ピュアな内燃機ランボルギーニを駆る
今回のランボルギーニ本社を中心とした視察ツアーの主題はもちろん「サステナビリティ」にある。だがもちろん、ランボルギーニのプロダクションカーをドライブする機会にも恵まれた。
【画像】知ってる? ランボのサステナビリティ活動 養蜂・予熱活用・緑の庭園【カーボンニュートラル】 全60枚
ランボルギーニのホームタウンであるサンターガタの田舎道には不釣り合いにも見えるが、しかしウラカンSTOやウルス、そしてアヴェンタドールといった一連の尖った時代のスーパーカーはこの街の特産品なのである。
中でも特に印象的だったのはウラカンSTOとウラカン・テクニカという熟成されたウラカンから派生したスペシャルモデル達だった。
紫メタリックにイエローの差し色が入ったウラカンSTO。このクルマはサーキット由来のテクノロジーが詰め込まれた1台である。
今回のドライブ体験は試乗というより山の頂上に建つホテルと本社工場間の移動といったかたちなのだが、ウルスで先導してくれるテストドライバー氏が容赦なく飛ばして走ってくれる。このため隊列があっという間に崩れ、路肩で待つ羽目になるのだがそれでもテストドライバー氏は少しもめげない。「ランボルギーニでゆっくり走って何の意味がある?」とでも言いたげな表情である。
以前日本の公道で試乗した際も明らかなダウンフォースを感じさせてくれたウラカンSTOの印象はイタリアのオープンロードでも変わらない。RWDモデルなのでウェットだったらどうかわからないが、ドライの路面では全くもって盤石なのである。
路面に張り付き、意のままに操れる。だがそんなSTOより光り輝いて見えた1台があった。初めてドライブするウラカン・テクニカである。
ウラカン・テクニカはV10の集大成
先のヴィンケルマン社長の宣言を振り返れば、2022年にデビューしたウラカン・テクニカは純粋なガソリン・エンジンによるランボルギーニ・スーパーカーの最後を飾るモデルの中の1台と言える。
V10ランボの集大成ともいえるウラカン・テクニカの成り立ちは非常に魅力的だ。ミドシップRWDと自然吸気V10エンジンの組み合わせという点でも、今という時代を考えれば信じられないような組み合わせだし、サーキット狙いのSTOを公道用にアジャストしたような成り立ちも魅力的だ。
実際に派手なウイング類が異彩を放つSTOを試乗した後にテクニカをドライブすると、身のこなしがはるかに軽快で、コーナーではごく自然なロールも許容するのである。
もちろん最新のランボルギーニのロールは角度的には微々たるもの。とはいえそこまで飛ばして走っていなくてもクルマの挙動をドライバーに伝える能力は図抜けている。
ラナバウトを這うように回りつつ、脱兎のごとく加速する。ミドシップの回答性と情報量豊かなハンドリング、そして右足に吸い付くようにリニアに吠える自然吸気V10エンジン。ウラカン・テクニカはその名が示す通り、まさに純粋な“ガソリン・ランボ”の技術の結晶と言える出来栄えだった。
刺激的なドライブ体験の末に到着したのは、ランボルギーニが所有する緑の庭園。その名もランボルギーニ・パークだった。
徹底的にドライビングを楽しんだ後は、余計なCO2は排出することなく未来のサステナビリティを学ぶ。現代のランボルギーニらしいハレとケの精神がそこに込められているように感じられた。
ランボ印のハチミツ、目的は別にある?
2011年からランボルギーニが所有し整備しているランボルギーニ・パークは本社のすぐ近くにある森のような一角。そこには1万本のオーク(楢の木)が植えられ、年間330トンのCO2を吸収している。
また森の中ではミツバチの巣箱が13箱置かれ、60万匹のミツバチたちが暮らしている。ここで採れるハチミツは年間500kgにもなる。
だがランボルギーニは自分たちの工場や生産車から発生したCO2を、この小さな森だけで吸収できると考えているわけではもちろんない。またハチミツを売って儲けているわけでもない。彼らはボローニャ大学や専門家たちと協力して、自然環境を調査する目的でパークを活用しているのである。
楢の木は、最も効率よくCO2を固定するための植樹の間隔を調べる目的がある。一方ミツバチは巣箱への出入りをカウントすることで工場の周囲の空気汚染の状態を調べるために飼っているのだという。ここで集められたデータは、イタリアはもちろん、文字通り地球の環境を守るために活かされていくことになる。
2011年にスタートしたランボルギーニ・パークの試みは、今年で12年目。だがこれは終わりのない旅でもある。
ランボルギーニは内燃機関をモーターに置き換え、生産のためのフットプリント全体を見直すという事業計画の他に、自然環境を守るための地道なアクションを自ら率先して行っている稀有なスーパーカー・ブランドといえる。未来のスーパーカーは刺激的なだけでなく、クリーンでなければならない。彼らのカーボンニュートラルに対する取り組みには心底驚かされることが多かった。
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