スーパーGTのGT500クラスで、2023年、2024年とタイトルを連覇し、2025年は3連覇に挑んでいるTGR TEAM au TOM’Sの1号車au TOM’S GR Supra(坪井翔/山下健太)の特別コラムがオートスポーツでスタート。au TOM’S GR Supraで昨年までトラックエンジニアとして2連覇を飾り、2025年はチーフエンジニアを担当している吉武聡(よしたけさとし)氏が、毎戦レースのターニングポイントとなった部分を中心に振り返ります。
8月2~3日に富士スピードウェイで行われた第4戦は初のスプリントとなり、1号車はレース1で優勝、レース2で2位表彰台を獲得しました。コラム第4回では、スプリントでのタイヤ選択やGRスープラGT優勢の理由を中心に解説していただきます。
「最後の5周が勝負」限界ギリギリでトップを追いかけた山下健太、悔しさ溢れる2位/第4戦GT500日曜レース2
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■優勝&2位の第4戦。唯一の反省点はレース2予選
みなさんこんにちは。TGR TEAM au TOM’Sの吉武です。
今回はスプリントということで、普段とは異なるフォーマットでレースが行われました。サクセスウエイトは0kgで、決勝はドライバー交代やタイヤ交換、燃料給油なしの35周もしくは50分間のレースとなりました。一見特殊なレースのようですが、タイヤ選択やマシンセットアップの面で特別な要素はとくになかったかなと思います。
ウエイト0kgで富士テストをした経験はありませんが、重量が軽くなってマシンの動きが悪くなることはないので、セットアップ面でとくに意識したことはありません。決勝についても、レース距離は普段の1スティント分に近く、特別なタイヤを使用することもありませんでした。
ですので、今回はスプリントフォーマットに惑わされることなくタイヤ選択やセットアップを考えることが、勝利への近道だったと思います。
1号車としては、坪井選手=1位/山下選手=2位と充分な成績をあげることができました。レース1は予選こそ2番手でしたが、決勝は勝てたので良かったです。それでも、ひとつだけこの週末の反省点と言いますか、難しかったのは山下選手が走ったレース2の予選でした。要因は、『路面温度の低下』と『持ち込みタイヤのセット数』にあったと思います。
坪井選手が走ったレース1予選では、コースインから3ラップ目にベストタイムをマークしていたので、同じように山下選手も3ラップ目にベストラップを記録するプランを組んでいました。しかし、レース1予選の路面温度は54度、レース2予選は43度となり、10度ほど低下。路面温度の変化に対応して、タイヤの内圧や燃料の搭載量を4ラップアタック用に調整するべきだったかなと思います。
また、タイヤの持ち込み数が5セットに決められていたことも、レース2予選を難しくしていました。我々はハード3本/ソフト2本を持ち込んでおり、このうちハードが本命のコンパウンドでした。しかし、この内訳だと必然的にどちらかのドライバーが本命のニュータイヤをぶっつけ本番で使用しなければいけません。実際、新品ハードをレース2予選/決勝に残すため、日曜の専有走行はソフトでアタックシミュレーションを行っており、山下選手は新品ハードを事前に試すことができませんでした。
最終的にポールポジションを獲得したのは、4ラップ目にベストを出した14号車ENEOS X PRIME GR Supraの福住仁嶺選手でした。14号車はウチとまったく同じタイヤを履いていたはずなので、ウォームアップの違いによってタイヤのピークが不足したのではないかと分析しています。
■スープラの上位独占を支えた2025年型エンジン
レース2決勝は、スタートで後ろを警戒しすぎたようで、1周目に少し差をつけられてしまいました。こうなると、レース2はGT300がいないので前に近づくきっかけもなく、バトルを仕掛けるのは厳しかったです。
さらに空力の影響も強く、前の1.5秒以内に近づくとダーティエア(前走車が生む乱気流)の影響で速く走れない様子でした。この件に関しては、事実としてタイヤやセットアップでどうにかできるような話ではなく、空力に頼らずにスピードを出すレーシングマシン(例えばインタープロト)を導入しなければ改善することはできないと思います。
あとは、燃費を気にする必要がないのでエンジンマップもフルリッチですし、アンチラグも最大にかけていたので、レース2はもっともペースが速い状態でした。結果、最終的に34周もしているのでタイヤマネジメントは必須となり、中盤は展開が間延びしていた感もあります。本当に全周全開のスプリントがやりたいのなら、15~20周ほどのレース時間にするべきだったのではないでしょうか。
そして、もうひとつ触れておきたいのはスープラの上位独占です。昨年の富士では、シビックとZのほうがストレートスピードは速かったのですが、その状況を逆転すべくTGR-D(トヨタ・ガズーレーシング・ディベロップメント※当時はTRD)が開発したエンジンが昨年後半に投入され、今年はその改良版を使用しています。
このエンジンが中間加速から最高速まで改善されており、昨年は、コーナーは速いけどストレートは遅いよね、と話していた状況から、今年はコーナーもストレートも速くなりました。その結果が、これだけの差がついた理由のひとつだと思います。
今回の勝利で獲得ポイントは56.5になり、次戦から1号車はサクセスウエイト50kg+燃料リストリクター3段階となります。もっとも厳しい状態ですが、実は昨年はこの“100kg”状態に達することがありませんでした。
ですので、うちのメカニック達はウエイト100kgのステッカーが欲しい欲しいとずっと言っていたんです(笑)。それをついに手にしたので、第5戦鈴鹿は『100kgステッカー』を貼って、なんとか1ポイントでも獲れるように頑張ります。
●Profile:吉武聡(よしたけさとし)
福岡県出身、1979年3月23日生まれ。自動車メーカー勤務からTRD(現TGR-D)へ入社し、2013年にトムスへ入社。F3のエンジニアを経て2020年からはスーパーGT500クラスで36号車(現1号車)を担当。2021年、2023年、2024年に王者に輝いた。2025年は1号車のチーフエンジニアを担当し、スーパーフォーミュラ・ライツでは35、36、37、38号車の4台のチーフエンジニアを務めている。
[オートスポーツweb 2025年08月07日]
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