映画に登場するル・マンのコースや会場の雰囲気を解説
皆さん、お正月休みはいかが過ごされましたか。私は正月休みもそこそこに中国の北京に渡り現地での試乗企画に参加してきました。
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既報のとおりこの企画での撮影ロケ中に、撮影班が飛ばしていたドローンが試乗中のクルマのフロントガラスに激突し、ガラスを突き破って私の右顔面に当たり受傷してしまいました。ヘルメットとレイバンのサングラスを着用していたため眼球への直撃は回避できましたが、右目が酷い結膜下出血を起こす怪我を負ってしまいました。すぐに帰国したかったのですが、飛行機の減圧で眼球破裂の恐れもあるという診断で1日安静にしたのち帰国したのでした。幸い北京からのフライト時間は3時間半と短く、超高高度で飛んでいる時間も1時間弱と短かったので眼球へのダメージもなく無事帰国した次第です。
帰国後の診察では3週間の安静が必要と診断され、試乗や執筆など制限が発生しましたが、おかげで気になっていた映画「フォードvsフェラーリ」を視聴することができたので、お約束どおりその印象をリポートさせていただきます。
舞台は1966年に開催されたフランスのル・マン24時間レース。奇しくも以前のお薦め映画リポートで最高! と評したF1映画「グラン・プリ」の舞台シーズンとなった1966年と符号する。この当時は僕自身はまだ小学校低学年であり、日本でル・マンの中継が観られる時代でなかったので実際のストーリーは映画を観て初めて知った。主人公マッド・デイモンが扮するチームマネージャーとして登場するアメリカン・スーパースター「キャロル・シェルビー」の名前だけは知っていた程度。
一方のレーサーであるケン・マイルズは名前すら知らなかった。過去のリザルトを見返すと、確かに映画で描かれているフォードの1−2−3フィニッシュが成し遂げられた記録があり、その中にマイルズの名前も確認できる。
ストーリーに関してはまだ観ていない人も多くいると思うので述べないが、ここではル・マンのコースや会場の雰囲気などの再現性について触れておきたい。
当時のピット施設を現物大にしたことで再現度はバツグンだ
僕が初めてル・マン24時間レースに参加したのは1989年だ。じつはこの年を最後に伝統的な6キロにも及ぶ長い直線区間であるユーノディエールは廃止され、古い佇まいのピットやグランドスタンドも現在の形へと改修されていくのだ。つまり映画のなかで再現されている旧いピットや観客席、VIP施設やプレスルームなど僕が実際に見たままに再現されているかがポイントとなった。
当時のル・マンのピットは本当に狭かった。スペアタイヤや工具を並べるともう一杯。ピット間隔も狭く隣のピットにチームと同時にピットインすることができない。レース中もそうした交渉を隣り合うチームのマネージャー同士で行っていた。そしてピット裏には暗くて狭い通路があり、そこをドライバーやメカニック、関係者が行き交っていたのが映画のなかで見事に再現されていた。
汚れたコンクリートの壁や足もとの泥濘なども忠実に描かれていたようだ。聞けば当時のピット施設を写真ベースで現物大のセットとして米国の古い空港跡地に建設したのだそうだ。ワイルド・スピードの「TOKYOドリフト」でも渋谷のスクランブル交差点の実物大セットを映画撮影の為だけに建設したというから北米映画のスケールには恐れ入る。
コースの再現性はしかし今一歩だと感じた。第一コーナーを抜けダンロップブリッジを通過しテルトルルージュコーナーを駆け抜けると、左手に賑やかな遊園地が闇夜に煌びやかに光り輝いていたが、1966年にはまだ遊園地がなかったのか映画には視界を奪うほどの眩しい輝きより漆黒の闇夜の方が優先されている。こうしたバックグラウンドの演出や走行シーン、クラッシュシーンなどは1970年の「栄光のル・マン」のほうがより現実的だった。
すでに半世紀以上昔のシーンを現代に蘇らせるには実物大のセットだけでは不十分で、レース映画はやはり本物のレースを舞台装置として設定できているかどうかが完成度の高さに大きく影響するといえそうだ。
とはいえモータースポーツ好きなら3時間以上に及ぶ全編を飽きることなく鑑賞できるだろう。コースやマシンなど一瞬の瞬きも許されないほどの集中力で観察していると奥深い発見があるかもしれない。
ということで、多くの皆様にご心配をお掛けしましたが、私自身も怪我から回復しまた多くのリポートを寄稿していきたいと思っておりますので、引き続きご支援ください!
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