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池沢早人師、21世紀の狼「アルピーヌ A110S」を駆る!【第6回:vs GRスープラ編】

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池沢早人師、21世紀の狼「アルピーヌ A110S」を駆る!【第6回:vs GRスープラ編】

ALPINE A110S × GR SUPRA SZ-R × Satoshi IKEZAWA

アルピーヌ A110S × GRスープラ × 池沢早人師

池沢早人師、21世紀の狼「アルピーヌ A110S」を駆る!【第1回:ファーストコンタクト編】

“風吹裕矢”と“隼ピーターソン”の対決が21世紀に実現

自動車漫画の草分け的存在であり、1970年代の後半に日本を席巻したスーパーカーブームの火付け役『サーキットの狼』。主人公である“風吹裕矢”がロータス ヨーロッパを駆りスーパーカーたちと壮絶なバトルを繰り返すストーリーは、ライトウェイトスポーツの魅力を日本中に伝え、今もなおその神話は生き続けている。そして現在「ロータス ヨーロッパの再来」と呼び声の高い近代ライトウェイトスポーツの雄がアルピーヌ A110S。ここではA110Sを主人公に、『サーキットの狼』の作者である池沢早人師先生がライバルとなりえる魅力的なスポーツカーを連れ出して徹底的に検証する。

今回、A110Sと共に連れ出したのは「GRスープラ SZ-R」。A110Sと時を同じくして復活を遂げた日本が誇る生粋のスポーツカーであり、主人公と同じ2.0リッターの排気量を持つ魅力的なモデルである。その実力やいかに?

17年の時を経て蘇ったスープラは現代版のトヨタ2000GTか!?

今回、アルピーヌ A110Sのライバルとして連れ出したGRスープラ SZ-Rのルーツを辿ると、トヨタの一時代を築いたセリカへと辿り着く。“ダルマ”と呼ばれたセリカから世代を重ね、1978年に登場したセリカXXを経て1986年にはトヨタ スープラ(※北米仕様と同じ名称のスープラに統一)としてセリカの名前が外された。

A70型として人気を博したスープラは当時のグループAレース(全日本ツーリングカーレース選手権)でも活躍を果たし、スカイラインのライバルとしてサーキットを席巻。当時、BMW M3やメルセデス・ベンツ 190E 2.3-16、フォード シエラRS500、ボルボ 240ターボなどの輸入車勢と熾烈な戦いを繰り広げたことは、ボクの記憶に色濃く焼き付いている。そして1993年、4世代目(スープラとしては2世代目)A80型へとフルモデルチェンジを果たし、2002年の販売終了と共に長い歴史に幕を閉じた。

トヨタの妥協なき理想とBMWのテクノロジーが融合

それから17年のブランクを経た2019年、待望の5世代目が登場。このモデルはBMW Z4との兄弟車となり、基本的なプラットフォームとエンジンの設計はBMWが主軸になったことは周知の事実だが、トヨタならではの理想を徹底的にリクエストしたという。その結果、BMWのテクノロジーとトヨタの妥協なき理想が融合した現行モデルが誕生したのである。

このDB型と呼ばれる最新モデルにはスープラの伝統である直列6気筒エンジン(最高出力340ps)を持つ3.0リッターモデルと、最高出力の異なる2.0リッターの直列4気筒エンジンを搭載した2モデル(SZとSZ-R)の3つのバリエーションが存在するが、今回A110Sとの対決モデルとして選んだのは258psの最高出力を発揮する、ツインスクロールターボチャージャーで武装した4気筒エンジン搭載のミドルレンジ、SZ-R。

ここで「なぜ直6の3.0リッターモデルじゃないの?」と疑問を感じる読者も多いと思われるが、それには大きな理由が存在する。ロータス ヨーロッパの再来と謳われるアルピーヌ A110Sのライバルとして最も相応しい日本車は、『サーキットの狼』に登場した“隼人ピーターソン”が駆るトヨタ 2000GTであり、トヨタが誇る2.0リッター仕様のスープラが最も相応しいと考えたからだ。実際3.0リッターモデルのRZと比較しても、2.0リッターモデルの上位レンジであるSZ-Rの評価は悪くない。同じボディに2.0リッターエンジンを積んだことによるノーズの軽さは大きなアドバンテージとなり、決してトップグレードが買えない人に向けた廉価版ではないことは言わずもがな・・・だ。

