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F1メカ解説|今季大躍進のマクラーレン。その要因をチーム代表が匂わす「今のマシンがどれほど開発可能か、誰もが驚いたはずだ」

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F1メカ解説|今季大躍進のマクラーレン。その要因をチーム代表が匂わす「今のマシンがどれほど開発可能か、誰もが驚いたはずだ」

 F1日本GPは、レッドブルのマックス・フェルスタッペンが圧倒的な強さを見せて優勝。レッドブルが今シーズンのコンストラクターズタイトル獲得を決めた。

 表彰台でフェルスタッペンの両脇を閉めたのは、マクラーレン勢のふたり。2位にランド・ノリス、3位にオスカー・ピアストリが入り、2021年イタリアGP以来のダブル表彰台獲得を決めたのだった。ピアストリは、これがF1で初の表彰台獲得である。

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 しかし今季のマクラーレンは開幕当初、非常に厳しい状況にあった。今季マシンMCL60を発表した時には、開発目標を達成できていないことを公言。チーム代表のアンドレア・ステラは、「発表したマシンの内容には全く満足していない」と語った。

「開発の遅い段階で気付いた、いくつかの領域、いくつかの重要な方向性があった」

 その方向性で開発が進んだ結果、マクラーレンは復活。日本GPでは前述の通りダブル表彰台を獲得した。

 シンガポールで投入されたアップデートを踏まえ、ステラ代表は興味深い説明を行なった。本稿では、その要約をご紹介しよう。

アウトウオッシュ・フロントウイング

 他の多くのチームと同様、マクラーレンもできる限りアウトウオッシュ(マシンの側方に空気を導く考え方)効果をもたらすフロントウイングのデザインを追求した。これはフラップと翼端板の間の隙間、そしてフラップの形状を考慮することによって達成されている。

 ステラ代表は、現在のレギュレーション下では、以前のレギュレーションの時ほど多くのアウトウオッシュを生み出すことができないものの、それでもできる限りのことを行なう価値が十分にあると語る。

「この世代のマシンは、本質的に前世代のマシンに比べて、アウトウオッシュを大幅に減らしている。しかしチームの全員が、この目標を追求しようとしている」

 そうステラ代表は語った。

「少しでも稼ぐことができれば、特に中高速コーナーで良い特性が得られる」

サイドポンツーン

 マクラーレンは、2022年の段階で既にレッドブル型とも言えるダウンウオッシュスタイルのサイドポンツーンを採用していたが、今年はこれをさらに進化させた。彼らが取り入れたのは、ふたつの要素だ。

 ひとつは、サイドポンツーンを可能な限り側方へと広げ、下部に抉れ(アンダーカット)を設けること。そしてサイドポンツーンの上面に、ウォータースライダーとも呼ばれる溝を設け、それを最大化することだ。

「幅がどれだけ広くなったかよく分かるだろう」

 そうステラ代表は言う。

「我々は気流を活性化するため、明確な流路を形作ろうとしている」

 アンダーカットの部分はフロアと相互に作用することで、ダウンフォース発生量を増加させるためのものだ。一方ウォータースライダーは、ディフューザーを効果的に機能させてダウンフォース発生量を増やすためのものだ。

「これは簡単なことではない」

 そうステラ代表は言うが、この積極的なボディワークを実現するために、マクラーレンはサイドポンツーン内部の冷却装置(ラジエターとパイプの配管)の配置を、オーストリアGPでアップデートを投入した際に変更している。

フロアエッジウイングの復活

 現在のF1マシンは、グラウンド・エフェクトカーである。つまり、ダウンフォースの大部分をフロア下で生み出すようになっているわけだ。そのため、成功の鍵はフロアのデザインにある。適切に設計することができれば、ダウンフォースの発生量が非常に大きくなる。

 この領域に関しては、各チームがその秘密を厳密に隠している。この開発には非常に大きな労力がかかるため、それも当然だ。

 ステラ代表はこれについて、次のように語る。

「マシンの底の詳細な作業は、私がこれまで見てきた中で最も洗練されている。エンジニアリングの観点から見ても、魅力的なモノのひとつだ」

 フロアのパフォーマンスを強化するため、マクラーレンはシンガポールGPから、フロアにエッジウイングを復活させた。これは、そもそも2022年に始めに試験的に導入され、その後しばらく搭載されていなかったモノだ。

「2022年にシェイクダウンした時のマシンには、これに似たウイングが装着されていた。一部のライバルチームも、これを使っていた」

 そうステラ代表は言う。

「その後、しばらくの間はこれを取り外した作業を続ける必要があることに気付いた。それで、マシンの底にスケートを取り付けたんだ」

「その後、他のマシンは今シーズンのはじめに、すでにこのスケートを取り外していた。そのため、我々も変更したんだ。マシンのこのエリアは、パフォーマンスに大いに関わる部分だ」

 FIAは、2022年に多くのマシンが見舞われたポーパシングやバウンシングを解消するため、フロアの端の高さを引き上げることになった。それに対処するためにはいくつかのことを再考せねばならず、そのソリューションのうちのひとつがエッジウイングであった。また、アイススケートのような金属のフィンをフロア下に取り付け、車高を安定させるソリューションとして活用した。

 ただ新たなレギュレーションに対応するためには、車高だけではなく他のパラメータについても再検討する必要があった。そのため、スケートとエッジウイングの間の有効性が逆転したのだろう。

 フロアのパフォーマンスを改善させるためには、他の部分を調整することもある。マクラーレンはシンガポールGPの際に、リヤブレーキのウイングレットなども変更している。この部分に、エネルギーを持つ気流を導く必要があったのだろう。

 ステラ代表はこれについて、次のように説明した。

「フロービズ(空力効果を可視化する塗料)の結果、フロアにはあまり満足できなかったから、この部分に少し作業を加えた。この部分で気流が乱れていたから、パーツを使って気流の形状を変更する必要があったんだ」

ビームウイングの効率

 レッドブルの今季の武器のひとつは、DRSの効果が非常に高いということだ。それはリヤウイングのメインプレーンとビームウイングの空気抵抗のバランスが優れているからだと指摘されていて、ライバルチームはこれに注目している。マクラーレンも、その方向性を追求している。

 ベルギーGPからマクラーレンは、DRSの効果を高めることを目指して、ビームウイングの空気抵抗を削減し始めた。

「我々はビームウイングの適切な配置を作り上げるために取り組んでいる。ウイングをあまり小さくせずとも、適切なレベルの空気抵抗を達成できるようにするためにね」

 ステラ代表はそう言う。

「ここ(日本)に持ち込んだビームウイングは、シーズンのはじめに使っていたビームウイングのいくつかと比較して、比較的負荷が軽減されている」

 マクラーレンのコンセプト変化は、魅力的とも言える。つまりマクラーレンがうまく変更することができれば、他のチームにも変更可能だという希望の光をもたらすことになるからだ。

 それより興味深いのは、現在のF1マシンでは設計概念を変える余地はあまりないと思われていたにもかかわらず、その懸念は解消されたという証拠になっているかもしれないということだ。

 それぞれのチームが採用するアイデアが幅広いということに驚いたかどうかと尋ねられたステラ代表は、次のように語った。

「現代のマシンがどれだけ開発可能かということについては、誰もが驚いたと思う。しかし、私は今後もこの状態が続いていくことを期待している」

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