化されていて、ID.Buzzは第4弾。日本へは最初に今年、ID.4が導入される予定。
VW ID. Buzz プロトタイプ 主要諸元
申込み最短3時間後に最大20社から
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TYPE-IIのようなデザイン的魅力を感じない。