マクラーレン・オートモーティブは2021年4月13日、初のハイブリッド・システムを搭載した超高性能スーパーカー「アルトゥーラ」を日本で発表しました。なお日本価格は2965万円から。
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「アルトゥーラ」は、全く新しいマクラーレン・カーボン・ライトウェイト・アーキテクチャー(MCLA) を採用したマクラーレン初のハイパフォーマンス・ハイブリッド(HPH) スーパーカーです。
新開発のカーボン・モノコック
新マクラーレン・カーボン・ライトウェイト・アーキテクチャー(MCLA)はイギリスのシェフィールド地方に位置するマクラーレン・コンポジット・テクノロジーセンターで設計・製造されます。
MCLAはカーボンファイバー製モノコック、エレクトリカル・アーキテクチャー、シャシーおよびサスペンション・ストラクチャーの3要素で構成されており、徹底的な軽量化が追求されています。なおカーボンファイバー製モノコックは最新の製法で製造され、また今後の拡張性を備えたモジュラー設計になっている点も特長です。
新しいカーボンファイバー製ストラクチャーには、バッテリーパック用のセーフティーセルが加わり、耐衝突・耐荷重性能が高められ、なおかつ驚異的な軽さになっています。バッテリー・コンパートメント、エアロ・サーフェス、Bピラー、ドアヒンジ取付部品を含めて、重量はわずか82kg。これにハイブリッド・コンポーネントによる130kgが加わります。
このカーボン・モノコックは従来のマクラーレンのカーボン・モノコックとは違って全くの新設計となり。4種類の新しいカーボン素材で構成され、樹脂システムと構造的コア材も一新。空前の軽量さと高剛性を持つプラットフォームであり、最新の製造機械による専用の製造工程から生まれています。
このような新しいカーボン・モノコックを採用することで、アルトゥーラは乾燥重量1395kgを達成しています。ハイブリッド・コンポーネントの総重量はわずか130kg(うちバッテリーが88kg、Eモーターが15.4kg)で、DIN計測の車両重量は1498kgです。この車両重量はハイブリッド・パワートレインを搭載しないスーパーカーと同等レベルです。
MCLAモノコックは、従来のマクラーレンのモノコックよりAピラーとBピラー周辺が高くなっています。これは、接着された金属パーツに代わって、カーボン製ストラクチャーに強度や耐荷重性といった機能をプラスするためです。
フロントウィンドウ周りもカーボンファイバー製です。また、バッテリーと燃料タンクに不可欠なセーフティーセルを設けるため、通常のリヤのバルクヘッドより後方までモノコックの側面が伸びており、バッテリーパックと燃料タンクをサイドインパクトから守る役割を果たしています。
モノコックの寸法は許容誤差を厳しく設定しており、ストラクチャー全体で+0.75mm、機械加工の許容誤差は最も厳しい部分で±0.25mm。この結果サスペンション・ジオメトリーはより高精度化が実現しています。また、モノコックの高いねじれ剛性によって、サスペンションのストロークはよりなめらかになり、しなやかな乗り心地とより高次元の正確なハンドリングが実現します。
空力ボディ
このMCLAモノコックは空気流の最適化にも一役買っています。フロントのホイールアーチのエッジ部分は角の面取りがされており、ホイールアーチ内から空気を外へ誘導しドアの下方へ流します。空気は、延長されたドアのアウターパネルによってこの流路に閉じ込められ、後方に導かれて高温ラジエーター(HTR)の下部へ流れ込みます。
カーボンファイバー・モノコック前後は、アルミニウム製サブフレームが設けられ、衝突時には変形するクラッシュ・ストラクチャーとして機能します。衝撃を吸収するこのストラクチャーは、コスト効率が高く簡単に修理や交換が可能です。
ダイナミック性能
サスペンションのフロントアッパー・ウィッシュボーンはカーボン・モノコックに取り付けられ、ロワ・ウィッシュボーンはアルミニウム製クラッシュ・サブフレームに結合されています。
リヤのサブフレームはモノコックにボルト付けされ、バッテリーの下のカーボンファイバー製フロアがロワ・クロスメンバーとして機能し、必要なねじり剛性を確保し、リヤの重量を最適化。リヤ・サスペンションはマルチリンク式ウィッシュボーン方式としています。
またダンパーは、プロアクティブ・ダンピング・コントロールを採用し、センサーにより路面を読み取るセミアクティブ・ダンパーシステムです。タイヤ4本の加速度計と3個の加速度計、各ダンパー2個の圧力センサーのほか、ステアリング角度や車速、ヨーレート、横方向の加速度などを計測する様々なセンサーからフィードバック受け、これを2mm/sec未満で処理して車両の状態を最適化し、卓越したダンピング・コントロールをもたらします。
