ゴールデンウイークの短期集中連載企画として、日本のスーパーカーブームを築いた1970年代のスーパーカーを紹介していきたい。今回は、スーパーカー・ブームの名脇役?だったマセラティ・ボーラだ。(ホリデーオート2019年11月号別冊付録より)
4.7LのV8を搭載したマセラティ初のミッドシップ2シーター
「MASERARI Bora:マセラティ・ボーラ」
1970年代のスーパーカー図鑑(1)「ランボルギーニ カウンタック」
スーパーカーブームの頃、フェラーリ、ランボルギーニとともにイタリアン・スーパーカーを送り出していたのがマセラティだ。
その花形モデルのボーラは最高速が280km/hということもあって、やや迫力よりも優雅さがウリと見られていた。ボーラは外観も落ち着いていたので、ひと言でいえばライバルより大人の存在だったといえる。
当時のスーパーカーはほとんどが戦後生まれの新興メーカーから登場した。だがマセラティは戦前からの歴史を持つ名門の老舗であり、品格を備えていた。
ただし古いだけあって、板バネの固定式リアサスペンションなど、旧式な設計をひきずっていたのも確かで、それが一転、最新式の設計を採用して登場したのがボーラだったのだ。
発表は1971年だが、その設計はさすが実績のある一流メーカーだけあり、時流に即した新しい方式で手堅くまとめていた。
基本はモノコックにサブフレームを組み合わせ、その上にエンジン、駆動系などを載せている。サスペンションは前後ダブルウイッシュボーンである。
エンジンは手持ちのV8ユニットをオーソドックスに縦置きミッドシップ搭載し、当初は4.7Lだが、のちに4.9Lも加わった。
手堅さはパッケージングにも表れており、車体はライバルよりやや大きく重く、ホイールベースも長めの2600mmだったが、そのぶん乗員スペースは余裕がありフロントには大きめの荷室も確保された。
エンジン上方はカーペットで覆われた上、キャビンとガラスで隔たれミッドシップカーながら騒音が低く抑えられていたのも特徴のひとつだった。
その文化的ともいえる性格を決定的に印象付けているのはスタイリングで、イタルデザインを立ち上げて間もないジョルジェット・ジウジアーロが担当した。
当時は新進気鋭だったジウジアーロだが、この頃までに既に多くのスーパーカーの試作車や市販車を手がけており、それらはまさに切れ味鋭い前衛的作品が多かった。しかし、ボーラでは余裕の気品のようなものも感じられ、大人のスーパーカーといえた。
もちろんスーパーカーにお約束の、地を這うようなファストバックボディのシルエットをしっかり見せていたが、破綻のないバランスのとれたプロポーションも見どころだった。
戦後のマセラティはセレブリティの御用達となる実績があり、ボーラもその商売実績を活かすように、最大の顧客の待つアメリカへの輸出対応がしっかり行われていた。
しかしながらマセラティ社の経営状況が悪化、生産台数は500台少々にとどまり、1978年で生産を終了した。
ボーラの弟分として、1972年に発表されたのがメラクだ。基本はボーラと同じボディながらエンジンは3LのV6を搭載し、空いたスペースにプラス2のリアシートを設けた。メラクは1983年までに約1800台が生産された。
マセラティ・ボーラ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4335×1768×1134mm
●ホイールベース:2600mm
●重量:1080kg
●エンジン:V8 DOHC
●排気量:4719cc
●最高出力:310ps/6000rpm
●最大トルク:47.0kgm/4200rpm
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:縦置きミッドシップRWD
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