トヨタらしくない尖った個性を放つスープラ

この企画で長尾峠~箱根スカイライン、箱根ターンパイク、そして今回の芦ノ湖スカイラインを走り抜けたアルピーヌ A110S。「走ること」に特化した近代ライトウェイトスポーツは1110kgという車重の軽さとミッドシップレイアウトを武器に切れ味鋭い走りでボクを魅了する。特に車幅の狭い長尾峠では旋回性の良さと立ち上がりのシャープさを味方に付け、その走りを存分に楽しむことができた。ちょっとした直線のある箱根ターンパイクや芦ノ湖スカイラインでは胸のすくような加速を楽しむことができ、ソリッドで官能的な走りは剃刀の如く鋭く緊張感を与えるものであった。

一方で最近のスポーツカーは、ユーザーが求める全てのリクエストに応えるように、後部座席、4WD機構、豪華オーディオ、パワーシート、大容量のラゲッジなどを追加して“十徳ナイフ”の様相を呈している。確かに便利ではあるが全てにおいて中途半端感が拭えない「名ばかりのスポーツカー」も少なくない。今回、A110SのライバルとしてチョイスしたGRスープラSZ-Rは果たしてどうだろうか?

芦ノ湖スカイラインに現れたスープラはプロミネンスレッドのボディを振るわせて登場した。間近で観るスープラの姿は前衛芸術をイメージさせる個性的なフォルムを纏い、フォーミュラカーのフロントノーズをイメージさせるフロントセクションがインパクトを放つ。ヘッドライトやテール周辺に先代モデルであるA80型の面影を残しているものの、リヤフェンダーやテールエンドの造形はイタリアのカロッツエリアであるザガートが手掛けたような個性を感じさせる。エンブレムがなければトヨタ製とは思えない斬新さは高く評価したい。

スープラはスポーツカーとしての存在感を見事に演出している

太めのサイドシルを跨ぎコクピットに滑り込む。1865mmの車幅とは思えない室内のタイトさは個人的には好みであり、太いセンターコンソールはコーナリング時のニーレストになりそうだ。一般的な自動車の概念として「広い=正義」というのもあるが、この定義はスポーツカーに関しては当てはまらない。ボクは昔からスポーツカーは「タイト=正義」だと思っている。

ドライバーズシートに滑り込むとサイドサポートが効いたスポーツシートが体を包み込む。A110Sを含め輸入車の多くはシートが日本人の体格に対して少し大きく、サポート力に不満を感じてしまうことも多いのだが、そこは日本ブランドらしく日本人の体型にフィットする設計はパーフェクト! 座り心地も良くコーナリングで横Gが掛かっても安心して身を委ねることができそうだ。インテリアはシンプルにデザインされ、ダッシュボードに設えた吹き出し口もアルミ調のアクセントラインと一体化しラグジュアリーな雰囲気に仕上げられている。抑揚の効いたステアリングの奥にはデジタルメーターが置かれているのだが、その中心がタコメーターとなり回転数を主役とするスポーツカーとしての存在感を演出しているのが心憎い。

スタータースイッチを押すと1998ccの排気量を持つ直列4気筒DOHCが覚醒。その音質は決して官能的ではないものの、国産車としては荒々しいサウンドを響かせてドライバーをその気にさせる。シフトをDレンジへと入れアクセルを踏み込むと、2.0リッターの4気筒エンジンとは思えない加速を披露して1410kgのボディをグイグイと加速させていく。A110Sとの比較で300kgもの重量差は大きいものの、鈍重さや非力さを感じさせることは無い。

「スポーツ」モードこそがスープラの真骨頂

ドライブした印象はFRスポーツらしさが漲り、オールドスクールならではの楽しさを感じることができた。特に印象的なポイントは見た目の“厳つさ”とは裏腹に、アダプティブ・バリアブル・サスペンション・システムが硬過ぎず快適なことだ。コーナリング中にはしなやかにロールをしながらも確実に路面を捉え、ステアリングの手応えも十分。ボディ剛性の高さも走りに貢献し、ドライバーに大きな安心感を与えてくれるのがトヨタらしい。

