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ルノーと私──それでもヴァンサンクを愛し続けるワケ(前編)

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ルノーと私──それでもヴァンサンクを愛し続けるワケ(前編)

1980年代に登場したルノーのフラグシップ「25(ヴァンサンク)」を所有するモータージャーナリストの内田俊一さん。日本では滅多に見られない貴重なルノーとの出会いから現在にいたるまでのお話の前編。

ルノーとの出会い

編集部から「いま所有されているルノー25との関わりについて書いてください」と、依頼を受けたとき、さてどうしたものか? と、頭を抱えた。かれこれ7年ほど車検を切って動かしていないからだ。

とはいえ、「7年も乗らないのなら手放してもいいのでは?」と、思えなかった。いずれ直して、以前のように乗りたい、と、常に思い続けているからだ。

そんなルノー25との出会いを述べる前に、幼少期の思い出から話したい。なぜなら、ある出来事がルノーへの憧れを深めたからだ。

自分がいつからクルマ好きだったのか? と、問われても答えに窮する。母曰く、「ベビーベッドで寝ているとき、テレビからクルマのCMが流れると目を覚ますので、音を消していたのよ」と、笑いながら教えてくれたから、物心つく前からクルマ好きだったようだ。

小学校に入るすこし前、祖父から自動車雑誌『カー・グラフィック』(以下、CG)を買ってもらい、むさぼり“眺めて”いたという。クレヨンで落書きこそしてあるものの、今でもその雑誌は手元にあって、大切な宝物になっている。

小学校時代はカー・デザイナーになるのが夢だったが、いつまで経ってもまわりの友達のようにうまくクルマの絵が描けず挫折。その頃には、小遣いを手に古本屋でCGのバックナンバー(新刊は高くて買えなかったのだ)を揃え始めていたこともあって、「将来は自動車ジャーナリストになりたい」と、自然と目指すようになっていった。

隅から隅までCGを読み漁っていくうちに、ある人の記事に出会う。その人の文章は、シニカルでありながら自動車愛に溢れており、フランス車をこよなく愛されていた。ご自身でもルノー「16」を所有し、苦労しながらも楽しそうに乗っているエピソードを、誌上で何度か書かれていた。それこそ、私がルノーを意識し始めたきっかけである。そして氏の文章とルノー16との愛憎劇を誌上で読みながら、乗り心地の良さやユーティリティの高さなどを知り、「いつかはルノーが欲しい」と、思うようになった。

そうえば、CGのインプレッションで別の記者が、「ルノーのステアリングを握って、夜の東京を走っていると、東京タワーがまるでエッフェル塔のように見えた」と、述べていたのも印象的だった。

初めての愛車はサンク

小学校~中学校~高校時代はクルマに熱中。18歳になってすぐ運転免許を取得した。当然、クルマが欲しくなる。

中学生のときから、東京都内にあるさまざまな自動車ディーラーへカタログをもらいに足を運んだ。そのひとつにキャピタル企業という、当時のルノーの輸入元があった。そこで初めてルノーに乗る機会を得た(助手席だが)。

それは「9」という当時、ヨーロッパでカー・オブ・ザ・イヤーを獲得したクルマで、「これがあのルノーの素晴らしいシートなのか!」と、大いに感動したものだ。そのときの縁で親しくしていただいた営業マンに、予算(アルバイトなどで必死で貯めた120万円)を伝え、ルノー5かランチア「ベータ」の中古車を探してほしいと頼んだ。

ベータは、CGに載っているのを見て「とてもカッコいいクルマだなぁ」と、思った。すぐに当時の正規ディーラーだったガレーヂ伊太利屋で試乗させてもらって、1300ccエンジンの軽快で気持ちの良い吹け上がりに魅せられた。しかし、というか当然というか、キャピタル企業にベータが下取りですぐに入ってはこなかった。

依頼から1カ月後、初めての愛車になった「5GTLフランセーズ」がやって来た。3年落ちの個体で、最初は広報車としてメディア向けに貸し出されていたという。その後、さるオーナーの手に渡ったクルマで、走行距離は約6万kmだった。シートは少しやれていたものの、何時間座っても疲れ知らず。CGにあった通りの乗り心地の良さや、直進安定性の高さなどはしっかりと感じられた。初のマイカーということもあって、毎日のように走りまわり、3年半で8万kmを走ったほど。

当然トラブルもあった。ガソリンタンクに穴があいたときは、CGでのルノー16愛憎記のなかで「石鹸を穴に擦り込むと一時的に止まる」という記述があったのを覚えていたため、その“応急処置”でしのぎ、後日、8万円もするガソリンタンクをディーラーで購入した。ただし、工賃の8万円が払えず、メカニックにアドバイスを請いながら、3日間かけて自身で交換したのは良き思い出だった。

