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もはやリアルとゲームの区別がつかない驚きのクオリティ。『グランツーリスモSPORT』

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もはやリアルとゲームの区別がつかない驚きのクオリティ。『グランツーリスモSPORT』

『グランツーリスモ』は、リアルなグラフィックと操縦性により、世界中で愛されているレースゲームの代表格。1997年にPlayStation®専用タイトルとして発売されたのを皮切りに、シリーズ累計出荷数は7699万本にも達しています。そして誕生20周年の節目となる2017年10月19日に、PlayStation®4専用タイトルとして待望の『グランツーリスモSPORT』が発売されました。そこで初代『グランツーリスモ』以来、すべての歴代タイトルを走りこんできた筆者が、新たに『PlayStation®4 グランツーリスモSPORT リミテッドエディション』を購入。その驚くべき進化を体験してみました。<レポート:北沢剛司/Koji Kitazawa>

鳴り物入りで登場した新作の印象は?

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前作の『グランツーリスモ 6』の発売から4年あまり。シリーズ初のPlayStation®4タイトルとなった『グランツーリスモSPORT』は、従来の『グランツーリスモ』シリーズに比べて、モータースポーツの楽しさに焦点を置いた作品となり、オンラインレースも楽しめるようになったのが特長です。もともと美しさで定評のあったグラフィック面は、今回4世代目として新たに作り直したため、大きく進化。かつてないクオリティに達しています。

ただ、発売前の情報で私が残念に思っていたのは、収録車種が大幅に少なくなったこと。前作の『グランツーリスモ 6』では実に1200台以上の収録台数を実現していたのに対し、『グランツーリスモSPORT』ではわずか162台に過ぎません。しかも収録車種は現代のクルマが多く、いわゆる旧車のラインアップが大幅に削られていました。『グランツーリスモ』の魅力は、街中で見かける身近なクルマからレジェンド級のヒストリックレーシングカーまで、世界中のさまざまなクルマをドライブできることにありました。その魅力を失ってしまった本作は、果たしてどのような作品になってしまうのか、ちょっと想像がつかないというのが事前の印象でした。

しかし、実際にプレイしてみると、車種のことなどを忘れてしまうような実車そのものの運転感覚にまず驚きました。『グランツーリスモ』における車両の動きは、当初から徹底して運動物理の法則に従っているのが特長です。例えば、上手にコーナリングするためには、実車と同じようにコーナー手前でしっかりブレーキングし、前輪に荷重をかけた状態でステアリングを切っていく必要があります。『グランツーリスモSPORT』ではその再現度がさらに向上し、ラフな運転操作ではレースに勝つことができません。

ただ、車両の挙動をあまりにも現実と同じにしてしまうと初心者には難しいものになってしまうため、『グランツーリスモSPORT』では誰にでもスポーツドライビングの楽しさを楽しめるよう、自動でブレーキとステアリングをアシストしてくれるモードも装備。これにより幅広いユーザー層に適した内容になっています。

従来の常識が通用しない

『グランツーリスモ』をプレイするとき、これまで筆者はずっと標準のコントロールパッドを使用し、ステアリング、アクセル、ブレーキの操作をボタンで行なっていました。ボタン操作の場合、入力はON/OFFしかないため、大きく回り込むような高速コーナーでは、ステアリングとアクセルのボタンを断続的に押すことでコントロールしてきたのです。しかし、今回の『グランツーリスモSPORT』では車両の挙動がこれまで以上にセンシティブになり、アイルトン・セナの「セナ足」ならぬ「セナ指」テクニックがもはや通用しないレベルになっていました。

そこで長年親しんだ親指でのボタン操作から、アナログ操作が可能な人差し指でのトリガー操作に切り替え、微妙なアクセルワークができるようにしたのです。ステアリング操作についても、PlayStation®4のワイヤレスコントローラー「DUALSHOCK®4」はモーションセンサーに対応しているため、スマホのレースゲームのようにコントローラーを左右に動かしてステアリング操作を行なうことにしました。このモーションセンサーは秀逸で、コントローラーを実車のステアリングのように動かせば、ダイレクトに車両が反応してくれます。もちろんカウンターステアにも瞬時に反応してくれるため、運転している感覚がこれまで以上に高まりました。

首都高バトルが楽しめる新コース

『グランツーリスモSPORT』では、新たに首都高速をイメージした新コースが収録されてことも大きなトピックです。コース自体は架空の設定ながら、コースの端々に見慣れた光景が現れて、気分を大いに盛り上げてくれます。

現時点では前作に比べるとコースの数が少ないため、どうしても物足りなさを感じてしまいます。ただ、今後はダウンロードによりコースが追加される予定なので、人気の高かったル・マンやスパ・フランコルシャンなども再録されることでしょう。

お気に入りのクルマを自由に撮影

『グランツーリスモSPORT』の楽しみはスポーツドライビングだけではありません。お気に入りのクルマをお気に入りの舞台で撮影することができます。愛車の撮影モードはすでに『グランツーリスモ 4』から搭載されていますが、今作では新たに「スケープス」として機能を大幅に拡充。世界各地で撮影されたさまざまな風景の中にクルマを配置して写真を撮影できます。

もちろんこれとは別に、リプレイから好きな場面を選んで撮影することも可能。通常では撮れないような風景にクルマを溶け込ませたり、ダイナミックな流し撮りを行なったりして、クルマのさまざまな表情を撮影できます。