しかし、スープラ SZ-Rは峠専用マシンではない。峠道でも十分に楽しめるクルマではあるものの、コーナーの多い首都高速やハイアベレージの東名高速でのロングドライブで真価を発揮するGTカー的要素を秘めている。かつてのトヨタ 2000GTがそうであったようにグランドツアラーとしての魅力も大きい。

走行モードには「ノーマル」と「スポーツ」が用意され、コンソールのスイッチで切り替えることができるが、個人的な感想としては「ノーマル」はエコモード的な印象だ。高速道路での100km/hクルージングでは回転数が約1500rpmとなり、スポーツモードでは2500rpmへと跳ね上がる。シフトアップも低回転でロックアップし続け、気が付けば8速へとシフトされてしまうのでアクセルへの反応も穏やかになってしまう。逆に「スポーツ」モードこそがスープラの真骨頂であり、アクセルを踏み込んだ時のエキゾーストノートやレスポンスの鋭さはスポーツカーとしての楽しさが爆発する。

切れ味鋭いA110Sは峠で本領を発揮し、スープラは高速道路で実力を見せつける

新型スープラの試乗を終えて感じたことは、今さらながら“トヨタの自動車哲学”は凄いということだ。この時代にFRの2シータースポーツを復活させただけでも驚異的なことだが、そこにはトップブランドとしての完成度と信頼性が盛り込まれ高い安全性が担保されている。

唯一不満を述べるなら、スポーツカーとしての最後の一歩が踏み込めていないことだろう。それは車高の中途半端さやホイールのオフセットに現れている。ポルシェやフェラーリのようにノーマルで手を入れる余地がないスポーツカーに比べ、ダウンサスやホイールの変更などをオーナーが楽しめる“のりしろ”がある意味スープラの良さになるのだろうが、ここは徹底的に踏み込んで欲しかった部分でもある。

アルピーヌA110Sが峠の覇者とするならば、GRスープラ SZ-Rは高速道路で真価を発揮するタフガイ的な存在なのかもしれない。約半世紀前、ロータス ヨーロッパを駆る“風吹裕矢”と、トヨタ 2000GTを相棒とする“隼人ピーターソン”のバトルが芦ノ湖スカイラインで繰り広げられたが、時を隔ててアルピーヌ A110SとGRスープラ SZ-Rという近代スポーツカーの対決が同じ舞台で再現された。この刺激的な時間を経て、ボクの頭の中では新たなストーリーが描き始められている。

【SPECIFICATIONS】

アルピーヌ A110S

ボディサイズ:全長4205 全幅1800 全高1250mm

ホイールベース:2420mm

車両重量:1110kg(※グリ トネール マットのみ1120kg)

エンジン:直列4気筒DOHC16バルブ+ターボ

総排気量:1798cc

最高出力:215kW(292ps)/6420rpm

最大トルク:320Nm/2000-6420rpm

トランスミッション:7速DCT

駆動方式:RWD

サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン

ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク

ディスク径:前後320mm

タイヤサイズ:前215/40R18 後245/40R18

最高速度:260km/h

0-100km/h加速:4.4秒

車両本体価格(税込):864万円(※2021年1月1日より新価格)

GRスープラ SZ-R

ボディサイズ:全長4380 全幅1865 全高1295mm

ホイールベース:2470mm

トレッド:前1595 後1590mm

車両重量:1450kg

エンジン:直列4気筒DOHCツインスクロールターボ

総排気量:1998cc

最高出力:190kW(258ps)/5000rpm

最大トルク:400Nm/1550–4400rpm

トランスミッション:8速AT

駆動方式:RWD

サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク

ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク

キャリパー:前後アルミフローティング

タイヤサイズ:前255/40R18 後275/40R18

WLTC燃費:12.7km/L

車両本体価格(税込):601万3000円

【問い合わせ】

アルピーヌ コール

TEL 0800-1238-110

トヨタ自動車

TEL 0800-700-7700

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

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みんなのコメント

1件
  • >スープラは現代版のトヨタ2000GTか!?

    まあ、そうだとしても毎度、他社との協業でしかスポーツカーが出せないトヨタって、どうなん??情けねーな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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