一時は多くの高級車に搭載された直列6気筒エンジンに、いま自動車メーカーが注目している。メルセデスやランドローバーを筆頭に、新しい直列6気筒エンジンを開発する動きが盛んになったのはなぜか?
直列6気筒エンジン衰退の理由
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かつて“高級なエンジン”の代名詞として栄華を誇った直列6気筒エンジンはいったん下火になり、最近になって息を吹き返している。トヨタには「クラウン」や「マークII」、「2000GT」、初代「ソアラ」などが搭載したM系があり、その流れを受け継いだG系やJZ系といった直列6気筒エンジンがあったものの、2000年代にV型6気筒のGR系や、直列4気筒のAR系に引き継がれて消滅している。
日産には中東向け「パトロール」(大型SUV)用の4.8リッター直列6気筒ガソリン自然吸気エンジンが残っているものの、乗用車用はとっくにV型6気筒に置き換わっている。かつて、スカイラインといえば直列6気筒だったが、2001年に発売された11代目からはV型6気筒エンジンを搭載する。
周囲がV型6気筒や直列4気筒になびくなかで、直列6気筒を守り続けてきたのはBMWくらいのものだ。しかし、そのBMWも主力エンジンの座を直列4気筒ターボに譲り、直列6気筒(ターボ過給が基本)はもっぱら高性能エンジンとして命脈を保っている。変わり種として、ボルボが一時期直列6気筒を横置きに搭載していたが、現在は直列4気筒と直列3気筒しか持たない。
なぜ、直列6気筒エンジンは激減したのか? 理由のひとつは厳しくなった衝突安全基準だ。前面衝突試験の車速が高くなったうえ、オフセット衝突が試験項目に追加されたため、車両の前端部分にクラッシャブルゾーン(衝撃を吸収する部分)を設ける必要が出てきた。
長さのある直列6気筒エンジンを搭載すると、クラッシャブルゾーンを確保するのは厳しい。V型6気筒にすればエンジン全長が短くなるため、クラッシャブルゾーンを確保でき、衝突安全基準をクリアしやすくなった。くわえて、V型6気筒であれば横置きレイアウトのFWD(前輪駆動)車ともエンジンを共用できて都合がよかった。さらにVバンク角を90度にすればV型8気筒エンジンとも設計を共用できる……これらの理由によって、直列6気筒エンジン搭載モデルは大幅に減った。
直列6気筒復活の理由
ところが最近、直列6気筒エンジンが見直されている。メルセデスは「M112」、「M272」、「M276」と3代続けてV型6気筒ガソリン・エンジンを作り続けてきたが、2017年に直列6気筒エンジンを復活させた。「M256」という名称で、排気量は3.0リッター。新開発の直列6気筒エンジンとしては1989年の「M104」以来になる。日本には、「S450」に搭載されて2018年に導入された。
直列6気筒エンジンの復活理由のひとつは、技術の進歩だ。シミュレーションによる構造解析などが進歩したため、エンジン長が長くても衝突安全基準をクリア出来るようになってきた。
ちなみにM256エンジンの全長は533mmであるが、これは従来の直列5気筒と同等だ。なぜか? たとえばM276エンジンの場合、シリンダー間の壁の厚さは18mmであるが、M256の壁の厚さは7mmしかない。最新エンジンは、各所にさまざまな工夫を施した結果、エンジン長を短く出来たのだ。
直列6気筒への回帰を後押しする理由はまだある。直列エンジンならシリンダーヘッドは1個で済むものの、V型エンジンの場合はシリンダーヘッドが2個必要だ。最近のエンジンは可変バルブタイミング機構(VVT)が当たり前のように付いている。V型の場合は直列の倍必要で、コストは倍になる。カムシャフトの数も倍必要だし、触媒の数も倍だ。
ガソリン・エンジンの排ガス規制が厳しくなる一方で、三元触媒に加えてGPF(粒子状物質フィルター)が欠かせなくなっている。GPFは煤を捕集する装置で、ディーゼルでいう「DPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)」のガソリン・エンジン版だ。リーン燃焼するコンセプトの場合はNOxを浄化する触媒も必要で、V型エンジンは高価な後処理装置のセットが直列の倍必要になる。つまりV型6気筒から直列6気筒への回帰は、コスト削減のためでもある。
マツダも直列6気筒エンジンを開発へ
直列6気筒への回帰によってユーザーが五感で恩恵を感じられるのは、振動やサウンドだ。V型6気筒エンジンは燃焼にともなって発生する振動があるものの、直列6気筒(とバンク角60度のV型12気筒)は完全にバランスするため、慣性力の不釣り合いによる振動は発生しない。スムーズに回転するさまを“シルキー”と、表現する人もいる。これこそまさしくドライバーがダイレクトに感じられる直列6気筒のありがたみだ。
ジャガー・ランドローバーは2019年から、先に投入した直列4気筒エンジンと共通コンセプトの直列6気筒(直列4気筒に2気筒プラス)を投入しはじめた。「インジニウム6」と名づけられた新世代の直列6気筒を搭載した「レンジローバースポーツHST」は、直列6気筒らしさが味わえる格好の1台だ。
マツダは、2020年11月9日に開いた「2021年3月期 第2四半期 決算説明会」で、“ブランド価値向上への投資”として2022年度までに直列6気筒エンジンを開発すると発表した。それも、ガソリン、ディーゼル、スカイアクティブX(火花点火制御ガソリン圧縮着火)の3種類を一気に開発するという。マツダにとって初めての乗用車用直列6気筒エンジンだ。新開発するRWD(後輪駆動)プラットフォームに搭載するとのこと。
開発中の直列6気筒エンジンはマツダのブランド価値を高めるのが狙いであるものの、エンジン効率を高めるためでもある。2.0リッターの4気筒をベースに2気筒増やし、3.0リッターにすると思われるが、増やした排気量は燃費のために使うという。大排気量=パワー一辺倒と考えるのは、マツダにいわせれば「古い」ということになる。おそらく、リーン燃焼を取り入れてくるのだろう。直列6気筒エンジンへの回帰があちこちで進んでいるが、昔のようにパワー至上主義に戻るわけではないのだ。
文・世良耕太
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みんなのコメント
いい音がする。 あと直6はノーズが長いから
車のスタイルも好き。
画像の新4は、横からみるとかっこいいが、フロントから見ると残念な感じになってしまった。
これが8気筒になると、直列8気筒というのは、長すぎて振動面でも不利なので、
トラック、重機、鉄道車両などのディーゼルエンジンなら直列8気筒もあるが、
乗用車向けのガソリンエンジンはV型8気筒と言う事になる。