プジョーが発表していた2022/23年シーズンのWEC世界耐久選手権参戦プロジェクトに関して、その提携先とされていたフランスのオレカは、プジョーがル・マン・ハイパーカー(LMH)規定のマシン開発を決断した場合でもこの計画にはジョイントせず、新たにアナウンスされたIMSAとACOフランス西部自動車クラブの統合共通プラットフォームである“LMDh”に焦点を絞るとの意向を示した。
イギリスに拠点を置くスイス系チームのレベリオン・レーシングとタッグを組み、ハイパーカー規定で世界選手権ならびにル・マン24時間への復帰をアナウンスしていたプジョーだが、その新規車両開発に際しては、レベリオンがLMP1で使用するオレカ製シャシーをベースとして、ハイパーカー用パーツとエンジンの開発プロジェクトが進められるものと考えられていた。
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しかし、オレカの代表を務めるヒュー・ド・ショーナックは、このプログラムでの技術提携の可能性を完全に放棄し、代わりにIMSAとACOの新しいグローバルLMDhフォーマットに集中したい、との意向を明かした。
「我々オレカ側としては、この新たなグローバルプラットフォームに完全に焦点を当てたいと考えている。つまり、ハイパーカーのプロジェクトには取り組まない、ということだ。私たちとしても、すべてに手を出すことはできないからね」と説明するショーナック。
「現時点では選択は難しくない。すべてのマニュファクチャラーは電動化などのグリーン・テクノロジーに多くの投資をしているため、予算面で問題を抱えていることがほとんどだ」
「レース畑の人間がボードメンバーに加わり、モータースポーツのための予算を執行するのは非常に難しい。なぜなら、それが現状の最優先事項ではないからだ。でも、それが低予算で実現するなら、物事ははるかに簡単になる」
「今後、こうした場所に参入しようとする新たなカー・マニュファクチャラーにとって、それ(低予算で具現化するLMDh規定)が唯一の魅力的な選択肢になる。これは大きな利点だよ」
2020年デイトナ24時間レースの現地で、1月24日金曜にアナウンスされたIMSAとACOの新共同プラットフォームは、WECの2021/22年シーズン、そしてIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の2022年シーズンから適用される。
今回の発表会では予算目標が明らかにされていないものの、WECで2026年まで施行対象となる初期のLMH規定より大幅に少ない予算で成立するものとみられている。
■プジョーとは「空力開発のコンセプト策定作業も行っていた」
「そう、大きな問題はその予算規模なんだ」と続けたショーナック。「もしハイパーカーに参入すれば、高額なバジェットが必要になる。でも、もしグローバルプラットフォーム(LMDh)に参入する場合は、はるかに低いバジェットで済むんだ」
「これは、現状の自動車メーカーには魅力的に映るだろう。彼らはふたつの疑問を抱えている。『我々のクルマはル・マンとデイトナで勝つことはできるのか?』、答えはイエス。『予算はハイパーカーよりはるかに低い?』、その答えもイエスだ」
オレカのテクニカルディレクターであるデビッド・フラウリーは、昨年にもLMH規定に向けたフィジビリティスタディ(実現可能性調査)を実施したことを認め、プジョーとの共同開発に向けた「空力開発のコンセプト策定作業も進めていた」という。
この新たなLMDh規定は、プジョーにとっても“数多くのチェックボックスが入れられる”最適なフレームワークだと目されているが、フラウリーもショーナックも「我々として、メーカーがどの方向に進むべきかについては、コメントすることはできない」と語った。
「この発表は、プジョー自身にとっても“どの方向に進むべきか”をまさに検討している最中に行われた」と続けたショーナック。
「彼らは今、ハイパーカーのプロジェクトに取り組んでいる。それと同時に、新たに参入するブランドのために、彼らとしてもグローバルなプラットフォームが必要なんだ」
「現時点では、我々としてもそうしたブランドからの関心や議論に向けた連絡が数多く寄せられている。ここから6月までの数カ月間に1~3回、複数回のアナウンスができると確信しているよ」
ショーナックとフラウリーは、オレカとして対応できるLMDhプロジェクトの数を明らかにはしなかったものの、量より品質が最優先だと強調した。
そのオレカは、LMP2をベースとしてハイブリッド機構や大型燃料タンクに対応するための新型サバイバルセルを採用する予定のLMDhシャシーに関して、その認可コンストラクター4社のうちのひとつでもある。これに関しても、フラウリーが次のように付け加える。
「確かに、製造コンストラクターが許認可制でコスト上限のあるLMP2に基づいているため、新LMDhのコストは大幅に削減されるだろう。そしてグローバルに採用される規定で、デイトナ、ル・マン、セブリングなど、IMSAやWECなどで同じマシンを使用することができれば、マニュファクチャラーにとっても非常に良い投資となるはずだ」
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