タイヤはピレリ製で、マクラーレン専用設計です。サイズはフロントは235/35ZR19、リヤは295/35 R20です。またオプションで2種類のタイヤが選択できます。Pゼロ・コルサは、公道とサーキットの両方で使用できる設計で、レースタイプのコンパウンドと専用トレッドパターンによってグリップレベルを高め、ブレーキングとトラクションも向上。Pゼロ・ウインターは冬用タイヤで、専用のコンパウンドとトレッドパターンによって夏タイヤと同等のコントロール性を確保しています。
またタイヤ管理のためタイヤ内部に電子チップを備え、タイヤの重要なデータを絶え間なく検知して車両制御システムに伝達し、タイヤから最高のパフォーマンスを引き出すことができます。
電子プラットフォーム
カーボン・モノコックが従来のマクラーレンのストラクチャーより、多くの機能を備えるように、エレクトリカル・システムも進化しています。先進運転支援システム(ADAS)、無線通信(OTA)ソフトウェア・アップデート、タイヤをモニターするピレリ・サイバー・タイヤテクノロジーなど、マクラーレン初のテクノロジーを投入。そのすべてを可能としたのが、新しいエレクトリカル・アーキテクチャーで、マクラーレン・インフォテインメント・システム(MIS II)もサポートしています。
これらに加えてパワートレーンにも、エレクトリカル・アーキテクチャーが関与しています。マクラーレン初の350バールという高圧直噴式燃料システム、新しいトランスミッションのソフトウェア、EデフおよびEリバース機能、バッテリーマネージメント、電気駆動とエンジン駆動を組み合わせたシステムの制御にも最新のエレクトリカル・アーキテクチャーによるメリットが生かされています。
これらをすべて達成するため、マクラーレンは車載ネットワークの核となるバックボーンに、まだ市場では数少ないゾーン・ドメイン型のイーサネットを採用しています。ドメイン型のイーサネット・システムは4個のコントローラーを使用し、これを車両の各主要領域に配してデータ伝送速度とケーブル長を最適化。コントロールするロードと同じゾーンに位置するコントローラー同士は、セントラルゲートウェイを介してイーサネットで接続されています。フロントやリヤ、あるいは車両の左右で機能がリンクする場合にも、専用の配線や制御システムは必要なく、中央のバックボーン・ラインを介してデータが伝送されます。
単一規格とすることで、同じイーサネット・ネットワーク上ですべての通信の共存が可能になり、各ドメインから外へ広がるデータ伝送の場合、従来通りLIN(ローカル・インターコネクト・ネットワーク)規格と CAN(コントローラー・エリア・ネットワーク)規格でサブシステムの通信を行ないますが、処理能力は向上。ドメイン型テクノロジーの採用で、車両内部のケーブル長は25%減り、配線重量は10%以上削減されました。
これにより新たなテクノロジーが加わりました。その一例が先進運転支援システム(ADAC)で、このアルトゥーラで初めて採用されています。その中核的ソフトウェアは、新機能が利用可能になると継続的に拡張やアップデートが行なわれ、将来の法規やテクノロジーに対応できるプラットフォームとなっています。
また無線通信(OTA)アップデートが可能なため、自宅や外出先のホットスポットで車両をWi-Fiに接続すれば、利用可能になった新しいソフトウェアをダウンロードできます。車両の安全性に関するアップデートはマクラーレンの正規販売店で行う必要があります。
もちろんシステムのすべてにわたって、アルゴリズムを強化した新しいサイバーセキュリティー・プロトコルが作動しています。またOTAアップデートに加えて、一部の市場でテレマティクスやE-call(自動緊急通報システム)を利用した盗難車両追跡機能が盛り込まれ、事故や故障の際の救急やリカバリーサービスへの連絡にも利用できるようになっています。
超高性能ハイブリッド・パワートレイン
ハイブリッド・パワートレインは、新しいV型6気筒ツインターボ・ガソリンエンジンと、業界をリードする市販乗用車として初のアキシャルフラックス・モーター(Eモーター)を内蔵する新しい8速トランスミッション、そしてリチウムイオン・バッテリーパックから構成されています。アキシャルフラックス・モーターは、最新の高出力モーターで、非常に小型で高出力密度を備え直径が大きく、軸方向の長さが短いのが特長です。
搭載エンジンは新開発のV6ツインターボで、ボア84.0mm×ストローク90.0mmで排気量は2993cc、バンク角は120度としバンクの中央にツインターボを設置。エンジン本体の最高出力は585ps/7500rpmで、出力比はリッター200psに迫り、最大トルクは585Nm/2250-7000rpmを発生。このエンジンは従来のV8エンジンより50kg軽量で160kg。全長は190mm短縮しています。またこのエンジンは最高8500rpmまで吹け上がります。