さらにクルマのカラーリングを変えたりデカールを追加できる「リバリーエディター」モードもあり、アニメなどのキャラクターデータを取り込んで痛車を製作する猛者も現れています。自分でデザインしたクルマでゲームを楽しめるとあって、レースとは別の盛り上がりを見せています。

オンラインレースでこれまでにない緊張感を体験

メインコンテンツとなるレースでは、オフラインで自分の好きなときにAIと戦ったり、2プレーヤー対戦、VRツアーを楽しめる「アーケード」と、公式レギュレーションに従って他のプレイヤーと競う、オンラインの「スポーツモード」が用意されています。「アーケード」ではこれまでと同様に自由な走行ができるため、気分転換にスポーツドライビングを楽しむことができます。一方、オンラインレースの「スポーツモード」では、毎日開催されるデイリーレースに加え、FIA公認のチャンピオンシップを用意。参加している国・地域の代表を目指してシリーズチャンピオンを目指すこともできます。

オンラインレースのライバルは、世界各地で同時にプレイしている人間です。そのため、コンピュータのAI相手とは違い、ミスが許されずやり直しが効かないという独特の緊張感があります。そして車両とコースの表現があまりにもリアルなので、リアルとバーチャルの区別がもはや分からなくなってしまうのです。そのため、筆者もオンラインレースを初めて体験したとき、思わず手が震え、心臓の鼓動が高くなりました。このドキドキする感覚はまさに本物のレースそのもの。もちろん、ゲームでこのような体験をしたのは生まれて初めてです。

そしてレース中に他車に接触したときには、金属が凹むような「ボコン!」というリアルな音が再現されているため、臨場感がさらに高まります。そして「スポーツモード」では、傍若無人な走りをするプレーヤーはどんなに成績が良くてもステータスが上がらないしくみになっています。実車と同様に他車にぶつけないよう注意する必要があるため、ぶつけ放題のレースゲームにはない緊張感があります。フォーメーションラップが始まった瞬間に心臓がバクバクする感覚は、人間同士がやっていることの良さに他なりません。その衝撃的な体験は、『グランツーリスモ』をはじめてプレイしたときの感動を超えたといっても過言ではないでしょう。

東京モーターショーでコンセプトモデルを世界初公開!

ところで、10月28日から11月5日にかけて一般公開された東京モーターショー 2017では、『グランツーリスモ』から新たな新型スポーツカー「イソリヴォルタ ザガート ビジョン グランツーリスモ」が発表されました。その名の通り、かつてのイタリアの名門イソ社が1960年代から70年代にかけて製作したGTモデル「イソ・リヴォルタ」の名前を現代に復活させたもの。設計はイタリアの名門カロッツェリアであるザガートが担当しています。

今回の「イソリヴォルタ ザガート ビジョン グランツーリスモ」では、往年のイタリアンスポーツカーの定石といえる名門ブランドとカロッツェリアのコラボレーションが『グランツーリスモ』というバーチャルなプラットフォーム上で実現したことが最大のトピックでした。現代のイタリアンスポーツカーは自社製作されることが多くなったため、かつて栄華を極めたカロッツェリアとのコラボレーションはほとんど見られなくなっています。そんな状況のなか、バーチャルな世界において往年のスポーツカーが新たに息を吹き返したということは、これまでにない意義が感じられます。

『グランツーリスモ』はカー・エンターテイメントのプラットフォーム

会場では『グランツーリスモ』シリーズ・プロデューサーの山内一典氏にお話を訊く機会があったため、「ビジョン グランツーリスモ」の意義と新作『グランツーリスモSPORT』について尋ねてみました。

2013年に「みなさんが考える、グランツーリスモをデザインしていただけませんか?」という山内氏の一言から始まった「ビジョン グランツーリスモ」。もともと『グランツーリスモ』の15周年記念プロジェクトとして開始されたこの試みに世界の自動車メーカーやカロッツェリアなどが賛同し、現在多くのメーカーが『グランツーリスモ』向けのスポーツカーを発表しているのは周知の通りです。

山内氏によれば、『グランツーリスモ』は走りの感動を未来に続けていきたいという思いで製作しているため、単に過去の遺産を引き継ぐ役割だけではなく、未来を方向づけていく必要性を感じているとのこと。そしてモータースポーツやスポーツカーを少しでも世の中に残していくためには、新しいフォーマットや伝え方が必要で、今それを模索しているのが『グランツーリスモ』とのこと。

現実世界では実現が難しいスポーツカーを商業的な制限なしに実現するという意味において、「ビジョン グランツーリスモ」は特にデザイン面において実車の世界に大きな刺激を与えています。そして現実のモータースポーツはお金がかかりすぎるため、裕福な御曹司以外の若者は入りにくい世界になっていることも事実です。その意味では、多くの人々がスポーツカーやモータースポーツを気軽に魅力を楽しめる『グランツーリスモ』の役割は、ますます重要になっていきそうです。

現在はローンチしたばかりの状態のため、今後、収録車種やコースが追加されれば楽しみの幅が広がりそうです。また、プロデューサーの山内氏も実際にオンラインレースで走っているため、レーシングドライバーやクルマ好きの有名人たちとオンラインレースで一緒に戦える可能性もあります。『グランツーリスモSPORT』は、カー・エンターテイメントのプラットフォームのひとつとして、今後注目すべき存在となることでしょう。

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