21ターボを購入するも……

最初の5は、手持ち資金の都合で、メンテナンスが徹底して出来なかったため、手放す前の最後の3カ月間は、毎月10万円ほどの修理費が必要になった。

「毎月10万円の出費があるのならば、新車や程度の良い中古の5が買えるのではないか?」と気づき、たまたまJAX(ルノーの輸入権がちょうどキャピタル企業からJAXに移っていた)に仲の良い営業マンがいたので、シュペール5のベーシック・モデルをベースに、少しだけキャブレターの径を大きくした「TS」を探してもらった。

TSは、すでに販売終了から3年ほど経っていたので、「程度の良い中古車があればいいなぁ」と、思っていたものの、なんと、ナンバーを登録したばかりという、ほぼ新車の個体が出てきたのですぐに購入した。

クルマとしての印象は、あらゆる箇所が以前所有していた初代5よりも洗練されてはいたものの、プラスチックのクオリティはイマイチで、工作水準が低下していたのはいささかショックだった。

乗り心地は少し硬めになったものの、直進安定性は非常に高く、相変わらず運転は楽しかった。どこへ行くにもこのクルマで出かけたものだ。

そんなある日、首都高速道路で渋滞の最後尾に止まったところ、後続車に追突された。その瞬間、シートのリクライニング機構が外れ(壊れ?)バックレストがおもいっきり倒れてしまったのを機に、買い替えの検討をはじめた。

気になっていたのは「21ターボ」だ。当時、付き合いのあったヒストリック・カーを輸入する業者の社長が、21ターボに乗っていたため、何度か乗せてもらっていた。

非常にパワフルで、かつ高速の安定性は抜群であり、スクエアなデザインもなじむと魅力的に見えた。そこで「この機会にぜひ!」と、前出の営業マンから新車を購入したのだ。生まれて初めての新車、しかも398万円という高価格で、まさに清水の舞台から飛び降りた気持ちだった。

21ターボは、多少のトラブルこそあったものの、長く乗り続けようと思い、ディーラーのセール時期を狙ってスペアパーツをそろえた。しっかりと手を掛けて、こまめにメンテナンスしていたものの、購入から2年目、またも事故にあってしまったのだ。

5とおなじく首都高速道路での渋滞で停車していたところ、スピンした小型トラックに斜め右後方から激突された。トランクがすべてなくなり、ルーフと、対角線上の左フロントフェンダーまでゆがんでしまい、全損扱いになったのだ。警察官から、「よく無事でしたね」と、言われるほどの損傷だったが、自身はむち打ち程度で済んだのは不幸中の幸いだった。

サフラン・バカラを購入しようと思ったが……

以降は小刻みに、さまざまなメーカーのクルマを乗り継ぐことになるが、21ターボほど気にいったクルマはなかった。

前出の営業マンがJAXを退社し、小さな中古車店をオープンした。たまたまそこに展示されていたルノー「25V6」を購入したものの、それまで“ヤンチャ”なクルマ達を乗り継いできたところに、いきなり“落ち着いた”25では落差が大きかった。

しかも、その個体の状態があまりよくなかった。購入後、すぐにオートマチック・トランスミッションの警告灯が点灯するなどトラブルが続出した。そこで、数万円のシトロエン「BX16TRS」に買い替えるも、こちらはこちらで燃料ポンプが壊れてしまい、初めて路上での立往生を経験した。そして、「21ターボ・クワドラ」に乗り換える。

21ターボ・クワドラは、かつて乗っていた21ターボとおなじくらい魅力的なクルマだった。しかも、FWD(前輪駆動)ではなく四輪駆動のクワドラだったからとくに雨天時の高速スタビリティは素晴らしかった。が、このクルマは、どうしても欲しいという人があらわれたため売却し、ひとまわり小さい「19 16V」に乗り換えた。19 16Vは、「5TS」や「ルーテシア16V」のような軽快さがあまり感じられず、かといって、21ターボのような快速クルーザーという面も足りなかったので1年ほどで手放した。

その後しばらくはクルマのない生活を送っていたものの、あるとき、「サフラン・バカラ」の購入話が舞い込んだ。2~3日借りて乗ったものの、乗り心地のしなやかさがあまり感じられず、ピンとこなかった。「それであれば……」と、偶々横にあった、「25V6・バカラ」を選んだのだ。それがいま我が家にあるクルマである。

次回はこの25V6バカラについて少し詳しく話をしたい。

文・内田俊一

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