ドライサンプ式で、カム駆動はリヤ側チェーン駆動されるこのエンジンは縦置きで後輪駆動。バルブタイミングは連続可変式です。各気筒の中央に1個のインジェクターを配し、350バールで稼働する直噴式です。また、ガソリン・パティキュレート・フィルター(GPF)と触媒コンバーターによって、あらゆる排気ガス規制に適合させています。
この新設計のハイブリッド・パワートレーンの合計最高出力は680PS、最大トルクは720Nmで、Eモーターのトルクによって瞬時のスロットルレスポンスを実現しています。動力性能は0-100km/h 3.0秒、0-300km/hはわずか 21.5秒です。
またバッテリーの電力のみで30km走行できるので、市街地移動の大半をカバーすることができます。燃費は50mpgを超え、CO2排出量はWLTP基準で129g/kmと、マクラーレンのロードカー史上最もクリーンで高効率です。
ドライブモードは、Eモード、Comfort、Sport、Trackの4モードがあり、あらゆるドライビングの要求をカバーします。Eモードは無音の始動に適したデフォルトで、排出量ゼロの完全なEV走行となり。Comfortモードでは、V6ガソリンエンジンがEモーターと連携して稼働し、燃料をセーブするためEモーターが最大限にアシストします。Sportモードでは、Eモーターは低回転域でトルクを上乗せし、V6は最大のパフォーマンスを発揮します。そしてTrackモードでは、ハイブリッドパワーブレンドは同じですが、トランスミッションのソフトウェアが変速スピードを高めるようになっています。
トランスミッションも新設計のクロスレイオ8速DCTで、クラッチハウジングにEモーターが内蔵され、トランスミッションと同軸配置としています。トランスミッションは、EモーターとV6エンジンの両方のトルクを伝達します。これによって、内燃エンジンを切り離したあとも、Eモーターのみを使って走行できます。トランスミッションは電動+機械式のオイルポンプを装備し、Eモーター走行時は電動ポンプが作動します。
アキシャルフラックス式のEモーターの最高出力は95ps、最大トルク225Nmを発生。高出力密度のリチウムイオンバッテリーは7.4kWhの容量で、EV航続距離は30km、最高速度は130km/hです。なお後退時はEモーターが逆転駆動するので、DCTとしてはリバースギヤは不要になっています。またデフは初の電子制御のEデフを採用し、左右の駆動トルクをコントロールできるようになっています。
バッテリー・アッセンブリーは、全体を耐火被覆で包まれ、構造を成すカーボン製フロアにマウントされ、これがカーボン・モノコックの後部にボルト付けしています。フロアにはアルミニウム材を挿入し、構造的コア材をフォーム状にして、バッテリーパックを下から保護しています。また側面と上からの衝撃保護は、モノコック内部に専用に設けられた空洞がその役割を果たし、バッテリーの上に位置する燃料タンクを保護しています。後方からのあらゆる衝撃は、エンジンやトランスミッション、リヤフレームで遮断されます。またできるだけ低い位置に搭載することで低重心化にも貢献しています。
パワーコントロールユニットはDC/DCコンバーター、車載充電器、フロント配電ユニットと一体パッケージ化されフロントに搭載されています。
先進運転支援システム
アルトゥーラは、マクラーレンとして初めて先進運転支援システム(ADAS)をオプションとして導入しました。ストップ&ゴー機能付きインテリジェント・アダプティブ・クルーズコントロール(ACC)、道路標識検知、レーン・デパーチャー・ウォーニング、ハイビームアシスト機能を備えています。インテリジェントACCは、ストップ&ゴーを繰り返す状況でも使用でき。前走車に追従できます。
レーン・デパーチャー・ウォーニングは、車両が車線から逸脱し始めるとドライバーに警告するシステムです。ハイビーム・アシストは、夜間に対向車を認識するとスタティック・アダプティブ・ヘッドライトのメインとロービームを自動的に切り替えます。
装備では、この他にアンビエント照明、5スピーカー・オーディオシステムのほか、GPSナビゲーション、そのほか、DAB/FMラジオ、Bluetooth通話機能、iPod/iPhoneインテグレーション、急速充電ができるUSB-C 、USB-B端子を備えてます。
またオプションで、ハイエンドのバウワーズ・ウイルキンス製オーディオも選択できます。
マクラーレン アルトゥーラ 諸元表
価格
マクラーレン アルトゥーラ:2965万円から
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